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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

業界の悪しきカルチャーを暴く(3)

不動産業界では「情報の透明化」を謳う者こそ疑え

2016/03/07 大友健右

不動産業界がIT化することで、「情報のオープン化・透明化」、「顧客本位のサービス」は進むのでしょうか。残念ながらいまだ改革は進んでいません。しかしながら不動産テックという言葉が生まれてきたのも時代の要請です。業界は徐々に変わっていくに違いありません。

私が不動産業界を飛び出した本当の理由

 テクノロジーによって業界内に革新的な変化をもたらそうとする動きが、いたるところで起こっています。

 私が不動産会社を退社し、業界の改革に着手したのも、そのことに気づいたからです。きっかけのひとつは、アメリカのニュース雑誌『タイム』でした。この雑誌は毎年、最も活躍し話題になった人物を「パーソン・オブ・ザ・イヤー」として選定していますが、2006年に選ばれたのは、「YOU(あなた)」でした。

 この年、雑誌を手に取った人の顔がうつるように表紙に鏡を貼りつけた発表号が話題になったことを今でもよく覚えています。当時はブログによる個人の情報発信が全盛期で、現在のSNSやYouTubeなどの個人発信のメディアの発展を予見したという意味で画期的でした。

 ところが不動産業界は「YOU(あなた)」、すなわち消費者のことをいつまでたっても意識しようとはしませんでした。その結果、業を煮やして業界を飛び出し、戸建て住宅の外壁や屋根の塗装を専門に手掛けるプロタイムズ総合研究所立ち上げたわけですが、それには自分なりのある戦略がありました。

 それは、不動産会社と同じ業態の事業を立ち上げ、業界を内部から改革しようとしても、とうてい無理だと思えたから。この業界の悪しきカルチャーはそれくらい根深く、変えようとしても簡単に踏みつぶされてしまうのです。

 プロタイムズ総合研究所はリフォーム会社ですから、不動産業界から縁が切れるわけではありませんが、ある程度の距離を置いて接することができるのです。この会社の月間売上高が2年間で約2000万円から2億円を突破したとき、私はようやく何のしがらみもなく不動産業界の改革に着手できると実感したのでした。

 アルティメット総研を設立し、消費者と不動産業者をつなぐマッチングサイト『ウチコミ!』をスタートさせたのは2012年7月のことでした。

不動産業界のIT化は、プロもシロウトも実現できない!?

 ところで最近、「リアルエステート・テック」とか、「不動産テック」という言葉をメディアの報道やネット界隈で見かけるようになりました。

 一過性の流行語かと思いきや、よくよくその内容を吟味してみると、決してそのようなものではないようです。

 たとえば、金融業界で盛り上がっている「フィンテック(金融テック)」では、「金融業×IT技術」という仕組みを利用して全自動クラウド会計ソフトやデジタル決済システムなど、これまでにないイノベーションが起こっているようです。

 私は金融業界のプロではありませんので、これらが成功するかどうかを判断する力はありませんが、面白いことが起こっているのは確かなようです。

 では、「不動産テック」の動きについては、どうか? ひとつだけ言えるのは、不動産業界の悪しきカルチャーは根深く、簡単に変えられないという状況はいまも変わらないということです。「不動産業×IT技術」という仕組みをもってしても、歯が立たないケースも山ほどあるでしょう。

 それにはこんなケースが考えられます。ひとつは、不動産業界自体がIT技術を利用して新しいサービスを生み出そうとするケース。もうひとつは、異業種の組織や集団が不動産業に越境して乗り出してくるケースです。

 前者のケースでは、すでに失敗しつつある例が見受けられます。具体名をあげることはあえて避けますが、「情報のオープン化・透明化」、「顧客本位のサービス」をうたいながら、実は情報を囲い込んで自社の利益を最優先するための新たな手段になってしまっているサイトがあるようです。そうしたサイトは、これまで何十年も繰り返してきた旧来の手法をITの名の下に繰り返しているに過ぎません。

 もう一方の異業種組の参入ケースについても、いまのところ成功例を見つけることはできないでいます。不動産物件の売買や賃貸の取引は、宅地建物取引業者(宅建業者)にしかできないと法律で定められています。したがって、新規参入をするには自らが新米ホヤホヤの宅建業者になるか、あるいは既存の宅建業者に業務を委託するしかありません。

 するとどうなるかというと、「朱に交われば赤くなる」ということわざ通り、「IT技術で顧客の利益重視というイノベーションを起こす」という理念は骨抜きにされ、逆に海千山千の不動産業者に利用されてしまうことが多いのです。

しかし、「不動産テック」には希望がある

 2012年に私が立ち上げた『ウチコミ!』も、「情報のオープン化・透明化」、「顧客本位のサービス」といった理念を同じくしていましたが、すぐに成果をあげられたわけではありません。

 リフォーム会社のプロタイムズ総合研究所という屋台骨あったからこそ、利益を度外視してスタートさせることができましたが、軌道に乗ってきたのはここ最近のことです。『ウチコミ!』がどのようにして理念を曲げることなく運営できているのか、くどくどした宣伝になりかねないのでここでは語りません。知りたい人はサイトを訪ねてみてください。

 よく、「不動産業界の揚げ足をとるようなことばかりしていて、圧力を受けたりしませんか?」と聞かれることがありますが、「そういうことはありません。普通に平和に面白く暮らしていますよ」と答えています。

 不動産業界とて、非合法のあやしい組織ではありませんから、裏から手をまわして私を葬るようなことはしてきません(電車のホームで背後に人の気配を感じたり…)。表立って批判するにしても、「業界の既得権益にしがみつく権化」という役割を買って出ることになるのではばかられるのでしょう。

 さて、改めて「不動産テック」という言葉を考えるとき、私自身は後ろ向きな考えではなく、前向きな考えを持っています。少なくともこの言葉は、「情報のオープン化・透明化」、「顧客本位のサービス」といった理念を多くの消費者が求めているからこそ生まれ、顕在化したはずです。

 このことは、不動産業界にボディ・ブローのような効果をもたらすに違いないのです。私はそのことに希望を抱いています。

今回の結論

●IT技術によって革新的な変化をもたらそうとする「不動産テック」が盛り上がっている。
●ただし、不動産業界の内部および外部で起こっている「不動産テック」にはいまのところ失敗例になりつつある例が多い。
●とはいえ、「情報のオープン化・透明化」、「顧客本位のサービス」といった時代の流れを変えることはできない。

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