連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

なぜ定期借家契約は普及しないのか(2)

定期借家契約にまつわる不動産会社のウソ

2016/02/27 林 浩一

成立から15年経っても3パーセントほどしか普及していない定期借家契約。大家さんにも入居者さんにもメリットのあるこの契約が普及しない理由はどこにあるのでしょうか。「お客さんが嫌がるから」と不動産会社はいいますが、実は不動産会社が普及を妨げていたのです。

「定期借家契約」を毛嫌いする不動産会社

「定期借家契約」は成立して15年以上たっても普及率が3.2パーセントに過ぎないことを前回、お話しました。今回は、なぜ定期借家契約は普及していないのか、ということについて考えてみましょう。

 これは私が、「Wilshire five seasons」を新築で建てたときの話です。6世帯の小さなアパートでしたが、「30〜40代の夫婦+子ども」をターゲットにして、心地よいコミュニティのある住環境を提供しようとこだわり抜いて建てた愛着のあるアパートです。これを定期借家契約で扱うことも、よくよく考えた上で決めたことでした。

 周囲には5社ほどの管理会社があり、管理を依頼するためにそのうちの1軒を訪ねました。対応してくれた店長と営業主任は、私が作成した物件資料を見て、笑顔を見せてくれました。

「バス便立地ではありますが、素敵な新築物件ですね。間取りもファミリーにぴったりじゃないですか」

 と、まずまずの反応です。ところが、私がこの物件を定期借家契約で扱いたい旨を発言したところ、途端に彼らの表情が変わったのです。

「定期借家契約は、転勤などで自宅を一時的にほかの人に貸したりするときのもので、一般の賃貸物件には使いませんよ。お客さんも敬遠しますから、家賃も低めに設定しないと無理です」

 いま思えばそんなことはないのですが、定期借家契約を選んだ私の選択は、不動産業のシロウトの浅はかな考えだったと思ってしまいました。

 でも、どうにも納得がいかなかった私は、ほかの不動産会社にも話を聞いてみることにしました。するとどうでしょう。彼らの反応は、判で押したように同じだったのです。

「定期借家契約の導入コストは見合わない」というのはウソ

 合計5社をまわって、不動産会社が定期借家契約物件の管理を嫌がる理由が少しずつわかってきました。大別すると、次の2点に絞られるようです。

 ひとつは、「定期借家契約は、普通借家契約と書類の仕様が異なるため、導入コストがかかる」という理由。

 全国に支店があって共通の端末でつながっているような会社の場合、新しい仕様の書類を扱うことになると現場が混乱する、という話も聞きました。でも、金融業界などでは法改正のたびにシステムを大幅に入れ替えたりすることは普通に行なわれていますから、「不動産業界だから無理」という理屈は通らないでしょう。

 実は契約期間が1年以上の場合、定期借家契約では契約が終了する半年前までに契約が切れる旨を通知しなければなりません。業務が煩雑になると彼らはいいます。でも、管理会社は普通借家契約であっても更新時期が近づいてきたときに何かしらの通知をしているのが実状です。普通借家契約の更新の通知を、定期借家契約の場合、契約が切れる(再契約する時期がせまっている)という通知に変えるだけです。

 契約ごとなので、絶対に欠かせない手続きなのですが、不動産会社の人たちと話していると、彼らがこうした新しい業務が発生することを嫌がっているのではないかと勘ぐりたくなりました。ミスがあって通知を忘れたりすると、責任が自分のところにまわってくるのではないかと恐れているわけですね。

「普及率が3パーセントそこそこということは、100件の契約のうち、定期借家契約はたったの3件しか行われていないことになります。それだけのために新システムを導入するメリットはありません」という話も聞きましたが、これも理由になりません。

 なぜなら3パーセントそこそこしか普及していないのは、彼らが導入を嫌がっていることこそが原因だからです。近年、シェアハウスが人気を呼んで不動産市場を活性化させましたが、これは定期借家契約という制度があったからこそ実現できたものです。入居者同士のルールやマナーを取り決めるのと同じように、使用期間をキチンと決めておかなければトラブルにもつながりかねませんからね。

「定期借家契約はお客さんが嫌がる」というのはウソ

 不動産会社が定期借家契約を嫌がる、ふたつ目の理由は「契約満了とともに立ち退きを迫られるんじゃないかと入居者に思われるので、貸しにくい」というものです。

 しかし、これにも根拠はあまりなく、お客さんから直接、「定期借家契約ですか? 嫌だなぁ」といった意見を聞いてのことではないようです。その証拠に、後日、私が入居者の人たちに定期借家契約について感想を聞いてみたところ、ほとんどの人がその存在すら知りませんでした。

 でも、この制度は大家と入居者が対等に約束を交わす制度であり、大家が不当な理由で入居者を追い出したりできるものではないということをキチンと説明すると、みんな納得してくれたのです。

 従来の普通借家契約では、そのまま住み続けるときに「更新」を行ないますが、その際に「更新料」という名の臨時ボーナスを稼ぐ大家もいます。でも、定期借家契約の「再契約」では再契約料をとらない大家さんも増え、その点でも入居者にはメリットがあるのです。

 さて、不動産会社の言い分でわかる通り、定期借家契約の普及が進まないのは、入居者が敬遠しているからではなく、不動産会社自身に原因があるのです。そんななかで定期借家契約を導入するには、私自身が動いて不動産会社を説得していかなければならないことに思い至りました。

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