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住まい探しの知恵と事実

「1分=80m」はどうして決まったの?

【駅徒歩5分】のマンション、本当は何分かかる? ハイヒールの女性が実際に歩いて検証してみました

2017/09/19 橋本みゆき

物件探しをする際に、ひとつの基準となるのが、最寄り駅からの所要時間です。通勤で駅を利用される人であれば、起床時間に大きな影響を与える最重要項目とも言えます。賃貸であっても売り物件であっても、物件情報には「駅徒歩●分」という記載がありますが、この所要時間は何を基準に決められているのでしょうか。本当に信用できるのか、できないのか、実際に歩いて検証してきました。

「駅徒歩●分」はどうやって決められているの?

© tksz – Fotolia
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売り物件であっても賃貸物件であっても、インターネットの物件情報やチラシなどの広告には必ず、「駅徒歩●分」という記載がされています。

この「駅徒歩●分」ですが、「どうやって測っているの?」「どんな基準で決められているの?」と不思議に思われている人もいらっしゃるのではないでしょうか。

 

徒歩1分=80mという基準なら知っている」という人もいらっしゃるかと思いますが、駅の改札までの距離なのか、ホームまでの距離なのか、また家のどこから距離なのか、マンションの場合はどこが起点になるのか、といったところまでは知らないという人がほとんどでしょう。

 

実は、この「駅徒歩●分」という記載には、「徒歩1分=80m」を含めた3つのルールがあります。まずは、この3つのルールについてご説明していきましょう。

 

<ルール1>徒歩1分=80m

このルールは知っているという人もいらっしゃるでしょう。不動産業界で働いている人であれば、おそらく入社初日に先輩に教わっているはずのルールです。

 

駅からの徒歩分数は、「徒歩1分=80m」の基準をもとに計算されています。1分未満は切り上げになるため、たとえば600mの距離にある物件であれば、「600m÷80m=7.5分」となることから「駅徒歩8分」という表記になります。

ちなみに、このルールに違反すると、不正広告と判断され処分されることもあるほど大切なルールです。

 

<ルール2>駅敷地内までの距離

この時間計算でポイントになるのは、「駅の改札口」や「高層階にある自宅玄関」までの時間ではないということです。駅であっても自宅であっても、起点となるのは、それぞれの敷地内の入り口です。

 

たとえば、東西南北に複数の出入り口がある駅であれば、自宅からの最寄り出入口までの距離になります。

また、居住棟がいくつにも分かれている大規模マンションの場合も同様で、それぞれの居住棟までの距離ではなく、マンション敷地の入り口までの距離を「1分=80m」で換算しているため、要注意です。

 

タワーマンションにもなると、自宅玄関から出て、エレベーター待ちをし、敷地外へ出るまで10分程度かかってしまうこともあるでしょう。実際にかかる時間は、物件情報に記載された「徒歩●分」に、玄関から敷地入り口までの時間を加味する必要があるのです。

 

<ルール3>信号待ちはノーカウント

よほどの駅前物件に住んでいない限り、駅から自宅までの道のりで、一度や二度は信号待ちをするという人がほとんどかと思います。

 

これも重要な点ですが、「駅徒歩●分」という時間表示には、信号や踏切での待ち時間は含まれていません。また、平坦な道を歩くよりも時間がかかると思われる歩道橋や坂道などの有無も考慮されていません。

 

ですから、たとえば同じ「徒歩5分」であっても、信号の数や坂道の有無でかかる時間は変わってきます。

 

ハイヒールで実際に歩いてみました

© naka – Fotolia
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ここまでを読んでいただいて、「そんなの絶対に所定時間内で歩けるわけがない」とツッコミを入れたくなった人は少なくないことでしょう。

そこで実際に、広告上に表記されている時間内で、駅まで歩けるのかを検証してみました。比較のため、スニーカーとハイヒールでそれぞれ1回ずつ歩いています。

なお、筆者の身長は156cmのため、背の高い男性であれば、所要時間はもう少し短くなると思われます。

 


 

<ケース1>駅徒歩5分

駅から400mの物件

・信号のない商店街のなかをひたすら歩くコース

・平坦な道のため、上り下りはなし

 

実際の結果は、以下のようになりました。

スニーカーの場合4分20秒

ハイヒールの場合4分55秒

 


<ケース2>駅徒歩3分

駅から240mの物件

・線路下をくぐる道のため、こちらも信号・踏切なし

・駅に向かって少し下り坂になっているコース

※実験では駅に向かって下り坂を歩いています

 

実際の結果は、次の通りです。

スニーカーの場合2分10秒

ハイヒールの場合2分30秒


 

意外にも表記時間内より早く歩けることが判明

実際に歩いてみるまでは、日頃の運動不足もあり、絶対に1分で80mは歩けないだろうと思っていましたが、いずれの実験でも表示時間よりも早く到着することができました。

なお、今回は、ただひたすら目的地を目指して黙々と歩いたため、通勤などで歩くときよりも、いくらか早く到着した可能性があります。

 

もちろん、歩くスピードには個人差がありますし、同じ人であっても重い荷物を持っている日、スーツケースやベビーカーを押している日、雨が降って傘を差している日など、その日の条件によって結果は変わってくることでしょう。

 

ただし、実際に歩いてみて気づいたことがひとつあります。

それは、スマホに目を落としながら歩いている人(いわゆる「歩きスマホ」ですね)、カロリーメイトやコーヒーなどを口にしながら歩いている人(歩いた時間が朝だったからだと思われます)など、歩きながら別のことに気を取られている人が本当に多かったということです。

そのため、ただひたすら歩くことに集中していた私は、かなりの人数を抜いて駅に到着しました。

 

歩くことだけに集中しているよりも、「ながら歩き」のほうが気も紛れますし、歩くスピードもゆっくりになるので、疲労感は少なくなると思います。

ですが、スマホに目を落としながら歩いている人は、前から歩いてくる人や電柱にぶつかりそうになることが多かったので、みなさんも「歩きスマホ」をしないよう気をつけてください(本題から逸れてすみません…)。

 

実は女性がハイヒールで歩く時間が基準になっていた

実は、この実験以降も何度か試してみたのですが、やはり「徒歩1分=80m」に収まる結果に終わりました。スニーカーのときはともかく、なぜハイヒールのときまで、基準となる時間内に収まるのか疑問に思われることでしょう。

 

私が不動産会社に勤めていた頃、先輩に教えてもらったことがあります。実は、この「徒歩1分=80m」というルールは、「ハイヒールをはいた女性」が歩くスピードを基準に決められているそうなのです。

最初は半信半疑でしたが、その後も色々なところで、このルールは女性がサンダルやハイヒールをはいて歩いたときに算出された数値を基準にして決められているという話を耳にしました。

 

なかでも、かなり年配の大家さんにお伺いしたところによると、元々の案は「徒歩1分=100m」だったのですが、女性の脚に基準を合わせるべきだ!と現在の「徒歩1分=80m」に変更されたそうです。

この話は、不動産公正取引協議会の周年誌に載っていたとお伺いしたので、興味のある人は、ぜひ該当記事を探してみてはいかがでしょうか(笑)。

 

正確な時間は自分で確かめるしかない

今回の実験では、表記された時間以内で歩くことができましたが、必ずしも時間内に歩けるとは限りません。

実は、以前私が住んでいたマンションは、駅から徒歩10分という表記だったにも関わらず、私は毎朝15分以上かかって駅に辿り着いていました。信号はひとつだけありましたが、信号に引っかからずに通過できた日でも、10分を切れたことは一度もありませんでした…。

つくづく、物件やコース、個人の歩くスピードによりけりだなと感じました。

 

同じ物件であっても、時間帯によっては、信号や踏切の待ち時間が違うこともありますし、自分の体調の良し悪し、天候など、さまざまな要因で歩行スピードは変わってきます。「徒歩1分=80m」という数値は基準ではあるものの、不確定な要素が多いのも事実です。

 

そのため、気になる物件を見つけたら、最低でも一度自分の足で歩き、時間を計測してみてください。歩道橋の有無や道幅、通行人の多さなど、たくさんのことに気づきます。

また、現地に足を運ぶことで、それまで気づかなかった街並みや住人の属性など、思わぬ収穫を得ることも期待できます。ときには、思わぬ抜け道が見つかることもあるので、個人的に現地散策をおすすめしています。

 

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