連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(3)

大家の仕事は満室になってからが本番です

2016/04/09 林 浩一

壁紙を変えたり、ペイントしたりと物件にお金と手間をかけて差別化を狙う大家さんが増えています。でも、そういう大家さんのなかにも、空室が埋まったらそれっきり何もしないという人は少なくありません。だから、次々と退去者が出てしまいます。本当に大切なのは空室対策ではなく、満室対策なのです。

差別化を考える大家さんが増えてきた

 お客さんに「住みたい」と思ってもらうためには、ほかの物件と差別化をすることが重要です。簡単な例をあげれば、同じ地域でペットを飼えない物件が多かった場合、「ペット可」にすれば、競争力はグンとあがります。

 大家さんのなかには、「ペット可にすると部屋が汚れる」とか、「近隣トラブルの原因になる」という先入観を持っている方もいらっしゃるかもしれませんが、導入してみればそうした心配は大して問題にならなかったりするものです。

 ただ、ひとくちに「差別化」といっても、そう簡単にできるものではありません。

 私の知っている大家さんを見ても、空室が出ると、ほかとの差別化を図るために壁紙を変えたり、ペイントしたり、モデルルーム化したり、DIYを取り入れたりと頑張っている人が増えてきました(大家さん全体から見たら、まだほんの一部ですが)。

自転車マニア向けの物件を建てた大家さんの話

 以前、新築の賃貸物件を建てた、ある大家さんからこんな話を聞いたことがあります。その大家さんの物件は、近くに一級河川がある地域にあって、河川敷は自転車好きの人たちなら知らない人いないほどの有名なサイクリングコースになっていました。そこでハウスメーカーが、自転車マニア向けの物件を建てたらどうかと提案してきたそうなんです。

 エレベーターは、自転車をタテに入れて運べるように奥行きのあるものにして、1階に洗車ができるスペースを設けたり、土間を広くとって自転車のまま玄関に入れるようにしたり、リビングに何台も自転車を置けるスペースをとったり。

 そういうエレベーターは、普通のものより費用はかかるし、自転車用のスペースを広くすると生活空間が小さくなるので、家族向きというより子どものいない夫婦か、ひとり暮らし向きの部屋になってしまうというリスクがあります。

 それでも「付加価値」でそうしたリスクはクリアできるというハウスメーカーの説明に納得して、その大家さんはゴーサインを出したそうです。最近の自転車ブームはますます盛んだといいますから、この判断は客観的に見てもそう間違った判断ではなかったと思います。

コンセプト通りの入居者さんは集まらなかった

 ところが、春の繁忙期に向けて募集を開始したところ、本来のターゲットである「自転車マニアの人たち」はなかなか集まらなかったそうです。

 そうなると、焦ってくるのはハウスメーカーの営業チームです。春の稼ぎどきなのに、なかなか部屋がうまらないとあっては、自分たちの成績にキズがつきますから、本来のターゲットではない、自転車が好きでも何でもない人にもその物件をすすめるようになります。

 その一方、企画チームとしては自分たちがつくったコンセプトを崩してしまうことになりますから、営業チームの勝手な行動に口をはさもうとします。ただ、狙った通りのお客さんだけを待っていたら、空室だらけになってしまうので背に腹はかえられません。

 その結果、どうなったかというと、入居者のうち「自転車マニアの人たち」はごくわずかで、ママチャリしか乗らない人たちがほとんどだったといいます。

 もっとも、長い目で見れば入居者さんの入れ替わりのタイミングで当初に狙った層の人たちが少しずつ入ってきてくれて、狙った通りの「差別化」物件にすることもできるでしょう。自転車ブームは一過性のものではないようですから5年先、10年先くらいにはコンセプト通りの物件になる可能性は大いにあります。

本当に大切な「差別化」とは?

 ただ、これはあまり効率のよい方法ではないように思えます。実際、物件を差別化しようと頑張っている大家さんのなかには、いろいろ空室対策をやっているのに次々と退去者が出て、一年中入居者探しをしている人がいます。

 そういう大家さんは、頑張って物件にいろいろ手をかけて入居者さんを探すのですが、いったん空室が埋まると安心してしまって何もしないという人が多いようです。空室のお部屋にだけお金や手間をかけ、入居者さんが見つかったらそれっきり。すでに住んでいる入居者さんのことは何も考えていない…。そういう大家さんが、まだまだたくさんいるようです。

 もちろん、物件にお金や手間をかけて魅力的にすることはとても大切です。でも、本当に大切な差別化は、どこよりも快適な住環境を入居者さんに提供すること。だから、大家の仕事は、入居者さんが住んでくれてからが本当の仕事なのです。

 空室を埋めることも大切ですが、住んでくれている入居者さんの幸せはそれ以上に大切です。大家にとっては、空室対策よりも満室対策のほうが重要なのではないでしょうか?

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