連載・トピックス / 不動産投資

怒りのご近所さんが物件にゴミを放り込んだ!

オーナーさんの選んだ解決策とは?

2019/09/10 住まいの大学

文/住まいの大学編集部

画像/123RF

3階建て・7室。小さな賃貸マンションのオーナーのもとに、ある日、とんでもない一報が舞い込みました。電話の主は入居者さんでした。「1階エントランスにゴミがどっさり置かれています。臭いのでなんとかしてください」と、いうのです。「張り紙もされていますよ。見に来て下さい」とのこと。


自宅から車で10分のその場所に、オーナーさんが慌てて駆けつけてみると、そこにあったのは…


ビニール袋に入った生ゴミ、紙ゴミ、プラスチック製品や壊れた小家電、ペットボトル、空き缶…


なんと、ふた抱えほどもあるゴミの山でした。見ると、たしかに張り紙もあります。こう書いてありました。「ここでは町内みんながゴミ出しルールをきちんと守っています。守れない人はゴミを出さないで下さい」


一目瞭然でした。


おそらくは、決まった収集日以外にゴミを出したり、分別されていないゴミを捨てたりするなど、ルールを守らない人が入居者の中にいて、それがご近所の皆さんの激しい怒りを呼んでいるのです。


オーナーは、さっそく町内会長のもとへ出向きました。開口一番に言われたのは、「大家があなたに変わってから、ゴミ出しの状況があまりにひどい」でした。


ちなみに、このマンションには専用のゴミ置き場がありません。なので、入居者は、町内の人々が利用する共同の集積所へゴミを捨てに行かなければなりません。


町内会長はオーナーさんにこう問いかけました。


「あのマンション、以前は社宅として借り上げられていましたね」


「はい。会社が撤退することになり、前のオーナーさんが物件を売りに出しました。それを半年前に私が買いました」


「じゃあ、いまあそこに住んでいる人は、全員あなたが入居させた人なんだ」


「そうです。私が自主管理しています」


「そのうち2~3人が、ルールなど無視して、好き勝手にゴミを捨てているんです。収集日が来るまでゴミは集積所に置かれっぱなし。悪臭もひどい。近所の皆さんが集まって分別作業をさせられています。以前はこういうことはなかった。つまりは、あなたの管理がだらしないということです」


こっぴどく叱られてしまったオーナーさん。すぐに市役所を訪れ、ゴミの収集日が記されたパンフレットを分けてもらい、それを物件の各部屋のドアポストに入れて回ったそうです。ですが、問題はまったく収まる気配を見せません。


その後は、ゴミが放置されるたびに、「引き取りに来てくれ」と、オーナーさんの携帯電話が鳴らされる始末。オーナーさんは悩み、友人のAさんにこのことを相談したそうです。


なお、Aさんは、企業へ向けたコンサルティングを行っている方でした。専門分野はCSです。CSとはcustomer satisfaction(顧客満足)の略です。Aさんは企業に「顧客満足」のための方策をアドバイスする先生でした。


Aさんの指示は明快でした。


「カフェの店先にあるような、折りたたみ式の黒板を一枚買ってください」


「それに文字を書いて、ゴミ収集日の早朝、マンションのエントランスに置いてください」


「早朝が辛ければ、前の晩から用意しておいてもいいですよ」


さらに、黒板に書く3種類の文言についても、Aさんから具体的な指示があったそうです。


その1:
入居者さんへ向けた「おはようございます」の挨拶と、「通勤・通学おつかれさま」のねぎらいの言葉


その2:
「本日は〇〇ゴミの収集日です。曜日・分別に間違えはありませんか?」の問いかけの言葉


その3:
「ご近所の皆さんが私たちの集積所を清掃してくださっています」「お見かけしたらご挨拶を」との呼びかけの言葉


以上を


・オーナーさん自身が、黒板にチョークで手書きで書く
・大家の〇〇〇〇と、氏名もはっきりと添える


そのうえで、


「ゴミ収集日の朝、入居者さん全員の目に留まるように、その黒板をエントランスに置いてください」


とのことでした。オーナーさんは、さっそくこれを実行に移したそうです。すると、効果は驚くほどのものでした。以降、入居者さんによるゴミ出しルールの違反は一切見られなくなったのです。さらには、


「最近マンションの若い人が集積所で挨拶してくれるようになった」


ご近所の方からのそんなうれしい声が、オーナーさんのもとに届くようになったのだそうです。


この結果を見て、オーナーさんはあらためて気づいたそうです。それは、「入居者さんはお客様なんだ」ということです。Aさんのアドバイスに対し、実は当初、オーナーさんの気持ちの中にはかなりの抵抗感がありました。


「ルールを守らない一部の人間のために、なぜこちらがへりくだらないといけないんだ?」


とはいえ、そんな正論をいくら振りかざしても、おそらく問題は解決しません。


そこでオーナーさんは、こう考えてみることにしたそうです。


「思えば、決まった時間に集積所までゴミを出しにいかなければならない私の物件は、そうでない物件に比べて、サービスの面では劣っているということになる」


「お客様である入居者さんに、私はご不便をおかけしているんだと考えよう。その分、私も汗をかこう。そうすれば、想いは伝わるのかもしれない」


結局は、それが見事に、求めていた結果に結びついたということです。その後、Aさんからは、こんなアドバイスがあったそうです。


「入居者さん全員にあててオーナーさんから手紙を書いてください。内容は、ゴミ出しルールを皆さんがしっかり守ってくれていることへのお礼と、旅行などが収集日にぶつかった際は、ゴミはオーナーが預かるのでいつでも連絡をしてくれとの呼びかけです。そのうえで、黒板でのコミュニケーションは月3回程度に減らしてよいでしょう」


さらに、こんな添え書きもされていたそうです。


「なお、安心してください。オーナーにゴミを預けるという人は、実際はほとんど出てこないはずです。なぜなら、オーナーさんの気持ちに対して、『この人に迷惑はかけられない』とのスタンスで応えるかたちが、いまは皆さんに出来上がっているからです」


本当にそのとおり、ゴミを預けたいという人は、その後出てこなかったそうです。


(文/朝倉継道 画像/123RF)



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