連載・トピックス / 不動産投資

改ざん、過剰融資、中抜き…

なんでもありのシェアハウス「かぼちゃの馬車」トラブル

2018/06/13 住まいの大学

(取材・文/住まいの大学 編集部)

シェアエコノミーと 人気のシェアハウス

スマートデイズホームページ 左側の「世界で一番感謝される会社を創る」という言葉が虚しい

ここ数年シェアエコノミーが注目されるなかで、その典型例として新しい出会いやコミュニティの場としてシェアハウスがクローズアップされてきた。そんなこともあってかドラマや映画では、ちょっと小粋でおしゃれなシェアハウスが舞台設定としてしばしば登場している。現実のシェアハウスでも、広いリビングに居住者が集まり、そこに住む人が集いコミュニケーションをとったり、女性専用、子育て世帯専用といったもの。ワークルーム、音楽用スタジオなど仕事場や趣味のスペースを設けた個性的なシェアハウスが登場し、人気も高い物件もあるようだ。その一方で不動産投資において、アパートやワンルームマンショに比べ、高い収益が得られるとシェアハウスへの関心が高まっていた。

そんな矢先の2018年1月、「かぼちゃの馬車」というブランドで投資用女性専用シェアハウスで急成長していたスマートデイズが、30年間のサブリース契約していたオーナーに対して、家賃支払い停止を一方的に通知。これをきっかけにシェアハウス投資をめぐる問題が一気に表面化、社会問題になっている。とはいえ、このスマートデイズをめぐっては、17年10月下旬からオーナーに対して、借り上げ家賃の減額請求がはじまっており、オーナーの間からは不安視する声が出ていた。

そもそも日本のシェアハウスは、外国人旅行者などが長期滞在する「ゲストハウス」からはじまったものだった。こうしたシェアハウスは入居の際の仲介手数料や保証人が不要、家具や家電も完備され入居者のメリットが大きいと注目が集まった。その一方で、オフィスや倉庫を1~2畳のスペースに仕切り、居住用シェアハウスとして貸し出す違法貸しルーム、いわゆる“脱法ハウス”が横行。この対策として、国土交通省は13年にシェアハウスは「寄宿舎」に該当すると見解を出し、脱法ハウス規制を行った。しかし、この寄宿舎の基準があまりに厳しく、すでにワンルームマンションや戸建てといった居住用住宅を改造したシェアハウスまでも脱法ハウスになってしまうためシェアハウス業界は、この規制の見直しを求めていた。

女性受けしそうな内装で入居付けを試みたが結果はご存知の通り

その後、15年に東京都が戸建て住宅、マンションを転用したシェアハウスの規制を緩和。シェアエコノミーの高まりとも相まって、住宅型のシェアハウス投資が大きく広がっていくことになる。実際、スマートライフ(スマートデイズの前社名)の売上も15年7月期の20億円・営業利益は4900万円から16年7月期には売上180億円・営業利益12億円と売上、利益を急激に伸ばし、20年には上場を目指していた。

銀行も結託? 騙しのスキーム

スマートデイズのシェアハウスのビジネスモデルは、いたってシンプルだ。それはオーナーが銀行ローンでシェアハウスを購入。スマートデイズが30年間一括借り上げを行い、家賃を保証し、管理運営を行うというサブリース。また、管理についても独自の考え方を持っていた。前身であるスマートライフの実質的なオーナーだった佐藤太治氏を知る人は「女性専用にすることで物件は傷まず、居住者のなかから寮長的な人が自然発生的に現れるため変な居住者は排除されるため管理も楽だ」と女性専用シェアハウスのメリットを聞かされたという。

しかし、スマートデイズの被害をここまで大きくしたのには理由があった。

「一般的なサブリースは土地を持った人に銀行ローンでアパートを建ててもらって、それを一括借り上げするのですが、スマートデイズの特異なところは、土地代も含めて銀行ローンを組んで販売しているところです。融資額も1億円から2億円が中心で、ローンの中身もフルローン、オーバーローンになっているんですね」

こう話すのは「シェアハウス被害者の会」日本不動産仲裁機構・専務理事の大谷昭二さんだ。シェアハウスのサブリースではスマートデイズ「かぼちゃの馬車」が大きくクローズアップされているが、シェアハウスのサブリースをめぐる被害は5月に破綻した「ゴールデンゲイン」をはじめ、「サクトインベストメントパートナーズ」「サンフィール」「ガヤルド」がある。そして、その被害者の多くは、企業に勤めるサラリーマンという点も共通している。

「被害者は上場企業に勤めている会社員が多く、そのほかには士業もいます。年収800万円~1000万円ぐらいで、いわゆる属性のよい人たちです」(大谷さん)

ビジネスマンや士業といった金融に対してある程度の知識のある人が、今回のようにいとも簡単に籠絡されるものだろうか。そこにはスルガ銀行という地銀の雄の存在が大きく影響していた。
「詐欺的スキームといわれますが、シェアハウスの説明会はスルガ銀行の支店の会議室で行われ、そこでは銀行もこのビジネスモデルについて評価しているといっていたようです。こうしたこともあって、このスキーム自体が銀行主導のように見えて、事業会社、販売会社が群がって実際どうなっているかわからないような状況が作られてしまっていたわけです。顧客は言われるままに書類は出して、印鑑を押した人が多かった。しかも、家賃についてはスマートデイズが30年間、一律の家賃を払ってくれるといわれれば、サラリーマンでやっていけるだろと安心してしまったようです」(大谷さん)

また、契約をした人のなかには、最初から銀行ローンの審査を通らないだろうと思っていた人も多かったという。というのも、土地と建物をまとめてフルローンにしていため、一件あたりの融資金額も多く、1億円~2億円を中心に、なかには3億を超える融資だったため、そう簡単にローン審査が通るとは思っていなかったからだ。しかし、結果は億単位の融資がいとも簡単に実行された、その背景には、ローン審査に提出した預金通帳などの書類の改ざんがあった。

一般的にはローン審査では、収入を証明する源泉徴収票や納税証明書、預貯金の証明のため通帳の原本の提出が求められる。しかし、スルガ銀行では預金通帳などの書類はコピーでもよく、そこで改ざんが行われていた。そうした改ざんによって、実際の預金残高が30万円しかないのに、スルガ銀行に提出された書類では6000万円になっていたものまであった。しかも、こうした書類の改ざんは、1件、2件ではなく、ローンを申し込んだ人の大半から発見されている。

「こうした書類の提出は、本来は銀行が自らを守るためのものなのですが、これがコピーでも可能というのは、それを放棄したようなものです。しかも、スルガ銀行ではスマートデイズがおかしくなる以前、サクトやゴールデンゲインといったシェアハウス事業が破綻していたことを知っており、このビジネスモデルそのものが破綻する可能性があることを予見できたはずなんです」と大谷さん。

しかも販売されたシェアハウスの価格は、土地、建物ともに相場の3~4割高くなっており、その分被害額も多くなった。

「シェアハウス用に仕入れた土地の地主はすべてバラバラですが、買った土地の値段は先方の言い値で買っています。なかには買った値段では売れるわけがないような価格で購入しているものもありました」

スルガ銀行が明らかにしたところによると、一連のシェアハウス関係の土地・建物を購入した人は1258人、融資の総額は2035億円にものぼった。

スルガ銀行はこれまで社内委員会の報告書において融資の審査を行う書類に改ざんがあることは認めていたが、自行の行員が関与していないとして、自らも被害者としていた。しかし、シェアハウス関連融資に関係した行員へのアンケート調査の結果、改ざんの事実を「相当数の社員が認識していた可能性が認められる」と主張を転換しているものの、不正に関与していないという立場を貫いている。そのため一部のオーナーが求める代物弁済に対しても拒否の姿勢をくずしてはおらず、オーナーそれぞれに個別に交渉をしてきたいとしている。


サブリースでトラブルが 絶えない理由は何か

今回のスマートデイズをはじめとしたシェアハウスはもとより、アパート、マンションでのサブリースをめぐるトラブルは、いまもあとをたたない。なぜサブリースのトラブルは繰り返されるのか。

「その1つの理由が法律的な不備がある」と大谷さんはこう指摘する。

「基本的には、家主を守るべき法律があるかということなんです。入居者がきちんと入っているときにサブリースの会社を変えたいという場合、サブリースの管理会社も賃貸物件を管理料が受け取れるので、そうした物件は手放したくない。法人といえども借家法によって賃借人は守られるため、転借といえどもサブリースの契約解除に応じなくてもよいわけです。本来、借家法は弱い人を守るための法律なんですが、それがいまは違っていて個人のオーナーは守られず、管理している物件を押さえておきたい管理会社が守られているのです。

逆に入居者がなく家賃保証をする場合では、契約書に『家賃の減額に応じなければ解約ができる』とあれば、一方的に家賃を下げることできます。こうしたケースでオーナー側の楯になるのは消費者契約法なのですが、いまはほとんどの契約書に、この一文が入っておりこの法律もオーナーを守る手立てにはなりにくい」

その一方でオーナー側にまったく問題がないとも言い切れない部分もある。国土交通省がサブリースについて、オーナーへのアンケートを行った際、およそ8割のオーナーが業者の出した収支計画書を見たこともないという結果が出たというのだ。

大谷さんがこう話す。

「銀行がサブリースで貸し出す際に見るのは、収支計画書と大規模修繕の2つです。たとえば、収支計画書では周辺の家賃相場が5万円だったとしても、7万5000円で設定しても銀行の審査は通ります。つまり、収支計画書から貸し出せる金額をはじき出しているともいえます。こうしたことを勉強しているオーナーさんもいますが、まったくそうでないオーナーもいます。ましてや自宅の家や土地を共同担保にしていれば、デフォルトしてしまったときはすべてを失うことになります。実際、大手のサブリースを行っている会社はそういう仕組みを利用してきます。30年間一括借り上げ、家賃保証という言葉に安心せず、こうした書類をきちんと精査すべきです。そして、サブリースを行う会社が果たして、30年後も存続できる会社なのかの見極めも必要です。スマートデイズの案件では、奥さんにも相談せず販売会社の営業マンから『こういうことは男が判断するものです』といわれ契約書にハンコを捺した人もいたそうです。きちんと回りに相談していれば違った結果になっていたかもしれません。3億円も借りられるんだと舞い上がってしまった人もいたようです。もっときちんとリスクも考える必要があります」

スマートデイズをはじめとした一連のシェアハウスの融資の問題は、スルガ銀行そのものの経営を揺るがす大問題になる可能性も指摘されている。そのため不正があったとしても、スルガ銀行がそう簡単には融資そのものを白紙撤回するとは考えにくい。実際、すでに融資をしたオーナーに対して個別に交渉をはじめており、被害者団体の切り崩しにかかっているともいわれる。問題が表面化して、半年を過ぎたが、いまだ事件全体の構図は見えていない。しかも、オーナーに対して相場より高く売って、その途中で抜かれた金の行方の解明はまったく手が付けられていない。この事件の本質が見えてくるのはまだまだ先になりそうだ。

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