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大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

ふたつの街の類似点はこれだけある

巨大マンションが立ち並ぶ豊洲は、多摩ニュータウンと同じ運命をたどる!?

2016/09/19 大友健右

かつて多くの人が住み、活気に溢れていた多摩ニュータウンは、いまではゴーストタウンのようになってしまっています。多摩ニュータウンと同じように、同じ時期に建設された、同じようなマンションに、同世代の人たちが多く住んでいる街といえば、豊洲が思い浮かびます。そう考えると、不安を覚えるのは私だけではないのでは…。

浜松町の再開発計画に私が感じること

 東京は、変化する街です。あちらこちらで「再開発」が行なわれ、人の流れも目まぐるしく変わっていきます。

 最近は、2020年の五輪、パラリンピックの影響でその動きも激しくなっています。なかでも私が注目しているのは、羽田空港に向かう東京モノレールへの乗換駅として知られる浜松町駅の再開発です。

 この駅は、西口は商業施設が建ち並んで人の出入りも多いですが、反対側の東口は旧芝離宮恩賜庭園があるほかは、素っ気のないオフィスビルがあるくらいでパッとしない、地味なエリアという印象がありました。

 ところが、その浜松町駅東口エリアに商業施設と賃貸オフィスからなる2棟のタワービルが建つという話があります。開発を手掛けるのは野村不動産ホールディングスで、2020年までに着工し、2030年ごろの完工を目指しているとか。

 私がこの再開発のどこに注目しているかというと、羽田空港を結ぶ都心の入口というアクセスのよさです。完工は五輪、パラリンピックの開催の時機を逸していますが、近ごろの外国人観光者の増加傾向に歯止めがかからない限り、浜松町は多くの人で賑わう街に変貌するのではないでしょうか。

 ほかにも東京駅や品川駅の周辺でも再開発が行なわれる予定があり、東京の南側が大きく生まれ変わりそうな気配を感じています。

 ただ、私は「浜松町の東口エリアは買い」という話をしたいわけではありません。投機目的でマンションを購入するのと違い、再開発エリアを「住まい」として選択する際、そこには成功例だけでなく、失敗例もあるという話をしたいのです。

かつて活気に満ちていた多摩ニュータウンは…

 失敗例として私があげたいのは、ほかでもない多摩ニュータウンです。

 個人的な話になりますが、私が通っていた高校がこの地区にあり、大規模なマンションに住んでいる同級生が多くいました。当時は非常に活気があり、地域のコミュニティ活動も盛んに行われていました。

 高校を卒業後、この街とはしばらく疎遠になりましたが、不動産会社に就職して再会することになりました。新人の営業マン時代、この街では「住み替えをしたいので、いままで住んでいた部屋を売りたい」という問い合わせが殺到したのです。

 いや、「売りたい」という人は50戸くらいのマンション1棟のうち、3戸くらいのものでしたから、売り手側にとっては「殺到」という言葉は適切ではないかもしれません。しかし、多摩ニュータウンにはマンションが数十棟とあるのです。50戸のうち3戸だけでも、同じような形の部屋がそれと同じくらい売りに出されることになります。

 これでは適切な値段で売ることは不可能です。その結果として、マンションを手放そうとした人は極端に安い値段で手放すか、売りに出せずにあきらめるか、いずれも厳しい選択を強いられることになってしまったのです。

 それ以上にショックだったのは、高校時代に見た活気ある街が、高齢化してゴーストタウンのようになってしまった街の変わりようです。私と同年代の同級生たちは独り立ちして街を出てしまい、残されたかつての働き盛りのお父さんお母さん世代の人たちはバリアフリーという言葉がなかった時代に建てられたマンションの構造に不便を感じるほどの高齢者になっていました。

同じ失敗が繰り返される利用とは?

 このように再開発には明暗があり、私が多摩ニュータウンと同じ運命をたどるのではないかと懸念しているのが豊洲エリアです。

 最近では築地市場の移転問題で話題になることが多いですが、100m級の高層マンションが立ち並ぶエリアには同じ世代の人が住んでいます。10年後、20年後というタイムスパンで見てみれば、私が目にした多摩ニュータウンと同じ状況がこの街にやってくるのではないかと心配になります。

 多摩ニュータウンのような問題が学習されることなく、豊洲に同じような巨大なマンションが立ち並ぶようになったことを不思議に思う人もいるかもしれません。でも、多摩ニュータウンも豊洲エリアも、開発計画が立案された当初は、「再開発されたマンション街に数十年住み続けた人」が存在しなかったことを考えると、それも当然のことのように思えます。

 鉄筋コンクリートのマンションの法定耐用年数は、財務省が資産を計算する便宜から一律60年と定められていましたが、1998年の税制改正で47年に短縮されました。

 東京は、常に人の流れが変化する動的な街です。それが東京の魅力でもありますが、同世代の人たちを大規模に収容する極端な再開発には、世代交代の際に多くの物件が売れ残るという負の力学が働くということを覚えておいてほしいと思います。

「住み続ける街」という観点で再開発エリアを考え直してみると、見逃せない問題があるのではないでしょうか。

今回の結論

・変化の激しい東京では、あちこちで再開発計画が行なわれている。
・しかし、計画には明暗がある。多摩ニュータウンをはじめ、豊洲エリアの再開発には負の側面がある。

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