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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(14)

「気に入ったから」は不正解。プロが教える本当の「住まい選びの正解」とは?

2016/05/23 大友健右

お客さんが不動産の購入を決断する瞬間は「もうこんな物件には二度と出会えないかもしれない」と思ったときです。優秀な営業マンはこのことをよく知っていて、そうした心理を利用して、「これがベストの物件だ」とお客さんに錯覚させるのです。しかし、仮にお客さんのイメージ通りの物件を営業マンが紹介できたとしてもそれがベストとは限らない理由があります。

お客さんが物件購入の決断をする瞬間

私が不動産会社の営業マンをしていたころ、「物件を気に入りさえすればお客さんは買ってくれる」という神話を信じている人が多くいました。
お客さんに物件を気に入ってもらうため、「南向きで日当たりがいいですよ」とか、「スーパーが近くて便利ですよ」とか、物件のいいところをアピールする営業手法は、そうした神話から生まれたものといえるでしょう。

ところが実際のところ、それだけでは足りないのです。
営業マン時代、おそらく日本全国で5本の指に入るくらい多くの家を売っていた私は、そのことを実証したことがあります。テーブルをはさんで対面したお客さんに、物件を実際に見せる前に、立地条件や間取り、日当たりなどを説明しただけで契約を取りつけたのです。

そのお客さんは、まだ物件を見ていないのに購入を決意したわけですから、「気に入る」という段階をすっ飛ばしたことになります。なぜそんなことができたかというと、次のひと言がお客さんの背中を押したから。

「この物件には、すでに複数の仮契約が入っています。この物件を見に行っていたら、売れてしまうでしょう」

不動産物件というのは、どんなにお金を積もうとイメージ通りの物件に出会えないことがあります。運とかタイミングに左右されるわけで、「この先二度とこういう物件には出会えないかもしれない」と感じたとき、決断のスイッチが入るのです。

優秀な営業マンは、お客さんのそういう心理をよく理解していて、自分がすすめる物件を「もう二度と会えないかもしれない」物件だと錯覚させることで契約を取っていきます。

不動産物件に完璧な正解を求めるのは不可能

もちろん、お客さんのイメージを聞き取って、それにできるだけマッチする物件を紹介する営業マンもいます。ただ、ひとつ注意してほしいのは、イメージにぴったりの物件を購入したからといって、その選択が正解だったとはいえないということです。

たとえば、子どもがふたりいたとして、3人目は生まないと考えていたとしても、予定が変わって3人目が生まれるということは大いにあり得ることです。そのとき、家族4人が住む上で「正解」だった物件は「不正解」になってしまいます。

子どものことだけでなく、似たような出来事は誰も人生にも必ず起こり得るはずです。転勤や転職で遠い場所にある職場に通うことになったとか、親と同居することになったとか、離婚することになったとか…。

つまり、不動産物件に完璧な正解を求めるのは不可能なのです。

人生は、無数の点と点を結んだ「線」としてとらえなければならないのに、物件の購入は、その線上の「点」で判断するしかないところに物件購入のむずかしさがあるわけです。

もちろん、不動産会社の営業マンがお客さんの人生を「線」で見るのは不可能ですから、「お客さんにはこの物件がベストですよ」というオススメ文句も「いまの時点では」という立場で語られているということはよく理解しておいたほうがいいでしょう。

結論として言えることは、いつでも売れる、いつでも貸せる物件を選ぶことがベストな選択だということ。つまり、資産価値の高い物件ということです。
人生の線がどんな方向に進んだとしても、売ったり貸したりすることができれば、その状況に柔軟に対処することができるからです。

「いつでも売れる、いつでも貸せる物件を選ぶこと」。これが、「住まい選びの正解」に最も近い選択といえるでしょう。

今回の結論

●不動産業界には、「物件を気に入りさえすればお客さんは買う」という神話がある。
●ところがお客さんが決断するのは「この先二度とこういう物件には出会えないかもしれない」と感じたとき。
●ただし、いずれもベストな選択とはいえない。なぜなら人生は「点」ではなく、「線」でとらえなければならないから。

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