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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

不動産業界の悪しきカルチャーを斬る(2)

国交相の「レインズ」改革は業界のカルチャーを変えるか?

2016/02/29 大友健右

国土交通省が不動産取引の適正化を図るための改革に乗り出したというニュースが流れました。しかし、いくらシステムを変えたとしても、そのシステムを運用する側のカルチャーが変わらなければ、結局は同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。

そもそも「レインズ」とは?

 少し前のことですが、国土交通省が不動産取引の適正化を図り、業界にメスを入れた!? そんなニュースが私の目に飛び込んできました。

 このニュースによると、2016年1月から、売買物件の情報を不動産会社が「不動産流通機構(レインズ)」に登録する際、「公開中」、「書面による購入申込みあり」、「売り主都合で一時紹介停止中」といった3種類の取引状況を明記することを義務づけたほか、売り主にもその情報を公開するように、国土交通省が制度を改めたというのです。

 へ? 一体何のこと? と首をかしげている人も多いでしょう。一般の人にはわからなくて当然です。でも、大事なことなので順を追って説明していくことにしましょう。

 まず、「レインズ(REINS)」とは、国交相が指定した不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システムのことで、売りに出された不動産の物件情報を同機構の会員の不動産会社が共有するためのもの。実際にはほとんどの会社が会員なので、不動産会社で働いたことのある人なら誰もが知っています。

 ところがその存在は、一般的には知られていないというのが現状でしょう。それは、「守秘義務」を理由に、このネットワークを見ることができるのが不動産会社の社員に限られていたからです。一般の人は、不動産会社を通してしか不動産情報にアクセスできないことが、囲い込みやまわしといった行為が横行する大きな原因になってしまいました。

 これが今回の改訂で、不動産物件の売り主にはID とパスワードが与えられ、機構ホームページにアクセスして情報を見ることができるようになりました。これはいいニュースに違いありません。

 ただ、私はこのニュースを手放しで喜ぶことはできませんでした。理由は、この新制度にもいくつもの抜け道があることを知っているからです。

理想的なシステムも、運用する人のさじ加減

 そもそも「レインズ」は、登録された不動産情報をほかのすべての不動産会社に提供することで最適な買い主を探すことができるようにするのが目的でした。それぞれの不動産会社がバラバラに情報を持っていては、情報の伝達に限界がありますし、売り主にとっても買い主のとっても不都合だからです。

 売り主と不動産会社との媒介契約には、「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類の形態があり、「専任媒介」と「専属専任媒介」の場合、売り主は不動産会社1社のみにしか売却を依頼することができなくなりますが、そのかわり元付不動産会社には「レインズ」への登録が義務づけられています(「一般媒介」では登録は売り主の自由)。

 つまり、「レインズ」のおかげで売り主は、「不動産業界全体が連携して買い手を探してくれる」という安心感を得られたわけです。会員間での情報交換がリアルタイムでスピーディに行われるため、買い主にとっても大きなメリットがあります。

 実に理想的で、素晴らしいシステムです。ところが、このシステムは実際にはそううまく運用されませんでした。理由は簡単で、「顧客よりも、他社よりも、自社の利益を優先する」という業界の悪しきカルチャーが、正しい運用を阻んだからです。

 不動産会社の営業マン時代、私は「いい物件を紹介してほしい」という顧客のために「レインズ」を検索したことが何度もありました。当時、「レインズ」の登録情報には、「公開中」とか「売主都合で一時紹介停止中」といった取引情報は明記されていなかったので、めぼしい情報を見つけたらその情報を公開している元付不動産会社に電話をかけて確かめるしかありませんでした。

 驚くべきことに電話口の担当者の多くは横柄で、なかには物件が売り出されているのかどうかさえ満足に教えてくれない担当者もいました。もちろん、そのなかには情報を囲い込んで利益を独占しようとしていた担当者もいたでしょう。

 つまり、理想的で、素晴らしいシステムも、それを運用する人のさじ加減ひとつでいくらでも悪用できてしまうのです。

システムだけ変えてもカルチャーは変わらない

 私が今回のニュースを手放しで喜べなかったのは、「レインズ」がこれまでどのように運用されてきたのかを知っているからです。

 たとえ取引状況がオープンになったとしても、事態はそう変わりません。本来は「公開中」の物件でも、申込書は誰でも書けますから「書面による購入申込みあり」にすることは容易にできます。

 売り主にも情報が公開されているのだから、そうしたウソを売り主が自ら見抜くチャンスがあることも事実ですが、言い逃れの余地はいくらでもあるよう思います。たとえば、「レインズ」に登録された情報はすぐにシステムに反映されるわけではなく、数日間の時差がありますから、「申込書なんて来てないぞ」という売り主の追求に対して「あの申込はキャンセルになりました。間もなく『公開中』に修正されます」などと言えば、それ以上の追求はできないでしょう。

 もちろん、これはたとえ話に過ぎないのだということは、お断りしておいたほうがいいでしょう。しかし、いくらシステムを変えたとしても、それを運用する側のカルチャーが変わらなければ、結局は同じことの繰り返しになるのではないでしょうか。それは私の偽らざる実感でもあります。

 不動産会社に物件の売却を依頼する際、売り主はこれまでと同様、細心の注意が必要であることはいうまでもありません。

今回の結論

●コンピュータ・ネットワーク「不動産流通機構(レインズ)」は、不動産業界全体が連携して「買い手」と「売り手」を速やかにマッチングできるよう開発されたシステムである。
●ところが「レインズ」は、囲い込みの手段として悪用されてしまった。
●国交相は「レインズ」の情報を売り主にも公開し、物件の取引状況の明記を義務づけたが、これを悪用する可能性がなくなったわけではない。

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