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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

不動産取引をめぐる見えないお金の流れ(3)

不動産の販売図面には、お客さんには見えない「秘密の暗号」がある

2015/12/25 大友健右

不動産の販売図面には、お客さんは見ることのできない秘密の暗号が隠されていることをご存知でしたか? その暗号の意味がわかれば、お客さんには見えないところでやり取りされる「お金の流れ」が理解できます。

不動産業者の手の内を知る

1996年に厚労省が実施した人口移動調査によると、日本人の生涯の平均移動回数は3.12回(男子3.21回、女子3.03回)だそうです。なかには10回や20回も引っ越したことがある、なんて飽きっぽい人もいるでしょうが、平均値を見れば「住まいを変える」ということはそう何度も起こることではないことがわかります。

それだけに、年間何十軒もの物件の取引を行なっている営業マンは、お客と比べようがないほどの経験値を持っているといえそうです。営業マンのなかには、「お客さんがカモに見える」なんて人もいるに違いありません。

私たちがそんな「悪徳」業者に騙されないようにするには、彼らの手の内を知ることが最初の一歩です。そこでもう少し突っ込んで、不動産業界で行なわれていることをみなさんに明らかにしていくことにしましょう。

物件の販売図面には何か書かれているのか

(図1)販売図面には何が書かれているのか

家を借りたい、買いたいというとき、多くの人が不動産会社を訪ね、その業者が取り寄せた物件の販売図面を見せられた経験があるはずです。その販売図面には、何が書かれているか、思い出してみてください(図1)

現地の区画の概略や地図、セールスポイント、建物の間取り図などが示されていて、下のほうに物件種目、価格、所在地、面積、権利関係、地目(不動産登記法上の土地の用途)、本体設備などが記されていることがほとんどでしょう。

家賃や購入価格を気にする人、住まいの快適さを気にする人、居住地にこだわる人など、関心を持つポイントは人それぞれでしょうが、ここでは図面の下段の部分に注目してください。仲介業者(不動産会社)の名称や連絡先が書かれた細長いスペースです。

3%が上限の仲介手数料が6%になってしまうカラクリ

この部分は、買い主や借り主にとって、それほど役に立つ情報が書いてあるわけではないので、つい見逃してしまいがちですが、実はこのスペースには仲介業者にとって重要なことが書かれています。それをお客に知られないため、彼らはこの部分を「オビ」と呼ばれる細長い紙を重ねて隠しているのです。

ちなみにこの「オビ」、書籍に巻いてあるオビのように簡単にはがせるものではなく、上から紙をかぶせてコピーしてしまうので、めくろうと思ってもめくれるものではありません(そのため、不動産会社のコピー機の近くには、細長いオビがたいてい置いてあるものです)。
でも、ここでは特別にその「オビ」をめくってみることにしましょう。そこには、こんなことが記されています(図2)

(図2)右側の「手数料=6%」という文字に注目

「客付(きゃくづけ)会社」とは、家の持ち主から物件の管理や入居者の募集を直接委託されている「元付(もとづけ)会社」の物件を扱っている仲介業者のことで、左の枠線の中には「捨看板、住宅情報誌の掲載」を禁止する指示が書かれています(「捨看板」とは、電柱や街路樹、ガードレールなどに貼り付けられた、ほとんど違法の屋外広告のこと)。

ここで注目していただきたいのは、右側の「手数料=6%」という文字です。

手数料のパーセンテージの下に「業法に従って下さい」と書かれていますが、実はこれは大いに矛盾したことなのです。というのも、業法、すなわち宅建業法では物件価格が400万円を超える場合、物件価格の約3%を上回る仲介手数料を取ってはいけないと定められているからです。

つまり、「手数料=6%」ということは、「業法に従わないでください」と言っているのと同じこと。ところが。この矛盾をうまく解消する便利な言葉が不動産業界にはあります。それは、「AD」、すなわち「広告費」という言葉。業法にしたがった3%を仲介手数料として受け取り、残りの3%を広告費として計上するわけです。

もはや、ここまでくると単なる業界用語というより、暗号と呼んだほうがいいかもしれません。
こうした事実を知らないまま不動産会社に行くと、一般の消費者はそれこそ、不動産会社はいいようにやられてしまいます。ですが、彼らの手の内を知っていれば、自分で身を守ることもできるはず。
自分の身を守るため、ぜひとも不動産会社の手の内を学んでください。彼らが何を考え、どんなことをしているのか、この連載で私がすべてお伝えします。

今回の結論

●“悪徳”業者に騙されないようにするには、彼らの手の内を知ることが最初の一歩
●宅建業法では、物件価格が400万円を超える場合、物件価格の約3%(正確には3.24パーセント)を上回る仲介手数料を取ってはいけないと定められている
●だが、実際には「AD(広告費)」などの抜け道によって、業法で定められた上限額以上のお金が動いている

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