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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

知っておきたいポータルサイトの仕組み

「ネットで部屋探し」をすると家賃が高くなる!? ポータルサイトの功と罪

2016/11/10 大友健右

部屋探しをするときに、インターネットを使うことはもはや当たり前になっています。賃貸物件のポータルサイトのおかげで、24時間いつでもどこでも物件検索ができることの利便性を否定する人はいないでしょう。ですが、賃貸物件のポータルサイトが普及したことで、家賃が高止まりしているとしたら、みなさんはどう思いますか? 今回は、ポータルサイトと家賃の関係についてお話ししましょう。

本当なら家賃はもっと安くなる?

賃貸物件の空室率が上昇を続け、家賃は徐々に下がっているようです。東日本不動産流通機構のデータ(2016年7〜9月)では、東京23区のマンションの家賃は平均で10.4万円(面積34.95㎡)、ピークだった08年7~9月期の12.3万円と比べると15%ほど家賃が下がっていることがわかります。

もちろん、これは平均値なので、入居者が決まらず家賃が大幅に下がっている物件もあれば、人気が高くまったく家賃が下がらない物件もあります。でも、いま誰もが利用している、あるサービスが存在しなければ家賃は全体としてもっと安くなっていたかもしれないとしたら、そのサービスが何なのか知りたくありませんか? そして、そのサービスとは、いまでは部屋探しをするときには誰もが利用する賃貸物件のポータルサイト(以下、ポータルサイト)だと言ったら、皆さんはどう思うでしょうか?

もちろん、ポータルサイトは、部屋を探している人にとって非常に便利な存在です。ポータルサイトのおかげで、スマホさえあれば、部屋探しは24時間、どこからでもできるようになりました。私自身、その利便性を否定するつもりはまったくありません。しかし、ポータルサイトにはこうした「功」の側面だけではなく、「罪」の側面もあるのです。

賃貸物件ポータルサイトには構造的な問題がある

ポータルサイトのメリットは、商品やサービスの提供者の情報を一箇所に集約し、それを求める顧客に提供してくれることにあります。同時に、商品やサービスの提供者と顧客をダイレクトに結ぶことで、商品・サービスの提供コストを引き下げることも可能にしました。いわゆる「中抜き」といわれるもので、ネットのサービスが普及し始めた頃には、「中抜きこそインターネットの本質だ」と言われていました。

その本質からから考えると、賃貸物件のポータルサイトは大家さんと借り主を直接結びつけるのが最も効率的なはずです。ですが、いまのポータルサイトの構造はそうはなってはいません。

もともと不動産会社は、地域のポータルサイト的な役割を担っていました。大家さんたちから物件の情報を集めて、部屋を探している人に情報を提供するのがその役割です。そんなポータルサイト的な存在である不動産会社を集めているわけですから、賃貸物件のポータルサイトは中抜きどころか、二重ポータルとでもいうべき構造になっています(図1参照)

(図1)ポータルサイトがコスト増を引き起こしている

そのために弊害が生じているのは前回の記事(「ネットで部屋探し」の前に知っておくべきポータルサイトの裏側 http://sumai-u.com/?p=7271 )でご説明した通りです。なかでも深刻なのは、コストの問題だといえるでしょう。

(参考記事)
「ネットで部屋探し」の前に知っておくべきポータルサイトの裏側
http://sumai-u.com/?p=7271


不動産会社はポータルサイトに物件情報を掲載するために、掲載料金を支払っています。掲載料金は、ポータルサイトごとに料金システムがあるので一概には言えませんが、あるポータルサイトの料金システムでは、「掲載数5件以下で月5000円」が基本で、10件以上になると1万円、20件以上では1万5000円という具合に掲載数に応じて料金が上がっていきます。
これは定額固定型での課金方法ですが、問い合わせなどの反響件数に応じて課金される反響課金型の料金システムもあり、その場合は反響件数に応じて賃料の一定割合を料金として支払うことになります(図2参照)

(図2)ある賃貸物件ポータルサイトの掲載料金

不動産会社の集客コストが膨らんだ理由

こうして見ると、ポータルサイトの広告掲載料は、たいした料金ではないと思う人もいるかもしれません。不動産ポータルサイトがひとつしかないのなら、そう言えるでしょう。ところが、部屋探しをしたことがある人なら、3つか4つくらいならポータルサイトの名前をあげられるはず。詳しい人は、10個以上のサイトを思い浮かべることができるでしょう。

このように、「ポータルサイトはこんなにたくさん必要なの?」と首をかしげたくなるのがいまの状況です。そんなたくさんのポータルサイトに情報を掲載すれば、広告掲載料金は当然かさみます。
しかも、ポータルサイトのユーザーからどれだけ物件の問い合わせを受けられるかが、不動産会社の売り上げに直結します。そのため不動産会社は、複数のサイトに競って多くの物件を掲載しようとするのです。当然、集客コストは膨らみます。

賃貸物件を仲介する不動産会社の収入源は仲介手数料ですが、そもそも不動産の仲介手数料は、宅建業法で上限額が定められています。賃貸物件の場合、「家賃1カ月分」がその上限です(図3参照)

(図3)不動産会社が受け取れる仲介手数料は「家賃1カ月分」が上限

建前からいえば、ポータルサイトの掲載料はそのなかから支払われています。そう考えると、不動産ポータルサイトにかける集客コストは、決して安くないことがよくわかるのではないでしょうか。
つまり、ほとんどの不動産会社は「ネット」という重要な集客ツールを、ポータルサイトに委ねてしまったために、企業にとっては必要不可欠な自分たちで集客する力を失ってしまい、ポータルサイトに利益を奪われることになってしまったのです。

シワ寄せをくらった最大の被害者はオーナー

そのシワ寄せを最も大きく受けているのは誰かというと、私は賃貸物件のオーナーである大家さんだと考えています。

宅建業法に従えば、家賃1カ月分を超える仲介手数料を受け取ることはできません。もし、借り主から1カ月分の手数料をもらった場合、大家さんからは手数料を受け取ることはできません。借り主から0.5カ月分を受け取れば、大家から受け取れるのは0.5カ月分が上限ということになります

しかし、1カ月分の仲介手数料だけでは経営が苦しくなった不動産会社は、抜け道を考えます。それが、大家さんから受け取る「AD(広告料)」といわれるお金です。仲介手数料からADへ、名前を変えるだけで受け取れる金額の上限はなくなります(図4参照)

(図4)仲介手数料から「AD(広告料)」に名前を変えれば受け取れる金額の上限はなくなる

入居者には嬉しい「フリーレント」にも裏がある

ADを支払いたくないと思っても、それでは入居者を探してもらえないとなれば、大家さんは支払わざるを得ません。
最近、よく目にするようになったフリーレント(1カ月分とか2カ月分の家賃が無料になるサービス)も同様です。大家さんには2カ月分のフリーレントをつけてもらい、借り主には1カ月だけフリーレントにしておいて、1カ月分の家賃は不動産会社が自分の懐に入れてしまうという行為も普通に行なわれています。

こうして、大家さんが余計な費用を負担せざるを得ないようになれば、そうした費用は結局、家賃に跳ね返ってきます。こうして、ポータルサイトが徴収している掲載料は、巡り巡って家賃を支払っている入居者にものしかかってきているはずなのです。
「ネットで部屋探しをすると家賃が高くなる」というタイトルの意味がおわかりいただけたでしょうか。

(参考記事)
「礼金ゼロ」「フリーレントつき」物件のカラクリとは
http://sumai-u.com/?p=1097


ポータルサイトのメリットは否定できないけれど…

こんな状況になってしまった原因は、いくつか考えられます。まず、不動産業界のネットへの対応が遅れたこと。
業界内の競争が激しく、簡単に協力体制をつくることができなかった可能性もありますが、たとえば地域の不動産会社が協力して物件情報を集約したサイトをつくるなどしていれば、現在のような状況にはなっていなかった可能性は高いはずです。
とはいえ、物件の図面をいまだにFAXでやり取りしているような業界ですから、現在のような状況を招いてしまったのは当然なのかもしれません。

そして、集客から何から不動産会社に「すべておまかせ」にしてきた大家さんにも、原因の一端がないわけではありません。大家さんは楽をすることで自分の首を絞めてしまったのです。

「物件情報をネットで検索できるようにする」というポータルサイトの功績は誰もが否定できないものだと思いますが、そこに依存しきってしまっている構図からは、1日も早く抜け出さなければなりません。
残念ながら、その状況を一瞬で変えられるようなドラスティックな解決策はいまのところありません。ですが、もし、現在の構図から抜け出すことを諦めてしまったら、大家さんにも不動産会社にも、そして入居者の皆さんにとっても明るい未来はないでしょう。この構造を打破するためにも、私も含めて業界のなかにいる人たちが、もっと積極的に改革の旗振りをしていく必要があるのではないでしょうか?

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