連載・トピックス / 不動産投資

真夏の炎天下にエアコンが故障

入居者さん緊急避難!改正民法施行後はどうなる?

2019/10/08 住まいの大学

文/住まいの大学編集部

エアコンが壊れた部屋は灼熱のサウナ

画像/123RF

平年よりも8日遅く、昨年よりも30日遅かった今年(2019)の関東甲信地方の梅雨明け。それが発表された7月29日以降、東京の気温は連日ぐんぐんとうなぎのぼり。8月1日以降は、2週間近くにわたって33~35℃台の最高気温を記録する日が続きました。


そんな、まさに灼熱に見舞われた約2週間。都内の賃貸マンションに単身で暮らすある中年男性の身に、とんだ災難が降りかかりました。


なんと、最高気温が35℃に達した8月1日の午後、部屋のエアコンが突然故障、停止してしまったというのです。


さあ一大事。その後30分が経ち、小一時間も過ぎた頃には、部屋は早くも蒸し風呂状態です。男性はあわてて管理会社へ電話をかけ、窮状を訴えました。すると、数時間経った夕方、修理業者を名乗る人物が大きな箱をかかえて部屋にやってきたそうです。


箱の中身は扇風機でした。家電量販店で購入後、その足でやって来たとのこと。「管理会社から24時間駆けつけサービスの会社へ連絡が届き、そこから私(修理業者)のところへ電話が来ました」と、いった流れです。


そこで男性、「エアコンの修理はいつになるんですか」と聞くと、「1週間後くらい。現在、修理や交換の注文が殺到していて、とてもすぐには取りかかれない」とのこと。


その答えにショックを受けながらも、とりあえず以降を扇風機で過ごすこととなった男性ですが、結局のところ、我慢の日々は1週間では収まりませんでした。


そのあと、工事の開始は遅れに遅れ、壊れたエアコンが取り外され、代わりに新品が設置されたのは、なんと故障からちょうど2週間後。8月15日の午後となってしまったのだそうです。


そこで、この男性に尋ねてみました。「2週間、エアコンなしで耐えられましたか?」


男性曰く、「結論として、エアコン無しでいまの東京の夏を過ごすのはまったく無理です。どれだけ扇風機を回しても夜は眠れません。昼間はサウナ状態。本気で命の危険を感じた」そうです。


「最初のうちは、朝出勤し、仕事を終えての退社後、冷房の効いた店や施設を渡り歩き、夜遅くなってから部屋に帰っていました。ですが、それが続いたのも数日のみ。昼間の熱がたっぷり蓄えられた鉄筋コンクリートのマンションの中はまさに地獄です。熱中症~孤独死の文字が頭をよぎり、これはマズいと、数日目からは夜は親戚の家に泊まらせてもらいました。これでなんとかその後を過ごすことができました」


加えて、「僕の場合はたまたま都内に親戚がいたのでよかったのですが、そうでなければ、まともに出勤するためにはホテルに泊まらざるをえなかったでしょう。管理会社を通して、大家さんには宿泊費を請求することになっていたはずです」


「したくもない請求をしないで済み、不幸中の幸いだった」とのことでした。

改正民法では賃料減額が必要です

さて、以上のとおりご紹介した、ある男性入居者さんの身に起こった悲劇ですが、われわれ賃貸オーナーは、これにかかわってある大事なことを知っておかなければなりません。


それは、来年(2020年4月1日)に迫った改正民法の施行です。611条にこうあります。


「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」


この条文、改正前はこうなっていました。


「(前略)賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる」


つまりこういうことです。改正民法施行後は、賃借人による請求がなくとも、賃料は当然に減額されるのです。ちなみに、この新たな611条の説明の際、よく例として挙げられるのがエアコンの故障です。


すなわち、今回紹介した事故のような場合、改正民法施行後であれば、男性は、請求の必要もなく当然に賃料の減額を受ける権利を得ることになるわけです。


なお、男性曰く、「忙しいので今回は賃料減額請求などしない」とのこと。新品の扇風機だけをありがたく頂戴し、コトを収めるということです。


ですが、来年4月以降となれば…、われわれオーナー側はそれに甘えているわけにはいきません。

賃料減額の度合いは?

さて、そこで気になってくるのが、上記「賃料減額」の度合いです。


たとえば、エアコン故障や給湯器故障、トイレの故障等が発生し、入居者さんに不便を強いてしまった場合など、どのくらい家賃を値引きして差し上げなければならないのでしょうか?


これについて、いまのところはっきりとした答えはありません。


ただ、ひとつ基準になるかもしれないとされている数字があります。公益財団法人日本賃貸住宅管理協会(日管協)が取りまとめた「設備等の不具合による賃料減額のガイドライン」に示されている目安です。(こちらの国交省資料の32ページに抜粋が載っています:民間賃貸住宅に関する相談対応事例集)


もっとも、実のところこの目安、2009年に公表されたものです。そのため、10年を経たいまとなっては、入居者さん側にしてみれば若干不満足な内容になっているとの意見も少なからず聞かれます。


たとえば、エアコンが7日間作動しなかった場合の賃料減額は、計算すると家賃の多寡にかかわらず約667円です。月額です。


もしも真夏に事故が起きたとして、「ひと月分の家賃から667円引いて振り込んで下さい」で、納得してもらえるか…?


と、なると、日管協さん自身も講演等で述べてはいますが、改正民法施行後の611条にかかわる「当然の賃料減額」の基準については、判例等が出るまでは本当に「わからない」…。


われわれはとりあえず、そう思っておいたほうがよさそうです。


しかしながら、それでも「わからない」のままではリスクが大きいということで、上記目安などを参考にした細かな規定を賃貸借契約書に盛り込む例も、今後は現れてくるのかもしれません。


(文/朝倉継道 画像/123RF)

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