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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(17)

インスペクション(住宅診断)導入で「新築神話」崩壊の日がやってくる!?

2016/07/04 大友健右

中古住宅の売買契約を結ぶ際、インスペクション(住宅診断)を行なうかどうかを売り主や買い主に確認するよう不動産仲介業者に義務づける法案が閣議決定されました。日本では、欧米諸国に比べて中古住宅の流通シェアが非常に小さいのですが、この取り組みによって中古住宅の流通は活性化するのでしょうか。その見通しと課題についてお話しします。

そもそも「インスペクション制度」とは?

 2016年2月16日、中古住宅の売買契約をする際、専門家が家屋の傷み具合を調べるインスペクション(住宅診断)を行なうかどうかを売り主や買い主に確認するよう不動産仲介業者に義務づける法案が閣議決定されました。この法案は、2018年の施行を目指して準備が進められています。

 診断の対象となるのは、蟻害、腐朽・腐食や傾斜、躯体のひび割れ・欠損、雨漏り・漏水、給排水管の漏れや詰まりといった建物の構造に関するもので、住宅に精通したインスペクター(住宅診断士)が、第三者的な立場から改修すべき箇所やその時期、おおよその費用などを見きわめ、アドバイスを行ないます。

 こうした取り組みは、これまでまったく行なわれていなかったわけではありません。ただ、現場で検査を行なう人の技術力や診断項目などが業者ごとにまちまちで、満足な判断基準を得られないことが問題になっていました。そこで国土交通省は2013年6月に「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を策定し、インスペクションの信頼性を高めようとしてきました。

欧米諸国では中古住宅の流通が盛ん

既存住宅の流通シェアの国際比較(出所:国土交通省 http://www.mlit.go.jp/statistics/details/t-jutaku-2_tk_000002.html )

 日本の中古住宅の流通シェアは、欧米諸国と比べて非常に低いということは、以前から多くの人が指摘してきたことです。

 国土交通省のデータによれば、アメリカの83.1%(2014年)、イギリスの88%(2012年)、フランスの68.4%(2013年)という数字に比べて、日本はなんと14.7%(2013年)しか中古住宅が流通していないのです(左表参照)。

 したがって、インスペクションの活用を推進し、中古住宅の信頼性をあげようとするこの動きは、中古住宅を買って自分好みにリノベーションをする人気が高まっている昨今、消費者とって非常にうれしい取り組みだといっていいでしょう。

 また、中古住宅が流通しにくい日本の異常な不動産市場を健全化するという意味で、業界関係者にとっても歓迎すべき動きです。

重要なのは「検査の客観性」と「第三者性」

 とはいえ、この件で注意しなければならない点があります。

 それは、先に述べた法案が、「検査を行なうかどうかを売り主や買い主に確認する」ことを不動産仲介業者に義務づけたもので、インスペクションそのものを義務化するものではないということ。もちろん、これまでインスペクションの「イ」の字も知らなかった消費者に対して、その存在を知らせることに意味がないわけではありませんが、中古住宅の市場に大きなインパクトを与える効果があるかというと、疑問が残ります。

 もうひとつの注意点は、検査機関および検査を行なうインスペクターの客観性、および第三者性です。検査機関が不動産会社と何らかのつながりのある会社なら、検査結果を不動産会社に都合のいいようにねじ曲げて報告するかもしれません。

 私はこの連載において、多くの不動産業者がAD(広告費)や担当者ボーナス(担ボー)という名の裏金を売り主に要求することを指摘していますが、そうした裏金をインスペクターに渡して検査結果をねじ曲げることも可能でしょう。

 そもそも日本の不動産市場で中古住宅が流通しにくいのは、個人の売り主の中古物件は売却を担当する元付不動産会社と、集客を担当する客付不動産会社で別になることが多く、儲けが薄い(両手取引ではなく、片手取引になる)ため、不動産会社が積極的に売ろうとしないところに原因があることを忘れてはいけません。

 理念として素晴らしい制度も、その運用をねじ曲げれば、いくらでも無力化、悪用が可能です。それを防ぐためには、中古住宅の売り主や買い主、すなわち消費者の立場にいる人たちが、インスペクションが正しく運用されているかに注意し、これを活発に利用して中古住宅の市場を活性化させることが重要です。

今回の結論

・売買契約をする際、専門家が中古住宅の傷み具合を調べるインスペクション(住宅診断)をうながす法案が2018年から施行される。
・だが、インスペクションそのものを義務化するものではないため、その効果は限定的かもしれない。
・しかし、検査の第三者性がしっかり担保され、消費者がこれを活発に利用するようになれば、中古住宅市場は活性化するかもしれない。

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