連載・トピックス / マネー・制度

「頭金ゼロ」でラクラク家を買う方法

知っておきたい「メリット」と「落とし穴」

「繰り上げ返済は早くしたほうがいい」はどこまで本当か?

2016/08/16 牧野寿和

頭金ゼロで住宅を購入する場合、借入期間が長くなるケースが多いので、繰り上げ返済をして退職後にローン返済を残さないようにしたほうがいい場合もあります。ただし、繰り上げ返済をすると手元の現金が減ってしまうため、将来の教育資金や、想定していなかったリスクに対応することがむずかしくなることも考えられます。

繰り上げ返済はしたほうが得?

 住宅の購入、住宅ローンの借り入れを考えているのなら、「繰り上げ返済」という言葉を聞いたことがあると思います。

「利子がついて返済総額が膨らんでしまう前に、できるだけ繰り上げ返済したほうが得だ」
「先行きが不安だから、繰り上げ返済して早く借金を返したい」

 こんなふうに思う人は少なくないでしょう。実際、大手不動産情報提供サイト「アットホーム」の調査(2014年)によると、住宅ローンの平均借入期間は25年ですが、実際の返済終了までの期間は平均13.7年で、当初の予定より繰り上げた期間は平均11.2年という結果が出ています。同じ調査では、約9割の人が、最初に組んだ借入期間よりも早く完済したと答えています。

 このように、住宅購入者の多くが、住宅ローンを早く終わらせる「繰り上げ返済」を行なっているのです。そこで今回は、繰り上げ返済の仕組みについてご説明しておきましょう。

繰り上げ返済の仕組みとは?

 住宅ローンの毎月の返済額は、「借入金額」「借入期間」「支払う金利」で決まります。3000万円を、金利2.5%、返済期間35年(420カ月)、元利均等払いで借りたケースを考えてみましょう。この場合、毎月の返済額は10万7248円となり、この額を35年間支払うことになります。

 では、総返済額はいくらになるのでしょうか。10万7248円×420カ月で、約4504万円ということになります。その内訳は、「元金分」が3000万円で、「利息分」が1504万円です。

 住宅ローンの毎月の返済額10万7248円は、「元金分」と利息分で構成されており、元金分の金額により、ローン残高は減っていく仕組みです。たとえば、1カ月目では、元金分が4万4748円、利息分が6万2500円となります。

 繰り上げ返済とは、決められた毎月の返済以外に貯めた資金をローン返済にあてて、返済期間と総返済額を減らしていく方法のことです。

繰り上げ返済をすると元金を大きく減らせる

 たとえば、前述の例で、48回目の返済時に毎月の返済額にプラスして、600万円を返済したとします。すると、600万円は「元金分」に組み込まれ、ローン残高は約2174万円となります。繰り上げ返済しなければ、48回目のローン残高は約2774万円ですから、ローン残高が相当減っていることがわかります。

 このように、「元金分」を前倒して返済していくのが「繰り上げ返済」であり、元金分が減ることで、その分、利息も減っていきます。前述のケースでいえば、返済期間は108カ月短縮され、総返済額は利息分の減少に伴い、約561万円カットされました。

 なお、ここで紹介したのは、返済する期間を短くする「期間短縮型」の繰り上げ返済です。このほか、毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」もあります。

 頭金ゼロで家を購入するのであれば、この繰り上げ返済の仕組みは理解しておいてください。なぜかといえば、頭金ゼロで家を購入した場合、借入額が大きくなるため、返済負担率の制限からどうしても長期で住宅ローンを組まざるを得ないケースが多くなります。

 そのため、定年後まで住宅ローンの返済を持ち越すケースも出てきます。その場合、老後リスクを減らすために、繰り上げ返済を利用して返済期間を短くしたほうがいいケースが考えられるのです。

繰り上げ返済のデメリットは?

 ただし、繰り上げ返済をすると手元の現金が減ってしまいます。そうすると家計のやりくりは当然、厳しくなります。手元の現金が少なくなることで、たとえば病気になって働けなくなった、失業してしまった、子どもに予定外の教育費がかかることになったといった将来のリスクに対応することがむずかしくなります。

 住宅ローンの返済だけを考えるなら繰り上げ返済はしたほうがいいのですが、将来の教育資金や、想定外のリスクに備えることも考えて、慎重に行なわなければなりません。

 また、現在のような低金利であれば、手元の資金を繰り上げ返済に回さずに、住宅ローンの金利以上の利回りで運用することも可能でしょう。その意味で、よほど手元の現金に余裕がある場合を除いては、私は積極的に繰り上げ返済をすることはおすすめしていません。

 繰り上げ返済については、返済期間や返済完了時の年齢、手元の現金や将来のリスクを考えて、慎重に判断することが大切です。

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