連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(4)

その賃貸物件のリノベーション、いったい誰のためですか?

2016/04/16 林 浩一

空室対策のためにリノベーションを行なう大家さんが増えているようです。しかし、多額のお金をかけてリノベーションしても、その目的を間違えてしまうと何の意味もないどころか運営さえ危うくなってしまいます。何のためのリノベーションなのか、見失わないようにしたいものです。

リノベーションで空室対策をする大家さん

 住宅関連の業界紙や専門誌などを読んでいると、そのときの最新トレンドを反映した物件が数多く紹介されています。

 最近では多くの人が知っている「リノベーション物件」という言葉も、こうした住宅メディアから発信され、世間に広まった例でしょう。念のために説明しておくとリノベーション物件とは、古くなった建物を修復して元の状態に戻す「リフォーム」とは違い、大規模な改修を行なって新築と同程度か、それ以上の状態に生まれ変わらせることをいいます。

 そして、「最近、入居者さんの退去のペースが早くなった」とか、「空室がなかなか埋まらない」といった悩みを抱えた大家さんが、その対策としてリノベーション物件に取り組むことも増えているようです。

やりすぎると逆効果になることも

 物件選びをするとき、間取りや立地条件といった要素だけでなく、初めて物件を見たときの印象、すなわちファースト・インプレッションも大きい要素ですから、テレビや雑誌に紹介されるようなオシャレなリノベーション物件は、成約に結びつく確率が高くなるのは間違いないでしょう。

 ただし、リノベーションもやりすぎるとかえって逆効果になることもあります。たとえば、見た目がカッコイイからといって壁紙や家具などをどぎつい原色系の色に統一した部屋は、確かにインパクトはありますが、そこで生活する人にとっては落ち着かない、派手すぎる部屋になってしまいます。

 その結果、退去のペースが早くなって、常に募集をかけなければならない部屋になってしまっては何のためのリノベーションなのかわかりません。

リノベーションにどれだけお金をかけるか

 もうひとつ気をつけなければならないのは、リノベーションをするにはリフォーム以上のお金がかかるということです。

 私の知り合いの大家さんに、1部屋に400万円のお金をかけてリノベーションマンションにした方がいます。特注のキッチンをそろえ、水回りも新しくして、壁や床もそれに合わせてすべて張り替えたそうです。そのマンションは4部屋ですから、全部で1600万円の投資です。

 仮にそのマンションの家賃が10万円だとすると、1カ月の収入は40万円になります。ということは、1600万円の投資を回収するには40カ月、すなわち3年とちょっとかかるわけです。常に満室というわけにはいかないでしょうから、4年くらいかかるかもしれません。その間はずっと利益が出ないわけですから、かなりキツい状況です。

 もちろん、その物件が多くの人に気に入られ、長く住み続けてくれる物件になれば、大家さんにとってもメリットはありますが、どれだけお金をかけることができるかをしっかり見きわめなければいけません。先ほどお話したように、やりすぎてしまった結果、退去のペースが早くなって、常に募集をかけなければならない部屋になってしまうと、資金の回収さえむずかしくなっていきます。

本当に考えるべきは、入居者にとっての住み心地

 リノベーションには施工会社や設計事務所、不動産会社、金融機関など複数の会社が関わります。業者にとっては、自社が手掛けた物件がメディアに取り上げられたりすれば、「施工例」として実績になるので十分なメリットがあります。

 しかし、大家さんにとって大事なことは、革新的なリノベーションを手掛けてメディアにとりあげられることでも、有名になることでもありません。それなのに、最近では、大家さんが自己満足の作品づくり化してきてます。

 また、たとえ現時点では最新トレンドでも、5年先、10年先には古くさいものになることも大いにありえます。しかも、そもそもトレンドとは、供給側が勝手に仕掛けていくことで、そこに需要側・入居者の意見が反映されてないことが多くあるのです。

 何よりも優先して考えなければならないのは、大家さんどうしが作品づくりを競うことではなく、入居者さんに快適な住空間を提供することです。リノベーションは、そのためにこそ行なわれるべきで、リノベーションすること自体が目的になってしまってはいけないと私は思うのです。

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