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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

不動産取引をめぐる見えないお金の流れ(5)

不動産市場に優良な中古物件が出まわらない本当の理由

2016/01/18 大友健右

なぜ中古住宅の流通は盛んにならないのでしょうか。その裏には、「片手」取引になることを嫌う不動産業者の心理があります。しかし、根本的な要因は、「不動産の流通・取引構造」そのものが欠陥を抱えていることなのです。

中古住宅市場の活性化策は「絵に描いたモチ」!?

 2009年、「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」が施行されました。長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で住むことのできる家のことで、100年、200年の家に住み続けることもめずらしくない欧米諸国の住宅環境に追いつこうと、建物の維持保全を補助する制度が始まったのです。

 確かに30年を経ずしてスクラップ・アンド・ビルドを繰り返す日本の住宅事情は不自然きわまりないもので、すばらしい制度だと話題になっていました。

 私も、理念としてはこの法律、および制度はすばらしいものだと思います。しかし、長年日本の不動産業界で働き、オモテもウラも知り尽くした私にはこれが「絵に描いたモチ」に過ぎないことがわかっていました。

 その証拠は、現実が物語っています。長期優良住宅を新築する際、申請、建築、修繕などのコストがほかの住宅より高くなりますが、これを改善しようとする動きはどこにも見られません。また、長期優良住宅が増えることで中古住宅の市場が活性化することが期待されていましたが、そんなことはまったく起こっていないのです。

中古住宅売買の流れは?

レインズを通じて買い主が見つかり、めでたしめでたしとなるはずが……

 なぜ、そんなことになってしまうのか? 
 それを説明するには、不動産業界のブラックボックスを再びのぞいてみる必要があります。

 たとえばここに、4000万円の価値のある中古戸建て物件を売ろうとしている個人売り主がいたとしましょう。個人売り主は不動産のシロウトですから、自分で買い主を探すことは困難ですし、もし親戚や隣人などに買いたいという人が見つかったとしても、不動産業者(宅建業者)の仲介を受けない売買取引には銀行の融資がおりないことがほとんどなので、家の売り買いを個人間で成立させるということはむずかしい。そこで、個人売り主が家を売るには、不動産会社に仲介を依頼することになります。

 その会社を仮にA社としましょう。A社の担当者の仕事は、個人売り主の家を調査し、販売図面をつくるところから始まります。家の値段は、建っている地域の人気度や、敷地面積、建物面積、築年数などによって決まります。それらの情報を販売図面に記したら、あとは不動産流通機構に情報を登録して、買い主が現れるのを待つだけ。

 不動産流通機構とは国土交通大臣が指定した公益法人で、REINS(レインズ)というコンピュータ・ネットワーク・システムを介して会員不動産会社に物件情報を共有するサービスを提供しています。したがって、A社の担当者は自分で探さなくても、REINSを通じて情報を入手した別の不動産会社に買い主を見つけてもらうことができるのです。

 そして、不動産会社Bが4000万円の物件を求めている買い主を探してきました。普通ならば、これで取引成立です。めでたしめでたし。

「片手」を嫌う不動産業者

 しかし、不動産業者にとってはあまりめでたい状況とはいえません。というのも、この形で取引が成立したとして、A社およびB社に入ってくるお金は、個人売り主と買い主、それぞれ片方の依頼主からもらう仲介手数料しかないからです。不動産業者が「片手」取引と呼んで、忌み嫌っているパターンです。

 こういう場合、B社の担当者が「もっと高い金額で買いたいというお客さんがみつかりました。担ボー出ませんか?」などといって、A社からも成功報酬を取ろうとするなんてことは、大いにあり得ることです。こうなると、A社の儲けはさらに薄くなってしまいます。

 日本の不動産市場に優良な中古物件が流通しないのは、

(1) 「片手」で儲からない
(2) 物件に瑕疵があった場合、トラブルの対応に追われたくない
(3) さらに、「新築好きな消費者の心理」を利用して、「手離れのよい」建売業者の新築物件を案内して、より儲かる「両手」に持ち込みたい

 という不動産業者の心理に起因します。
 結果、新築ばかりが売れるマーケットになってしまうのです。

 これは、不動産業者が悪だというより、「不動産の流通・取引構造」そのものが根本的な欠陥を抱えているからこそ、起きてしまう現象といえます。

今回の結論

●2009年に「長期優良物件」の普及を推進する法律が施行されたが、うまくいっていない。
●中古物件が効率よく流通しない原因は、リスクがあるうえに「片手」取引でしか儲けられないという不動産業者の心理が大きい。しかし、根本的な要因は、「不動産の流通・取引構造」そのものに欠陥があるからだ。

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