連載・トピックス / 不動産投資

不便な「支線」の街が穴場の街に!

交通の変化が変える賃貸市場

2019/09/22 住まいの大学

文/住まいの大学編集部

画像/123RF

東京の都心真っ只中を走る地下鉄路線のひとつ、東京メトロ千代田線。その東の端っこで、今年(2019)、ある駅の変化が一躍注目を浴びることとなりました。


その駅の名前は「北綾瀬」です。


千代田線の終点ですが、降りたこともないし、名前も聞いたことがないという人が多いかもしれません。


ちなみに、この北綾瀬のお隣、ひと駅都心側にある駅が「綾瀬」です。こちらはJR常磐線との接続駅でもありますので、名前はよく知られています。


そこで、北綾瀬ですが、今年の春まで、この駅は綾瀬駅から伸びる「支線」の駅として扱われていたのです。


具体的には、北綾瀬に向かうには、綾瀬駅で電車を乗り換えなければなりません。


理由は駅の構造にありました。北綾瀬駅のプラットフォームは、開業した当時の事情により、3両編成の短い電車までしか停まれない長さとなっていたのです。


そのため、都心方面から綾瀬駅までやってくる電車は、どれも長い編成のため、北綾瀬へは進むことができません。


逆もまた然り。北綾瀬から都心方面へ向かうには、そのたびごとに綾瀬駅での乗り換えが必要でした。


その状況が、2019年の3月から大きく変わったのです。短かったプラットフォームが延長され、10両対応となったのです。これにより、3月16日のダイヤ改正以降は、多くの電車が大手町や日比谷、表参道といった駅と北綾瀬を直通で結ぶようになりました。


そこで、北綾瀬駅は、こんなランキングでも注目を浴びるようになりました。


「『大手町』まで電車で30分以内、家賃相場が安い駅ランキング!2019年版」です。株式会社リクルート住まいカンパニーが、ウェブサイト上に公表しているものです。


・大手町駅へ電車で30分以内で行ける
・ワンルーム、1K、1DKを対象にした
・家賃相場が安い駅のランキング


という内容ですが、北綾瀬駅は堂々2位に輝いています。


しかも、このランキング、実際には大手町駅に乗り入れていないJR京葉線の「葛西臨海公園」を1位としています。京葉線の東京駅が地下道で大手町駅とつながっていることでの判断のようですが、東京都心で働く多くの方がご存知のとおり、両駅の間は、最短のルートを選んでも徒歩10分ほどと、かなり離れています。


すると、本当の1位は北綾瀬では?


実質的な1位は、「電車1本でちゃんと大手町駅そのものに降り立つことができる」北綾瀬であるようにも思えるのですが、どうでしょうか?


とはいえ、補足しておくと、現在、北綾瀬駅から直通で都心へ向かえる電車は、通勤時間帯を中心にそれほど十分な数があるとはいえません。


実際に北綾瀬に住むということになれば、以前と同様、綾瀬乗り換えを利用する機会は、まだそれなりに多いはずです。引越し等をご検討の場合は、時刻表をぜひしっかりとご確認ください。


さて、そうはいっても、こうした交通の変化というものは、賃貸を含む不動産市場をつねに大きく動かします。


典型的といっていい例のひとつが、埼玉県和光市にある「和光市駅」でしょう。


「SUUMO住みたい街ランキング」というのがあります。さきほどの「大手町~」のランキング同様、リクルート住まいカンパニーが公表しているものです。テレビのニュースに採り上げられるなど、毎年よく話題になります。


和光市駅は、最新版・2019年版(関東版・以下同じ)では、33位に名前が挙がっています。


「33位…大した人気でもないのでは」と、つい思ってしまいがちですが、そうではありません。2017年版では和光市駅は100位以内にさえ顔を出せていませんでした。


しかし、それが2018年版では42位に浮上。今回の33位も、桜木町や三軒茶屋、たまプラーザ、下北沢といった多くの人気駅を下位に従えてのものです。


これほどの急な出世は、和光市駅だけです。


また、このランキングには別の部門もあります。「穴場だと思う街(駅)ランキング」です。ちなみに「穴場」の定義は、「交通利便性や生活利便性が高いのに家賃や物件価格が割安なイメージがある」と、いうもの。


和光市駅は、北千住、赤羽に続く堂々の3位です。


こうした和光市駅への近年の急な注目、何が原因で始まったのでしょうか?


答えは、ほぼ言い切ってしまってよいでしょう。「東京メトロ副都心線」です。


池袋、新宿、渋谷と、東京都心西部に並ぶ3つのビッグターミナルを結ぶこの路線は、2008年に和光市駅と渋谷駅を結ぶかたちで開業しています。


以来、和光市駅は、東武東上線・東京メトロ有楽町線・同副都心線を束ねる結節点として注目されることになったのですが、続いての転機となったのが、2013年の東急東横線・横浜高速鉄道みなとみらい線との直通運転の開始です。


和光市駅の存在は、これによってさらに広く知られることになりました。


翌々年に発表された「SUUMO住みたい街ランキング2015年版」では、和光市駅は、総合順位は117位ながら「今後、地価が値上がりしそうと思う街(駅)ランキング」の14位に。


続く2016年版の「これから人気が出そうな郊外の街(駅)ランキング」では3位にランクインしています。


こうした、知る人ぞ知るといったような前段階を経て、和光市駅は、いまでは上記のとおり「ブレイク」している状態です。


そのため、賃貸物件の家賃相場も、和光市駅周辺では、若干面白い状況を示しています。


和光市駅は埼玉県内にありますが、単身用を中心に、家賃水準はお隣りの駅である東京都板橋区の成増駅とさほど変わりません。


ところが、反対側の隣駅「朝霞」からは、ガクリと相場が下がります。やや語弊がありますが、ここからいわゆる埼玉相場が始まるのです。


すなわち、たとえば同じ建築費で同規模の物件を建てたとして、和光市駅を最寄り駅とするか、朝霞駅やその先の埼玉県内の各駅を最寄り駅とするかでは、賃貸経営の様相は年を経るごとに大きく変わってくるでしょう。


交通の変化が街におよぼす影響が顕著に示されている、具体的な例のひとつです。


(文/朝倉継道 画像/123RF)

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