連載・トピックス / 不動産投資

大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(20)

リフォームをすすめるA社、売却をすすめるB社、信用できるのはどっち?

2016/08/08 大友健右

郊外に賃貸アパートを所有するNさんのところに業者が営業にやってきました。リフォームをすすめるA社、売却をすすめるB社のどちらを信用していいのか悩んでいるといいます。不動産管理会社C社に相談しても、「決めるのはあなたです」と言われただけ。いったいNさんはどうすればいいのでしょうか?

3社の担当者の言葉に混乱するNさんの悩み

 Nさんは、郊外に賃貸アパートを所有しています。Nさんの物件は築10年になり、Aという業者からリフォームをすすめられていました。「建物というのは10年くらいでガタが出てきます。いまのうちにリフォームしておけば、後々の持ちが違いますよ」と。

 ところがその数日後、Bという業者がやってきて、物件を売りに出すことをすすめてきたというのです。「いまは収益物件市場が活性化していて、価格が上昇傾向です。売るならいまがチャンスです」という営業トークを聞いて、Nさんは悩んでしまいました。

 A社とB社、どちらの言い分が正しいのだろうか? と。

 そこで、日ごろから管理を依頼している不動産会社のC社にセカンドオピニオンを聞いたそうですが、C社の担当者から「A社が言うことも、B社が言うことも、どちらも正しいと思います。決めるのはNさんですよ」と言われたNさんは、ますます悩んでしまいました。C社の担当者の言葉は、セカンドオピニオンどころか、何も答えていないのと同じだからです。

 こうしてNさんは、私のもとにやってきたというわけです。A社とB社とC社、どの言い分が正しいのかを聞くために。

業界内の利害関係を考えれば、何が正しいかわかる

 Nさんが混乱するのも無理もありません。A社とB社とC社、いずれも決して嘘を言っているわけではないからです。

 リフォームは、雨漏りなどの問題が起こってから修理するより、前もって維持管理の対策を講じておいたほうが安上がりだし、建物の持ちもよくなります。

 また、最近の収益物件市場が活性化しているのも事実です。日銀のマイナス金利政策の影響を受けてローンを組みやすくなっていますので、売り手市場とはいえないまでも、購買意欲は高まっています。

 C社の担当者の言う、「決めるのはNさんですよ」という意見も間違ってはいません。ただし、説明が足りないためにNさんを混乱させてしまったようです。

 そこで私は、それぞれの業者の思惑をふまえて、こう説明しました。

 A社はリフォーム工事を専門にしている会社なので、リフォームをすすめてくるのは当たり前です。保険屋さんに「保険に加入するのは得ですか?」と質問したとして、保険屋さんはどう答えるでしょう?

「でっちあげられたリスクにお金を払うなんて、バカバカしいですよ」なんて答える保険屋さんはいません。保険によってどんなリスクを避けられるかを説明して、自社の保険商品を売ろうとするでしょう。A社の立場はこれと同じで、リフォームの利点を述べるのはごく普通の商業行為です。

 B社は、売買物件を扱っている不動産会社でしょう。ですからNさんに「物件を売りましょう」とすすめ、以前お話しした不動産売買で最もオイシイとされる売り主サイドのポジションに入るわけです。さらに買い手となる顧客のメドもついていれば、「両手取引」を成立させることができます。

結局のところ、「決めるのはNさん」

 結局のところ、C社の担当者の言う通り、「決めるのはNさん」なのです。

 もし、Nさんが自分の賃貸アパートをできるだけ長く運用して、家賃収入を得たいと考えているならA社、ないしは適切な業者にリフォームを依頼したほうがいいでしょう。建物は古くなればなるほど価値が下がっていきますから、リフォームすることは家賃の下落の勢いを止める最良の手段になります。

 もし、Nさんが売却益を出せるならば売ってもいいと考えているならB社、ないしは適切な業者に売却額を試算させて物件を手放すことを検討してもいいでしょう。

 以上の説明を聞くと、Nさんは心から安心した様子で帰っていきました。

業者の思惑に振りまわされないためには

 リフォーム会社も不動産会社も営利企業ですから、自社の利益を優先させることは当然のことです。

 ですが、消費者にとってはその立場があまりにもわかりにくいところに業界の問題があります。Nさんのケースでは、それほど悪質なものは感じませんでしたが、なかには強引な営業をかけたり、嘘八百の理屈を並べて詐欺まがいの文句で誘ったりしてくるケースもあるでしょう。

 そうした業者の思惑に振りまわされないためには、不動産業界の構造を知っておくことが重要です。

 もうひとつ言えるのは、セカンドオピニオンを求める相手に気をつけること。同業の不動産会社に意見を求めても、彼らは自分の利益を優先するのが当たり前。間違いなく自分のためを思ってアドバイスをしてくれる人か、業界の利害関係の外にいる専門家に意見を求めるのが適切でしょう。

今回の結論

・それぞれの業種によって業者の思惑がある。
・セカンドオピニオンは、相手を選んで求めるべし。

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