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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(5)

不動産会社の「不安につけこむセールストーク」にご用心

2016/03/21 大友健右

不動産業界では、業者と消費者の間の圧倒的な「情報格差」を利用して、お客さんの「不安」や「損したくない」という気持ちを思い通りに誘導する営業トークが当たり前のように行なわれています。そんな営業トークに誘導されてしまわないように気をつけておくポイントをお伝えします。

圧倒的な「情報格差」は何をもたらすのか

 不動産業界内では、「不動産公正取引協議会」という機関が全国各地に設けられていて、「公正な競争」や「統一的かつ効率的な運用」を目指して活動しています。また、「眺望は最高」とか、「日当たり良好」、「激安物件」、「地域の人気ナンバーワン」といったワードは広告で使えないことになっています。

 そうした活動や規制がまったくの無駄だというつもりはありませんが、残念ながら業界のカルチャーを変えるまでには至っていないのが現実です。今回は、そうした活動や規制では解決し得ない、不動産業界の圧倒的な「情報格差」がもたらす不幸についてお話したいと思います。

 人は、調子のいい売り文句に対しては警戒心を持つものです。うまい話には裏があるといいますが、「本当にそんなにいい話があるの?」という疑問が頭を持ち上げるのでしょう。

 しかし、不動産のことになると話が違ってきます。業者と消費者の情報格差があまりに大きく、一般の人は自分なりの判断基準を持つことさえできない状態であるため、たとえ不審に思っても結果として業者の思い通りに誘導されてしまうケースが多々あるのです。

人は「わからないこと」に不安を感じる

 たとえば家電であれば、家電量販店の店員が、「こんなにお得な商品はありません。買わなければ損しますよ!」と言ったとしても、スマホで価格を検索したり、商品の口コミを調べたりすれば、その店員の言葉が本当かどうかすぐにわかってしまいます。

 しかし、不動産ではそれができないのです。営業マンに「このクラスの物件がこの値段で出ることはありません!」「いま決めなければ、ほかの人に取られてしまいますよ」と言われても、その言葉をどこまで信じていいものか、判断する材料が圧倒的に不足しているのです。

 不動産会社のほうもそれを十分に理解していて、わざと限られた情報しか出さず、お客さんの「不安」や「損したくない」という気持ちを煽って、その心理を誘導しようとします。しかも、優秀な営業マンであればあるほど、その術に長けているのです。

 人は「わからないこと」に不安を感じる生き物です。そのため、一見、自分のためにいろいろよくしてくれる営業マン、しかも不動産のプロである営業マンの言葉を信じてしまいたい、信じて「安心したい」という心理が働くのでしょう。

 実は、住宅を衝動買いしてしまう人が意外と多いのも、そういった心理をうまく誘導されている結果かもしれません。

 たとえ営業マンに誘導されたとしても、それがお客さんの幸せ、メリットにつながる結果であればいいのですが、実際はどうなのでしょうか? 自社の利益を何がなんでも最優先するという不動産業界の悪しきカルチャーを考えてみれば、答えは自ずと見えてくるはずです。

唯一のリスクは「売れない、貸せない物件」

 こんな話をしてしまうと何を信じていいかわからなくなってしまいますし、この話そのものが読者のみなさんの恐怖心を煽る話になってしまうので、あわててつけ加えておきましょう。

 不動産購入における最大のリスクは、「売れない、貸せない物件」をつかまされることです。

 どんなに素晴らしい家を購入したとしても、失業や離婚、転勤といった事情でその家に住み続けられなくなるリスクはあります。しかし、そうしたリスクは、「家を売却する」あるいは「人に貸して維持する」という方法でほとんどが解決してしまいます。「売れる、貸せる」というカードは、リスク回避に最大の効果を発揮するのです(災害リスクの回避には、保険対策が適切なのはいうまでもありませんね)。

 その反対に「売れない、貸せない物件」は、ちょっとしたリスクに直面しただけで住宅購入者を悲惨な状況に追いやってしまいます。誰も買ってくれない、借りてくれないような物件は、競売にかけられるか、一戸建てであれば建物を取り壊して土地価格にして処分するしかありません。そして、ほとんどの場合は、家を失ったうえに多額のローンだけが残るという悲惨な結末が待っているのです。

 ただ、ここでよく考えてほしいのは、その物件が問題の「誰も買ってくれない、借りてくれない物件」かどうかを見分けるのは、プロである不動産会社の人間だけなのかということです。「不動産の専門知識がなくても、そんなことくらい少し勉強すればわかるはず」、そう思う人のほうが多いのではないでしょうか。

 確かに家を購入するということは、一世一代の買い物です。不安を感じない人はいないでしょう。でも、本当に不安を感じるべきは「売れない、貸せない」ということだけだと考えてみると、恐怖心に訴えるような営業トークには惑わされずにすむのではないでしょうか。

今回の結論

・住宅購入は大きな買い物。購入時に不安を感じない人はいない。
・そのため、不安を煽るような営業トークに説得力を感じてしまう人は多い。
・ただし、唯一のリスクは「売れない、貸せない物件」をつかまされること。
・唯一のリスクを知っておけば、不安につけ込まれることはないはず。

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