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【サブリース問題】なぜ、あのアパートの「入居者募集」ノボリは一年中なくならないのか?

2016/08/13 林 浩一

私の地元に一年中、「入居者募集」のノボリが立っている物件があります。ハウスメーカーが「一括借り上げ」「家賃保証」を誘い文句に土地オーナーを口説き、需要と供給のバランスを無視して家を建て続けるため、こうした物件が増え続けています。今回、こうしたハウスメーカーの活動にある規制がかかるようになりました。これをきっかけに業界は変わっていくのでしょうか。

賃貸アパートのサブリース契約には問題がある

私の地元、横浜市青葉区に以前から気になる賃貸アパートの物件がありました。

大手ハウスメーカーで手掛けた物件で一年中、「入居者募集」のノボリが立っていて、それが降りることのない物件です。一体、いつになったら入居者さんが入るのかなぁと、その前を通るたびに思っていました。

そして、その隣には他メーカーの築古アパートがあったのですが、先日行ってみると、解体され、更地になっていました。これでまた、「一年中、募集ノボリが立っている物件」がひとつ増えるのか…と思うと暗い気持ちになってしまいました。

以前、大手ハウスメーカーのサブリース(一括借上)の問題について指摘しました( http://sumai-u.com/?p=4842 )。ハウスメーカーの系列の管理会社が一定期間、大家さんから土地と建物を一括して借り上げ、空室があってもその間の家賃収入を保証してくれるという賃貸システムです。

この問題をおさらいしておくと、一定期間が過ぎると賃料の見直しがあり(多くの場合は2年毎に家賃の見直しが行なわれる)、家賃収入はどんどん下がっていきます。「一年中、募集ノボリの降りない物件」の場合、建設費にかけたローンの月々の返済がキツくなるほどの額に下げられてしまうことは間違いないでしょう。

最悪の場合は破綻し、物件は解体されて大家さんには借金だけが残ることも。結局のところ、サブリースの家賃保証は正常に機能していないことになります。

なぜ借り手のないアパートが建てられるのか

こうした問題が起こるのは、ハウスメーカーが需要と供給のバランスを無視して、賃貸アパートを建て続けていることが原因のひとつになっています(もちろん、サブリースの甘い誘いに乗って「すべておまかせ」してしまう大家さんの責任もないわけではありませんが)。

その原因のウラには、従業員1万人以上の大手ハウスメーカーが多く存在していて、企業間で熾烈な競争をしているという日本の特殊な業界構造があります。

大手のハウスメーカーのほとんどは、戦後間もなくに設立した会社です。第二次世界大戦で日本の都市部のほとんどは焼け野原になり、その後、復興を成し遂げて高度経済成長記を迎えましたが、その間、圧倒的に不足していた住居を何とかまかなっていくことができたのは、ハウスメーカーが企業努力を続けてきたからにほかなりません。

これは、ハウスメーカーの功績といっても過言ではないでしょう。

このまま家を建て続けたらどうなるか

しかし、いまは時代が180度違います。国民の人口はすごい勢いで減少し、少子高齢化社会がやってくるのです。すでに空き家問題や賃貸アパートの空室率の上昇という形で顕在化していますが、このままハウスメーカーが戦後と同じ勢いで家を建て続けたら、破綻することは必至です。

今後、ハウスメーカーが生き残っていくのに残された選択肢は、そう多くないように私には思われます。大幅なリストラをして規模を縮小していくか、市場を国内ではなく海外に求めるか、せいぜいふたつくらいの選択肢しかないのではないでしょうか?

ただ、ふたつ目の選択、すなわち海外市場への進出には、希望があると思います。日本のハウスメーカーの技術力は高く、地震や災害に負けない住居をつくる技術は海外に負けません。

もっとも、アジアの開発途上国向けに住居を提供するには、低コストの家を建てるビジネスモデルを構築しなければなりません。むずかしい試みですが、これにチャレンジするしかない時機に来ていると思うのです。

国交省もようやく規制に乗りだした

以前、国交省の住宅課の方とお会いしたとき、「企業の活動をさまたけるような規制はかけにくい」という話を聞いたことを書きました。大家も事業者とみなされるので、基本的には事業者の自由と自主性に任せているというスタンスのようです。

そんな国交省も重い腰を上げたようです。2016年9月からサブリース契約をする際、将来的な家賃減額などのリスクを説明する義務を課すようにルール変更をするほか、2018年7月から違反業者を公表するのだとか。もちろん、これは企業の活動を妨げるような規制ではなく、リスクを説明するのは当然のことだと思います。

こうした動きを受けて、業界が正常化していくことを私は願っています。「一年中、募集ノボリの降りない物件」を見るのは、あまりにも悲しすぎますから。

※参考リンク
「家賃保証」アパート経営、減額リスクの説明義務化
http://digital.asahi.com/articles/ASJ89753HJ89UTIL05G.html?rm=507

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