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覚えておきたい「大家の心得」(16)

「DIY型賃貸物件」が日本の賃貸住宅市場を変える!?

2016/07/16 林 浩一

賃貸住宅市場では業者主導のリフォームが中心に行なわれてきました。その結果、私の目から見ると、あれもこれもとやりすぎのトンチンカンな部屋が増えてしまっています。「DIY型賃貸物件」の普及によって、そんなリフォームのあり方が変わるかもしれないと少し期待しています。なぜ私がそう思うのか、業者主導のリフォームの問題点に触れながら、その理由をお話したいと思います。

DIY型賃貸物件とは?

 少し前になりますが、空き家問題に対し国土交通省が「DIY型賃貸物件」の流通を促進するため、「契約書式例」と「ガイドブック」を公表しました。2016年4月15日のことです。

 DIY型賃貸物件とは、入居者さんが「物件を自由にリフォーム(DIY)できる」、「退去する際に原状回復をしなくていい」という主にふたつの特徴を持った賃貸物件のこと。賃貸物件でありながら、入居者さんが自分でリフォームやカスタマイズを行なってもいいし、業者に依頼して自分の好みに改修や改装をしてもいいわけです。

 ただし、あとでトラブルにならないよう、入居者さんと大家さんとの間で原状回復に関する取り決めをしておかなければなりません。たとえば、入居者さんが設置したガスコンロなどが故障して機能していなかったりする場合、修理してから受け渡すか、あるいはその必要はないかなど、細かいケースについて、あらかじめ合意しておくのです。

 今回、国交省はその指標(ガイドライン)を示し、DIY型賃貸物件の貸借を円滑に行なうための契約書の書式を公表したわけです。

業者主導のリフォームはうまくいかない

 とても興味深い取り組みで、私は多少の期待を持って注目しています。というのも、これまでの日本の賃貸物件のリフォーム工事は、リフォーム会社やハウスメーカーなどの業者主導で行なわれるものがほとんどだったからです。

 これまでにもお話してきたように、大家さんのところには、いろいろな業者が、「壁紙を選べる部屋がトレンドです」とか、「こんなキッチンが流行っています。水回りを直しましょう」、「若い人は畳を敬遠しますから、和室をフローリングに改装しましょう」といった“営業”にやってきます。

 多くの場合、不動産管理会社も自分がお金を出すわけではありませんから、「このままにしておくと空室が埋められませんから、手を入れたほうがいいですよ」というスタンスで、リフォームをすすめることはあっても否定することはありません。その結果、大家さんもついその気になってお金を出してしまうわけです。

 最近、空室率が話題になることが増えていますが、賃貸住宅市場にはさまざまなプレーヤーがいて、供給過剰による過当競争から消耗戦が繰り広げられています。業者はますます大家さんの財布を開かせようと、まるで競うようにいろいろな提案をしてきます。

 もちろん、業者の提案通り、壁紙を換えたり、和室をフローリングにしたりすることで、空室が少なくなるなら問題はないのですが、実際には、そううまくはいきません。

 私の目から見れば、入居者さんのニーズを無視したコンセプトありきのリフォーム、もっと厳しい言い方をしてしまえば、あれもこれもとやりすぎのトンチンカンな部屋が増えてしまっています。これではリフォーム費用を回収するのが大変だろうなと他人事ながら心配になってしまうほどです。

「DIY型賃貸物件」が根づく日はまだ遠い!?

 でも、入居者さんが自分でリフォームできるDIY型賃貸物件が当たり前のように流通するようになれば、賃貸住宅市場が少しは健全化するかもしれません。

 入居者さんにとっては、コンセプトの押しつけではなく、自分が心地よいように部屋を変えることができますし、大家さんにとっては、頭の痛いリフォームの費用負担が軽減されることになります。そうなれば、入居者さんにとっても大家さんにとっても嬉しい話です。実際、前回( http://sumai-u.com/?p=5816 )もお話ししたように欧米の賃貸物件では、「契約の範囲内」という条件つきではありますが、入居者さんが自由にペンキを塗ったり、棚を取り付けたりという自由が認められています。

 ただ、やはり日本の賃貸住宅市場にDIY型賃貸物件が根づくには時間がかかる、というか、現状では根づくかどうかさえわからない、というのが私の正直な実感です。

 もし、私が部屋を借りる立場の人間だったとして、原状回復もしていない、不完全な部屋に住みたいと思うかどうかを自問すると、抵抗感があるからです。そういう物件を見て、「この壁にはペンキを塗って、ここにはこんな壁紙を張ろう。ここの壁には自作した本棚を取りつけて…」なんてDIYのプランを自分で立てられる人は、それほど多くないはずで、DIY型賃貸物件が急速に流通しはじめる、というわけにはいきそうもありません。

 大家さんとしても、「DIY型賃貸物件が流行っているから」「DIY型賃貸物件なら、住まいにこだわりのある人がすぐに入居してくれるはず」という理由で飛びついてしまうのは早計のように思います。

賃貸住宅は入居者さんが主役

 とはいえ、DIY型賃貸物件の登場をきっかけに、入居者さんだけでなく大家さんも含めて、賃貸住宅市場全体のリフォームに対する意識が少しでも変わるなら、私は意味のある動きだと思っています。

 壁紙や内装など、内見時や契約時などに入居者さんに選んでもらえるサービスがすでに行なわれていますが、いまのところあまりうまくいってないようです。ただ、リフォームに関心のある入居者さんが増えれば、これからうまく回っていく可能性があります。

 そもそもリフォームというのは、入居者さんに快適な住空間を提供するため行なうべきものです。業者都合の提案に乗せられて、大家さんが多額なお金を負担してリフォームした部屋よりも、入居者さんと一緒に考えながら、それぞれの事情や好みに合わせて変えることができる、ノリしろのある物件が好まれるのは確かなのです。

 賃貸住宅は入居者さんが主役です。DIY型賃貸物件も業者主導ではきっとうまくいきません。入居者さんのニーズに合った形にこれからUP-DATEしていく必要があるのではないでしょうか。


●参考:DIY型賃貸借に関する契約書式例とガイドブック(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/report/press/house03_hh_000104.html

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