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相続税を考える上での最大のポイント

土地の特例が使えると相続税が大きく変わる!

2019/06/20 原由香

文/税理士 原 由香

画像/123RF

平成29年12月に国税が発表した相続税申告財産の約4割は不動産です。
土地の金額がいくらになるかは、相続税を考える上での最大のポイントです。

土地は路線価で計算

土地は購入価格や売却価格(時価)では無く、「路線価」を使用します。
「路線価」とはその道路に面している土地について、1㎡当たりの金額を示すもので、毎年7月1日にその年の路線価が国税庁から発表されます。

例えば100㎡(約30坪)の土地の路線価が30万円なら、土地の金額は3000万円(30万円×100=3000万)となります。

路線価は国税庁のホームページで誰でも自由に調べる事ができます。ご自宅の住所で調べてみることをお勧めします。(スマートフォンでも調べられます。)
ただし、路線価は売買価格の8割くらいになっていますので、「思ったよりも安いな」とがっかりしないようにしてください。相続税の計算では安い金額を使っていると思ってください。

自宅の土地には税金があまりかからない

亡くなった人の持っていた土地が、自宅の敷地であれば、相続税は大幅に安くなる可能性があります。
「小規模宅地等の特例」といって、要件を満たすと、土地の金額が80%減額できます。
3000万円の土地が特例の要件を満たすと2,400万円が減額されて600万円が課税の対象となります。
特例が使用できるかどうかが相続税計算でのポイントとなります。
特例が適用できるパターンは3つあります。

●特例適用の3パターン

(1) 配偶者が取得
配偶者が自宅の敷地を相続する場合には、他に要件もなく、特例を使用できます。

(2) 同居親族が取得
一緒に住んでいた親族が相続する場合には、追加の要件が2つあり、要件を満たすと特例が使用できます。
① 相続税の申告期限(亡くなってから10か月)までその家に住んでいること。
② 相続税の申告期限まではその土地を売却しないこと。
同居している親族がいて、適用できそうな場合には、申告期限までの要件に気を付けましょう。

(3) 同居していない親族が取得
一緒に住んでいる親族がいない場合にも、次の要件を満たすと、特例が使用できます。
 <亡くなった人の要件>
① 配偶者がいないこと、かつ、同居親族がいないこと。
   <相続する人の要件>
② 相続開始前3年以内に自分または自分の配偶者の持ち家に住んでいないこと。
③ 相続開始前3年以内に3親等以内の親族の持ち家に住んでいないこと。
④ 相続開始の時に住んでいる家を以前所有していたことがないこと。

同居していない場合にも、賃貸や社宅住まいの親族がいる場合には、特例を使用できます。
この(3)のパターンについては、特例を使用するために、強引な方法が目立っていたことから、2018年の税制改正により、③と④が加わって、要件が厳しくなった経緯があります。

知らないと損をする適用のポイント

この特例が受けられるかどうかで税額が大きく変わることから、わが家の場合は、受けられるかどうか? といった質問をたくさん受けます。
適用できるかのポイントをいくつかご紹介したいと思います。

(1)同居と思っていたら、同居でなかったケース
1階に親世帯、2階に子供世帯というような二世帯住宅について、ほとんどのお家は1つの建物として登記されています。1つの建物に一緒に住んでいるので「同居」です。
しかし、中には一階と二階を別々の建物として登記していることがあります。この場合、中で繋がっていて、一緒に住んでいても「同居になりません」
それぞれがお金を出した場合には、そのお金を出した割合で登記する必要があります。その時の登記方法には2種類あり、半分ずつ出したので、1つの建物を2分の1ずつ持っているという「共有登記」と、1階はお父さん、2階は息子というように別々の家として登記する「区分登記」があります。
どっちかな? と気になる場合には「登記簿謄本」で確認することをお勧めします。また、4月から6月に届く固定資産税の通知書でも確認ができます。共有の場合には宛名のところに「〇〇様他〇名」といった記載があります。
他にも、実家の隣に家を建てて、渡り廊下などで繋がっている場合にも、別々の建物として登記されている場合は「同居になりません」

(2)同居していなかったが、同居となるケース
ずっと一緒に住んでいたが、病気で何か月も入院していた、といった場合は「同居」となります。病気が治ったら戻ってきますので、入院していたような場合は同居となります。
また、介護が必要な状態になって、自宅での生活が大変になったので、もう何年も老人ホームに入っています、といった場合も「同居」となります。入院に比べると戻ってくることは少ないかもしれませんが、介護度が改善して戻ってくることもあるためです。
ただし、介護の必要性からではなく、元気なうちから老人ホームに入った場合は、単なる引っ越しとなりますので、老人ホームが自宅となります。

(3)生活の拠点が何処か? が問題になる
住民票だけを移して同居しているように見せるケースは、とても危険です。私が申告のお手伝いをする時にはリスクが大きいので絶対に適用しません。
家族と離れて同居している状況が不自然だった場合には、税務署は調査すると思って下さい。調査で見つかった場合には、適用しないで計算した差額の税金を払うだけではなく、少なく申告した罰金と延滞税がかかります。正しく申告することが1番の節税になります。

(4)何年一緒に住んでいるかは関係ない
同居していた期間について、何年以上といった要件はありません。
これから何年も一緒に暮らそうと思っていても、容体が急変することもあります。そのため、期間についての要件はなく、生活の拠点が移っているかどうかが大切です。

(5)同居している孫に適用できるか?
お孫さんが同居していて、「孫に残したい!」、賃貸で暮らしている「孫に残したい!」といった場合にも特例を受けられる場合があります。
ただし、通常、お孫さんは相続人ではないので、「遺言書」を書いておかないと引き継ぐことはできません。「遺言書」を書いて、自宅の土地や建物を遺贈(いぞう)すれば、お孫さんが引き継ぐことができ、同居していれば、特例も受けられます。もちろん配偶者がいない、同居親族がいない場合で、お孫さんが賃貸で暮らしていれば、特例を受けられます。
補足として、お孫さんが引き継ぐ場合など、相続人でない人が遺贈で財産を貰う場合、負担する税額が少し増えますが、この特例を使うことによる節税額の方が大きいことが多いと思います。

特例が受けられるかどうか?受けた場合と受けなかった場合の税額を早めに知って、検討しておくことが大切です。
最後に1つだけお願いがあります。税額を下げるために、同居を無理に勧めて、家族の仲が悪くならないように、お願いします。

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