連載・トピックス / 借りる

大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

不動産取引をめぐる見えないお金の流れ(4)

「礼金ゼロ」「フリーレントつき」物件のカラクリとは

2016/01/11 大友健右

最近増えている「礼金ゼロ」や「フリーレント付き」の賃貸物件。図面のオビに隠された暗号を読み解くと、お客さんには見えないお金の流れが見えてきます。なぜ「礼金ゼロ」「フリーレント付き」が成り立つのか、そのカラクリを明かします。

賃貸物件の図面にも暗号は隠されている

「オビつき」の図面は、売り物件だけでなく、賃貸物件でも使われます。前回( http://sumai-u.com/?p=1089 )同様、特別な力を使ってオビをめくってみることにしましょう。

(図1)「AD100」とはどんな意味なのか

 これはある賃貸物件の図面です(図1)。この図面の右下に書いてある文字を見てください。

「AD」という文字がさっそく使われています。これが広告料という名のバックマージンであることはすでに述べました。

 また、「100」という数字は、ひと部屋を成約するごとに「家賃の100%(1カ月分)の報酬を支払います」ということを意味しています。

「B100」は「バック1カ月分」を表している

 ほかには、こんな文字が使われることもあります(図2)。図面の右下に、「B100」という文字が書かれています。これはどういう意味なのでしょうか。

「B」というのは、「バック」のこと。「AD」よりも露骨な言い回しですね。意味は同じで、一軒の成約で家賃1カ月分の報酬がもらえるわけです。

(図2)「B100」は「バック1カ月分」の意味

「礼0Bなし可」というのはどういう意味かというと、「お客さんを説得するために礼金の支払いをゼロにした場合、バックはナシになります」ということ。

 その部屋に決めようかどうか迷っているお客さんに、「大家さんに交渉すれば礼金ゼロになるかもしれませんよ」とプッシュする材料があらかじめ営業マンに与えられているわけです。ただし、たいていの営業マンは後日、電話をかけてきて「いやぁ、あの物件は人気があって、大家さんも強気なんです。これ以上、条件を厳しくするとほかの人に貸されちゃいますよ」というでしょう。

「礼金ゼロ」ということは、「バックもゼロ」ですから、借り主の仲介手数料のみの「片手」取引になってしまうからです。お客さんから見れば、「礼金くらいタダにしてくれてもいいだろう。なんてケチな大家なんだ」と思うでしょうが、本当にケチなのは間を仲介する営業マンなのです。

フリーレントの仕組み

(図3)ADをフリーレントに転用して説得材料に

 礼金だけでなく、入居後の一定期間の家賃が無料になる「フリーレント」も、この手の営業トークによく使われます(図3)。

 この場合、バックマージンであるADは家賃の2カ月分ありますので、「フリーレント1カ月」として残りの1カ月分を儲けにすることもできるし、最大で「フリーレント2カ月」まで広げて迷っているお客さんの決断をうながすことができるというわけです。

 ところで、仲介手数料の額は、賃貸の場合でも宅建業法で上限が定められています。
 それは、「1カ月分の家賃+消費税」です。しかもこれは、「貸し主と借り主の双方から得られる報酬額の合計金額」ですから、不動産会社は借り主から規定額の仲介手数料をもらったら、貸し主からもらうことはできないことになります。

 ただ、それはあくまで建前で、実際は「AD」とか「B」という暗号を使って業法の枠を楽々と飛び越えてしまうのです。

今回の結論

●賃貸物件の場合、宅建業法が定めている仲介手数料の上限は「1カ月分の家賃+消費税」。しかもこれは、「貸し主と借り主の双方から得られる報酬額の合計金額」である
●しかし、実際にはさまざまな方法を用いて、業法で定められた上限額以上のお金が動いている
●「礼金ゼロ」や「フリーレント」を謳っていても、実際に値引きにつながるのではなく、あらかじめ家賃に上乗せさせているケースが多い

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