連載・トピックス / 不動産投資

注目のAirbnb記者発表会は肩すかし

予約キャンセル問題、観光庁に一言もなし

2018/06/15 住まいの大学

取材・文 /KANAUSHA NEWS

プレゼンテーションでのAirbnb共同創業者兼CSOのネイサン・ブレチャージク氏(写真/KANAUSHA NEWS)

6月15日の「住宅宿泊事業法(民泊新法)」の施行前日の14日、民泊仲介の最大手「Airbnb(エアビーアンドビー)」が日本企業36社と連携したプラットフォーム「Airbnb Airbnb Partners」の立ち上げ記者発表を行った。

Airbnbのサイトでは、先月末ごろまで15日の民泊新法施行後に義務づけられる家主による民泊用施設として届出をしていない施設への宿泊予約の受付を行っていた。そのため観光庁は6月1日に新法による届出の予定などがない施設の予約取り消しなどを通知で求めた。これを受けてAirbnbはサイトに掲載されていた6万件あまりあった国内施設のうち届出のない施設を削除。掲載施設はおよそ1万3000件に激減している。

さらに民泊新法施行の15日以降についても未届けの民泊施設への予約も受けていたため、こうした届出をしていない施設への宿泊予約およそ3万件を、7日から順次、Airbnbからのキャンセルというかたちで取り消しの措置がとられている。そのため宿泊を予定していた国内外の顧客、予約を受けていた民泊施設の家主の間に大きな混乱が起こっていた。また、このトラブルをきっかけにAirbnbの幹部が新聞のインタビューで、こうした観光庁の対応に疑問を投げかけるなど暗に観光庁の措置に不満を示していた。ただ、この予約キャンセルについては、Airbnbが顧客への返金、航空券の変更手数料やホテルなどへの宿泊で生じる差額などを総額11億円の資金を準備し補填することを表明したことから収束に向かってはいる。

とはいえ、この日の記者発表にはAirbnbの共同創業者兼CSO(最高戦略責任者)のネイサン・ブレチャージク氏が出席するということもあって、その関心は高く会場になった東京・渋谷のヒカリエには100社以上の報道各社が集まった。しかし、当初予定されていた質疑応答が、記者発表の開始直前になって「時間がない」という理由で中止。肩すかしを食った状態になった。

実際、記者発表の冒頭でプレゼンテーションに立ったブレチャージク氏は同社の創業からの歴史、日本でのサービス開始後の16年には日本でのAirbnbコミュニティの経済活動で創出した利益は4061億円で、その経済効果は9200億円(84億ドル)に及ぶと、自社の日本経済への貢献、民泊施設を提供している家主の年間収入はおよそ120万円になると、もっぱら、同社の事業展開による経済効果を強調。そして、今回、発表された日本企業36社とのパートナーシップについては「Airbnbを利用する日本の全ての人々が、より快適に利用ができるようコミットしていきます。この新しいパートナーシップにより、ホストやゲストが必要なサービスやサポートを提供することで、何週間後、何ヵ月後に向け、Airbnb のコミュニティもさらに大きく、力強いものになっていくと確信している」と語るにとどめ、民泊新法施行直前で起こったキャンセル問題についての言及はなく、民泊新法についても通り一遍のコメントにとどまった。

民泊新法施行で民泊業界はガラガラポン

Airbnbは日本でのサービス開始以来、日本の民泊ビジネスで圧倒的なシェアを持ちこれまで「Airbnbの登録物件数が、日本の民泊物件数」とまでいわれてきた存在だ。巷間、民泊、民泊ともてはやされてきたが、業界の構図はAirbnbとその他大勢のいわば「一強他弱」というのが日本の民泊業界なのだ。

しかし、民泊新法施行によって先行者だったAirbnbのインセンティブが一気に弱まり、国内の民泊は仕切り直しになると見られている。

そんななかで民泊関連企業各社は、業務提携やパートナーシップを結ぶなど、民泊新法施行後をにらんだ戦略を明らかにしている。そこで新法施行の前日というタイミングでAirbnbが打ち出したのが、今回の「Airbnb Airbnb Partners」というプラットフォームだったわけ。

その中身というは、あいおいニッセイ同和損害保険、アソビシステム、大塚家具、オープンハウス、オレンジ・アンド・パートナー、KADOKAWA、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、セコム、全日本空輸、ソフトバンク、損害保険ジャパン日本興亜、タマキホーム、ニトリ、パソナ、ビックカメラ、ファミリーマート、みずほ銀行など36社をパートナー企業として、①安全安心なホームシェアの実現、②より簡便な開業支援、③ホスト育成プログラムの提供、④新たな体験価値の創出、⑤ローカルコミュニティの活性化という5つを柱に新たな民泊ビジネスを展開していこうとういうもの。

これだけではなんじゃらホイ? という感じだが、その具体例として紹介されたのが、18年中にスタートするというカルチュア・コンビニエンス・クラブのTポイントが貯まるサービス。小山薫堂氏のオレンジ・アンド・パートナーズと共同で行う住宅のプロデュース、アソビシステムとともに原宿にポップカルチャーを体験できる宿泊施設の開発などで、正直、思ったほどのインパクトは感じられないという印象だ。

また、Airbnbは今後全国60都市で民泊事業者に対する勉強会。今後6か月以内に民泊新法に基づいた届出を行うための勉強会も開催する予定で、こうした取り組みに33億円を投資していくという。

とはいえ、こうして明らかにされたAirbnbの民泊新法後対応を見る限り、同業他社に比べ目新しさはなく、民泊物件の家主へのサポートはいまさら感が否めない。しかも、自治体の追加規制や分譲マンションにおける民泊経営についても管理組合が規約を改正して民泊を禁じるところも増え民泊を取り巻く環境は、Airbnbが日本に上陸した14年とは様変わりしている。

これまでAirbnbの最大の強みは、手軽に誰でも民泊を始められるというハードルの低さにあった。しかし、民泊新法施行後は、届出は家主自らが行わなくてはならず、しかもその作業は煩雑だ。今後、こうした細かいフォローを行っていくというが、Airbnbにきめ細かい対応がでるのか――その真価が改めて問われることになる。

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