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BOOK Review――この1冊

『マンガでわかるこんなに危ない!?消費増税』消費増税反対botちゃん著

2019/10/05 住まいの大学

住まいの大学編集部 文/KANAUSHA.LLC

『マンガでわかるこんなに危ない!?消費増税』 消費増税反対botちゃん著 ビジネス社刊 1200円(本体価格)+税

10月1日、いよいよ消費税が8%から10%に増税された。2度の延期があり、しかも今年に入り、国内の景気状況も政治状況も芳しくない中、3度目の延期があるのではないかとギリギリまで、増税か据え置きかが議論された。

本書『マンガでわかるこんなに危ない!?消費増税』はこの6月に刊行され、今もamazonでベストセラーになっている。オリラジ中田敦彦さんの「YouTube大学」で取り上げられたことでも話題になった。

本書は、エリート高校に通う女子高生・高橋あさみが「消費税」について学びながら、政治家、官僚、財界の大物、マスコミ、経済学者など、ひと癖もふた癖もあるキャラクターと対峙し、増税賛成派たちに立ち向かっていくというストーリーである。

まず冒頭から衝撃を受けるのが、増税の根拠とも言える「日本の借金1000兆円」の実態である。赤字国債1000兆円、国民1人当たり900万円の借金、子どもや孫達に借金を残さないためにと聞けば、増税もやむなしという気になっていたが、主人公・高橋あさみは悪質なプロパガンダと切り捨てる。

その理由は、実は日本の資産は1000兆円、世界一の対外純資産の保有国だから心配ないというのだ。しかも借金である国債の45%は日銀が所有している。つまり、政府の子会社のような日銀への借金を計上するのがおかしい。さらに残りのほとんどは国内の金融機関から借りている。それはつまり国民が預けたお金。となると、「国民1人当たり900万円の借金」という言い方自体が実態にそぐわないものであり、消費増税に舵を切るための不安を煽るやり方だというのだ。

また2014年の増税時には、「増えた税収は全額社会保障に使う」と自民党は公約に掲げたが、実際に使われたのはわずか2割だったという。今回は増収分の半分を社会保障に当てると言うが、実際はどうなるのか。国民は税金を取られることには敏感だが、それがどう使われるかまで見届けないし、見届ける方法も知らない現実がある。

多額の借金や社会保障費の不足を掲げる裏で、法人税は下がっている。大企業ほど法人税の負担が軽くなる仕組み。一方で、消費税が上がっていくことは、すなわち貧しい人たちに負担を強い、大企業とお金持ちが優遇されていることになる。

そもそも増税に反対する声があまり聞こえないこと自体がおかしいという。有識者やメディアはなぜ論じないのか。有識者会議に参加しているほぼ全員が政府や役所の仕事を受け、大仰な肩書きをもらったり、税金で海外視察に行っている。そんな御用学者や御用エコノミスト達が言えるわけがない。しかも権力を見張る役割をするメディアの代表・新聞が今回の軽減税率に組み込まれていることへの不安。本当に権力を正しく評価できるのかと心配になる。他にも、様々な側面から増税反対の論拠を述べているが、それは頁を開いて、確認してみてほしい。

本書の最後には、京都大学大学院教授の藤井聡氏が、今回の増税が「百害あって一利なし」であること、にもかかわらず国民が増税を受け入れざるを得ない風潮を「ポリティカル・コレクトネス」略して「ポリ・コレ」という言葉で説明している。世の中の流れに逆らわず、面倒を避ける風潮だ。国民は「ポリ・コレ」に飲み込まれているらしい。

増税前から言われていたことは、8%が10%に上がる今回の増税は、これまでの中でいちばん上昇率が低い。しかも食品に関しては軽減税率が適用されるため、国民の負担は軽いということだった。実際、9月に入っても駆け込み需要を煽るセールがそれほど目立たなかった。一方で、10%というキリのいい税率は計算が楽な分、人々の消費行動にブレーキをかけ、日本経済はデフレの悪循環に落ち込むという見方もある。

本書に書かれていることが本当かどうかは検証が必要であるし、反論もあるだろう。だが、次の選挙に向けて、一部野党では消費税減税を謳うところも出てきている。税金問題は我々の生活に直結するため、政争の具にされやすい。本書は、消費税増税の是非を今いちど考えるきっかけになるだろう。


『マンガでわかるこんなに危ない!?消費増税』
消費増税反対botちゃん著
ビジネス社刊
1200円(本体価格)+税

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