連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(7)

人が集まる「空室なし」の「魅力的な物件」にはストーリーがある

2016/05/07 林 浩一

私のアパート「Wilshire five seasons」の入居条件のひとつに「入居者さん同士があいさつできること」という項目があります。入居者さん同士がふれあい、長く住んでくれる環境をつくるため、建物の構造にもこだわりぬきました。大家になってよかったと思えるストーリーを思い描き、それを実現することが入居者さんの幸せ、ひいては大家としての幸せにつながるはずです。

何が魅力か? を考えるところからストーリーづくりは始まる

 私のアパート「Wilshire five seasons」の入居条件のひとつに「入居者さん同士があいさつできること」という項目があります。当たり前のことですが、わざわざ明記しているのは、私がこのアパートを建てたときに思い描いたストーリーのなかで、これは極めて重要なことだからです。

 実はこの物件には、立地の面で大きなハンデがありました。最寄りの駅に行くまでバスで15分というのは、どう贔屓目に見ても魅力的ではありません。

 では逆に、何が魅力なのか? それを考えるところからストーリーづくりを始めました。まず、すぐそばに公園がある。豊かな自然がある。歩いて1分と5分のところにそれぞれ公立の小中学校がある。スーパーも比較的近くにあって、買い物にも困らない。

 こうした要素を合わせて考えていくと、「現在、子育てをしている、または、これからしようと考えている20〜40代の夫婦」が最適なターゲットであることが見えてきました。DINKSよりDEWKSがターゲットです。

 それと同時に、入居者同士が顔を合わせたときにあいさつを交わし、ときには世間話に花を咲かせるようなコミュニティができれば、お子さんが小学校を卒業するまで、あるいは中学校を卒業するまでの長い期間、住んでくれるようになるのではないかと。すなわち、年月の経過とともにどんどん魅力を増していく、住まいの「経年魅化」を実現できると考えたのです。

絶対に外せなかったこだわり「共同エントランス」

 こうしたストーリーを実現するため、何よりもこだわり抜いたのは建物の構造です。

 その大きな特徴は、共同エントランスを持つということ。6世帯の入居者が、同じ玄関をくぐって建物のなかに入り、同じ廊下を歩いて各部屋のドアに向かうという構造です。アイデアのもとになったのは、アメリカで暮らしていたときに住んでいた学生寮なんですが、この構造が何を意味するかというと、入居者同士が顔を合わす機会が多くなるということなんです。

 ただ、これを実現するのは、そう簡単なことではありませんでした。結論からいうと、5社のハウスメーカーに私の考えを説明しましたが、そのことごとくに「無理です」と言われてしまったのです。

 というのも、どのメーカーにもあらかじめ決められた仕様というものがあって、共同エントランスを設けた形にするのはむずかしいとのことでした。1フロアに3世帯の2階建てというと、鉄筋の外階段をつけるタイプか、全住戸の玄関を1階に設け、共用の階段や廊下を設けない重層タイプがスタンダードです。

 いずれも共用のスペースを最小限に留めることで各部屋の面積を多くとれるという利点がありますが、各部屋の玄関は別々になり、共用スペースも減ることから入居者同士のふれ合う機会は少なくなります。

 それでもあきらめきれず、6件目に訪ねたハウスメーカーが私のイメージに近い図面を提案してくれました。そのメーカーは、アメリカで生まれたツーバイフォー(木造枠組壁構法)の技術を応用して、共同エントランスを持つ建物をこちらの予算の範囲内で建てることを請け負ってくれたのです。

 こうして私は、契約書の入居条件のひとつに「入居者さん同士であいさつできること」という項目を堂々と入れられるようになりました。

「大家さんになってよかった」と思う瞬間

 2011年にオープンした「Wilshire five seasons」では、この5年で7人の赤ちゃんが生まれました。今年で入居3年目になるKさんファミリーは、ついこの間、ふたり目のお子さんを授かったばかり。

 当初、駅から徒歩圏内の物件を20件以上まわってもイメージ通りの物件が見つからなかったそうですが、範囲を広げてバス便立地の私の物件にたどり着き、「イメージにぴったり」と判断して入居してくれたことがついこの間のことのように思い出されます。

 Kさんファミリーは旅行が大好きで、旅行から帰ってくると必ず私の携帯に「大家さ~ん。お土産買ってきたのでいまからいっていいですか?」と嬉しい電話をかけてくれます。ふたり目のお子さんが生まれたときも、産婦人科を退院した奥さんが「大家さん、アパートに帰ってきました。ただいま」とあいさつしてくれました。そのとき、私は自分の孫が生まれたかのように目頭が熱くなったものです。

 こうした入居者さんたちの「おはようございます」、「こんにちは」、「こんばんは」というあいさつがアパート中を飛び交っています。入居者さんたちの笑顔を見るたび、私は大家になってよかったと心から感じるのです。

 もちろん、これは私自身が思い描いたストーリーですが、物件一つひとつ、大家さん一人ひとりに異なるストーリーがあるはずです。みなさんも私のように「大家さんになってよかった」と思えるようなストーリーを描いてみませんか?

 入居者さんの幸せを自分の幸せのことように心から思えるようになった時、新たな大家業のすばらしさを、あなたもきっと実感することでしょう。

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