連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(6)

「○○年一括借り上げ」物件で入居者さんを幸せにできますか?

2016/04/30 林 浩一

郊外の住宅地には似たようなアパートがたくさん並び、あちこちに「入居者募集中」のノボリが立つようになりました。そうしたアパートの多くが「○○年一括借り上げ」を謳うサブリースの物件として建てられたものです。一見、合理的に思える仕組みですが、それで入居者さんは幸せになれるのでしょうか?

大家とハウスメーカーの共通点

 世の人たちに快適な住まいを提供するという点において、ハウスメーカーと大家の目標は一致しています。でも、細かいところを見ていくと、完全に一致しているわけではないようです。

 ハウスメーカーは、利益を上げるためには家をつくらなければなりません。家づくりをやめてしまったら、企業としては経営が立ち行かなくなります。だから、家をつくり続ける。それがハウスメーカーの使命です。

 もちろん、大家さんも経営者ですから、適正な利益を上げることは優先順位としては上位のところにあります。ただし、ハウスメーカーのようにつくったら終わりというわけではなく、入居者さんにその家に住んでもらい、その後も快適な住空間を維持していくという役目を背負っています。

 家というのはつくった時点では新築ですが、できた瞬間から古くなって不動産価値が下がっていきます。10年、20年と年月が経つうち、家賃も下げなければ入居者が埋まらなくなり、何もしないでいたら経営はだんだん厳しくなっていきます。

「サブリース」をご存知ですか?

 そうしたリスクを背負っていくのは大変です。そこで不動産会社(ハウスメーカー)は、サブリース(一括借上)という仕組みをつくりました。大手の会社が「○○年一括借り上げ」などと謳っているあれです。

 簡単に説明すると、地主さんの土地にアパートなどを建て、それを家賃保証という形で一括して借り上げ、運営・管理を一気に引き受ける賃貸システムです。地主さんは建設費を負担しなければなりませんが、入居者の有無にかかわらず保証された家賃額が毎月入ってきます。

 この仕組みであれば、大家さんのリスクは大幅に軽減しますし、本来の目的である入居者さんに快適な住空間を提供するために必要な物件の運営・管理をしなくてもよくなるので、建設費以外の負担はほとんどありません。

 ただ、サブリースによってつくられた物件を見てみると、これが完璧なシステムとはいえないような気になってきます。

あちこちに「入居者募集中」のノボリが…

 私も自分が大家になるまでは気づきませんでしたが、郊外の住宅街を歩いてみると、同じような仕様のアパートがいくつも建ち並んでいて、古くなったアパートには一年中「入居者募集中」のノボリが立てられている光景がよく目に止まるようになりました。

 アパートを注意深く見てみれば、それぞれに多少の違いはあるのですが、基本的にはどれも同じようなつくりです。こうした物件は、ほかの物件と差別化がむずかしいので、建物が古くなって空室が増えてくると、入居者さんを見つけるには家賃を下げるしかありません。

 そうなってしまう前に、銀行からの借入金を返済し終えればリスクは減りますが、そうでなければ大変です。サブリースの契約では、数年ごとに賃料の見直しという項目があります。(家賃の見直しは2年毎に行なわれることが多い)空室率が高くなると募集家賃を下げられ、多くの場合、管理会社から支払われる家賃は将来的には減額されます。また、設備が古くなれば修繕費やリフォーム代の負担も増えてくるでしょう。そうなると、返済はきつくなりますし、収益はどんどん圧迫されていくのです。

 こうしたサブリース物件が集まった住宅街が現在、日本のあちこちに存在しています。ヨーロッパの先進国やアメリカなどでは、家を建てるための要件が法律で定められていて、むやみに新築物件を建てられないようになっている国が多いようです。

 ところ日本にはそうした法律はなく、ハウスメーカーの「家をつくり続ける」という目的を阻むものは何もないようです。以前、国交省の住宅課の方とお話したことがあるんですが、「住宅に限っていえば、日本では自由な経済活動が奨励されていて、役人の立場でこれを押さえつけるわけにはいかないのです」とおっしゃっていました。

「こんなに駅から離れているところに、こんなに同じような物件をたくさん建てても入居者さんを集めるのは大変だろうな…」とため息をつきたくなるような風景が増えているのは、そんなところに原因があるのかもしれません。

大家は自分のストーリーを持ちましょう

 そして、もうひとつの原因は、大家さんがリスクを避けたいばかりにサブリースに頼りきりになり、「入居者さんに快適な住まいを提供する」という本質的な目標を忘れてしまったことにもあるのではないかと私は思っています。

 繰り返しますが、大家さんも立派な経営者です。経営を続けていくには、入居者さんに自分の物件に住んでもらって、家賃をいただくことで適正な利益を上げ続ける必要があります。

 そして、そうした経営を実現できる物件をつくるには、設計の段階から自分のビジョンを持ち、5年後、10年後、20年、どういう形で、どんな人たちに住んでもらいたいのかという自分のストーリーを持つことが大切です。

 それが単に経営をうまく成り立たせることだけでなく、何よりも入居さんたちの幸せにつながることを、決して忘れないでいただきたいと思います。

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