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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(13)

「新築神話」がますます中古市場を停滞させる

2016/05/09 大友健右

以前、中古物件が流通しないのは、不動産会社が熱心に売ろうとしない流通の仕組みに問題があることを指摘しましたが、問題はそれだけではありません。安値で受注せざるを得ないリフォーム会社の問題に加え、根強い「新築神話」が中古市場をさらに停滞させているのです。

消費者は中古物件の善し悪しを判断できない

 以前、中古物件がなかなか流通しないのは、不動産会社が熱心に売ろうとしない流通の仕組みに問題があることを指摘しましたが( http://sumai-u.com/?p=2024 )、実は問題はそれだけではありません。

 それは、しかたのないことですが、消費者であるお客さんの側に中古物件の善し悪しを判断する力がないということです。

 人間は感情の生き物ですから、玄関に入ったときに猫の匂いがしたとか、何となく暗い雰囲気を感じたといった理由でマイナスイメージを持ってしまうと、なかなかそれを払拭することができなくなってしまうものです。

 でも、猫の匂いなどはちょっとしたリフォームで簡単になくすことができるし、部屋の暗いイメージも壁紙を替えるだけで解消したりするのです。

 とはいえ、リフォームによって家がどんな風に変わるかをプロでもないお客さんが判断するのはむずかしいでしょう。

 ならば、不動産のプロが丁寧に説明すればいいのですが、「中古物件は儲けが薄い」というイメージを持っているため、リフォームによって中古物件がどんなふうによくなるかを積極的に教えようとしないという面があります。

安値で受注せざるを得ないリフォーム会社

 リフォーム会社のほうはどうかというと、ピンからキリまであるという状況で、「安心できるリフォーム業者はこれ」とお客さんにすすめられない現状があります。

 大手の不動産会社が手掛けているリフォーム会社なら信用できるかというと、これまたそうはいきません。多くの場合、そうした会社からリフォーム工事を請け負っている下請け業者の話を聞くと、びっくりするほど安い値段で工事をしているからです。

 工費が安いと、数多くの仕事を請け負わなければなりませんし、そもそも丁寧な仕事をしていたら採算がとれなくなるので、「手を抜く」しかありません。

 そもそもリフォーム工事は、古くなった建物を「きれいに見せる」ことは当たり前のことで、本質的な目的ではありません。それよりも大事なのは躯体を補強し、丈夫で長持ちする建物にすること。それこそが本来の意味での「リフォーム=改装」です。

 ところが、そうした部分の工事は見た目に表れないだけに、いくらでも「手を抜く」ことができてしまうのです。お金の流れの川下にいるリフォーム会社は安値での受注をせざるを得ないため、本来の仕事をできずにいるわけです。

 私が近年のリノベーション物件のブームに危惧を抱いているのは、業界全体が「きれいに見せる」ことのみに特化し過ぎているように見えることが大きな理由です。安売り競争が慢性化したいまの状況は、ものづくりの本質から外れているように見えるのです。

「新築」は一瞬で「中古住宅」になる

 日本人の心のなかに「新築神話」が根強くあることも中古市場が活性化しない大きな原因です。ただ、これは戸建てにもマンションについてもいえることですが、「新築」の価値は購入した途端になくなり、一瞬にして「中古住宅」になるのです。

 こうした中古住宅が市場でのけ者にされる状況が続いていけば、20年前後でスクラップ&ビルドを繰り返す日本の住宅環境は何も改善されないままになるでしょう。こうした状況を少しでも変えるには消費者の側の意識を変えることも重要です。少なくとも「新築」に過大な評価をしないということを声を大にして呼びかけておきたいです。

今回の結論

●プロの不動産会社はリフォームの善し悪しをキチンとお客さんに説明すべき。でも、そうなっていないのが現状。
●元請けの不動産会社に工費を買い叩かれた下請けのリフォーム業者は、工事の手を抜くしかない。
●「新築神話」が根強い市場には、膨大な「中古」の売れ残りが蔓延する。

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