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いつまでなら違約金なしでキャンセルできる?

マンションの売買契約をキャンセルしたい! 手付金はどうなる? 違約金は取られるの?

2017/08/11 横山晴美

マンションは人生最大の買い物ですから、決断には勇気が必要です。モデルルームへ行き、ついその気になったものの、冷静に考えたら身の丈以上の買い物だったのでやっぱりキャンセルしたい…という声もよく聞きます。無理な買い物ならば、キャンセルも止むを得ませんが、すでに売買契約を結んでいた場合、支払った手付金はどうなるのでしょうか? また、違約金はかかるのでしょうか? マンションの売買契約とキャンセル時のお金についてご紹介します。

マンションの売買契約はキャンセルできる?

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マンションの売買契約は、売り主と買い主、双方の「売ります・買います」という合意に基づいて成り立つものです。どちらか片方の意思で成立するような一方的なものではなく、双方の合意がなければ締結することはできません。

どちらか片方の意思だけでは成立しないというのは、売買契約のキャンセルについても同じです。お互いの合意に基づいて結ばれた契約を、どちらかの都合で一方的にキャンセルすることは認められないのです。

 

とはいえ、一度合意した契約は絶対に解約できないとなると、実務上、困ってしまうこともあります。そのため、売り主もしくは買い主が自己都合で契約のキャンセルを申し出た場合には、一定のペナルティーを与えた上で、売買契約のキャンセルを認めることになっています。

では、そのペナルティーはいつから、どの程度の額で発生するのでしょうか。

 

マンション売買契約の流れを知ろう

まずは、マンションの購入申し込みから引き渡しまでの大まかな流れを知っておきましょう。

 

(1)物件探し

(2)購入申し込み(申込証拠金を支払う場合もある)

(3)売買契約と手付金の支払い(申込みから1週間〜10日以内)

(4)住宅ローン契約

(5)住宅ローンの融資実行と残金の決済

(6)物件の引き渡し

 

購入申し込みをして、売買契約を締結する際には手付金を支払います。手付金は物件価格の一部を先払いするもので、売買契約の成立を示す証拠金の意味をもっているお金です。

住宅ローンの融資実行時には、手付金はそのまま頭金に充当され、購入代金から頭金を引いた残金を住宅ローンで支払うことになります。

 

この一連の購入手続きのなかの、どのタイミングで、売買契約をキャンセルするかによって、手付金が没収されてしまったり、違約金を支払わなければならなくなったりと、ペナルティーの取り扱いが異なります。

 

「購入申し込み」はペナルティーなしでキャンセルできる

売買契約を締結する前に、まずは購入申込みをしなければなりませんが、購入申込みをしただけの段階であれば、ペナルティーなしにキャンセルすることができます。

というのも、申込みはあくまで「購入したい」という一方的な意思表示であり、契約の前段階だからです。

 

物件によっては、購入申込み時に「申込証拠金」を支払わなければならないものもあります。

申込証拠金とは、「本当に購入を希望しています」という意思を相手に提示する意味合いで、不動産会社に預けるお金です。言い換えれば、冷やかしで物件を押さえたり、軽い気持ちで複数の物件を同時に押さえたりということを防ぐ目的で、支払いを求められる費用ということになります。

 

この申込証拠金ですが、購入申込みをキャンセルしたときには戻ってきます。これは自己都合によるキャンセルであっても変わりません。

なかには返還を渋る業者もいるかもしれませんが、キャンセル時に変換しなければならないことは、宅地建物取引業法で定められていますので、堂々と請求しましょう。

 

また、返還をめぐるトラブルを防止するためにも、申込証拠金を支払う際には、キャンセル時の取り扱いをしっかり確認しておくことをおすすめします。

なお、そのまま契約に進むときは、申込証拠金は契約時の印紙代や手付金などに充当されます。その点も確認しておくと安心です。

 

売買契約をキャンセル!手付金はどうなる?

© hanack – Fotolia

冒頭でもお話ししましたが、売買契約を締結した後に、買い主もしくは売り主が自己都合でキャンセルした場合には、ペナルティーが課せられることになっています。

 

まず、買い主が自己都合で契約をキャンセルした場合、支払った手付金は「解約手付」として没収されることになっています。解約手付は手付金の一種ですが、通常、手付金を支払ったときは、この解約手付とみなされます。

つまり、契約後であっても、買い主が支払った手付金を放棄すれば、任意に契約を解除することが可能になる仕組みが解約手付で、手付流し手付放棄などとも呼ばれます。

 

ただし、住宅ローンの審査が通らなかったために契約をキャンセルする場合については、通常、手付金は買い主に全額返金されます。

一般的に、契約には「住宅ローン特約」と呼ばれる条項が盛り込まれていて、住宅ローンの審査が通らなかった場合のキャンセルは自己都合キャンセルとは見なされず、手付金が返還されることが定められています。

 

売買契約を締結する際には、契約書に住宅ローン特約が明記されているかどうかを確認するようにしてください。

 

売り主の都合で契約がキャンセルされた場合は?

次に、売り主の都合で契約をキャンセルした場合について見てみましょう。

解約手付と逆の性質を持つのが「手付倍返し」です。これは、契約締結後に売り主の都合で契約をキャンセルする場合、手付金と同額を買い主に支払って契約を解除するというものです。

 

受領した手付金も返還するため、支払い額は手付金の倍額になることから手付倍返しと呼びます。また、手付金の倍返しをすることで、売り主は契約解除の損害賠償責任を負わない、とされています。

 

このように、手付金は売り主・買い主の双方にとって、セーフティーネットになり得ると言えるでしょう。

 

手付金の額は契約によって異なりますが、物件価格の10〜20%が目安です。ちなみに、宅地建物取引業法(宅建業法)では、売り主が宅地建物取引業者である場合は、物件価格の20%を超える額の手付金を請求することはできないと定められています。

 

たとえば、5,000万円の物件の売買契約を締結した場合、手付金が物件価格の20%だとすると、1,000万円もの金額を支払うことになります。

このように高額な手付金を支払うわけですから、売り主(不動産会社など)が倒産するなどして、物件の引き渡しができなくなった場合には、手付金が確実に買い主に返還されるようにしなければなりません。

そのために、宅建業法で義務づけられているのが、「手付金等の保全」です。

 

手付金の保全とは、

・未完成物件の場合には手付金の額が物件価格の5%もしくは1000万円を超えるとき

・完成物件の場合には物件価格の10%もしくは1000万円を超えるとき

に、売り主は買い主が支払った手付金等の返還を保証する保全措置を取らなければならないとするものです。

 

保全措置の具体的な方法としては、「金融機関や保険会社による保証を受ける」、「指定保管機関に保管してもらう」といったものがあります。

また、手付金の保全措置が義務づけられるのは、売り主が不動産会社など宅地建物取引業者で、買い主が個人の場合に限られます。

 

売買契約が成立するタイミングはいつ?

ところで、売買契約の成立するタイミングとは厳密にいつになるのでしょうか。

法律的には、売り主と買い主の意思が互いに合致したときとされています。通常、契約と手付金の支払いは同時に行なわれるので、そのときと考えるといいでしょう。

 

ただし、不動産という大きい売買においては、契約内容や特約、物件について詳細を記した契約書がしっかりと作成されていること契約書の重要事項について口頭で説明があることが求められます。

 

なかには、「人気物件で早く契約しないと間に合わないから、とりあえずサインして手付金を払ってください」と言ってくる業者もあるようです。

業者からそのようにせっつかれ、言う通りにしてしまったものの、不信感から契約をキャンセルし、「重要事項説明がないから契約は成立していない。手付金を返してほしい」と裁判で争った事例もあります。

 

決して業者の言いなりにはならず、慎重に検討し、納得した上で契約と手付金の支払いを行なうようにしてください。

 

違約金がかかるのはどんな場合?

本来、契約をしたならば、売り主は物件の引き渡しを、買い主は代金の支払いを行なわなければなりません。義務を果たさない場合には、違約金の支払いという責任を負う可能性があります。

 

ですが、前述したように、不動産の取引においては解約手付、もしくは手付倍返しをすることで、それ以上のペナルティーは負わないのが原則となっています。

とはいえ、それはあくまでも原則で、場合によっては違約金が発生することもあります。具体的には、売り主側が「履行の着手」を行なっている場合です。

 

履行の着手とは、「その契約を実行するために具体的・客観的な行動を起こしたこと」と考えるといいでしょう。たとえば、売り主が売買に先立って登記をしたり物件を実際に引き渡したりすることです。

ただ、厳密な判断は個別具体的なものになります。違約金の発生を防ぐために、解約をする場合は1日も早く意思表示をしましょう。

 

 

ここまで見てきたように、マンションの売買契約をキャンセルすることはできますが、キャンセルのために大きな金額を失う可能性があります。

また、契約を結ぶ前であれば、申込証拠金は返還されますが、返還されるからといって安易に申込みを行なうことは、関係者に迷惑をかけることにもなるので避けるべきでしょう。

 

くれぐれも、購入申し込みや売買契約の締結は慎重に検討した上で行なうようにしてください。

 

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