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意外と気づいていない?

介護問題の本質は「家」にあり

2018/06/19 鬼塚眞子

一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会理事長 鬼塚眞子

介護を考える上で、切っても切り離せないのが、親のマイホーム問題だ。

私が代表理事を務めている「一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会」では、介護や相続に関連する問題を、弁護士・税理士・金融FPとタッグを組み、ワンストップで相談に応じている。

そこで受ける相談で毎回といってよいほど出てくるのが、親のマイホーム問題だ。しかし、相談の優先順位としては、意外なことに親の不動産問題を一番にあげて来られる方は多くない。つまり、お話をしていくなかで、親のマイホーム問題が必ず懸案として浮上してくるわけだ。

そんな親のマイホームの問題で典型的な2つの実例を紹介しよう。

Aさんが相談に来られたのは、親の資産に不安を感じたことがきっかけだった。Aさんの親はまだ70代だが、人工関節を入れため足元がおぼつかなくなり、一人暮らしでは不安ということから介護施設に入居した。認知症の症状はまだ出ていない。そこで親の資産について知っておきたいと「自分たちでざっくり計算したらところ、残りの資産を使い切ってしまうことになるだろうが、介護費用を何とか賄えそうなのだが、実際はどうだろうか」という相談だった。

一方、Bさんの親は雪国にある介護施設に入居している。自宅は3年間空き家になっていた。現状では首都圏に住む子どもが毎月介護のために通っている。そんなBさんの相談は、いずれは認知についても考えなくてはならず、その前に親を呼び寄せるタイミングはどうしたらよういかというものだった。

ところで、AさんとBさんの主たる相談には、直接は家をどうしたらよいかということについては入っていないが、問題解決にあたっては“親のマイホームを処分すること”が必要不可欠な要素になっている。

AさんとBさんの双方の親御さんとも、マイホームを売却せずに介護施設に入居したのは、「資産に余裕があるから、家は自分の死後に売却し、子どもたちで按分すればいい」と考えていたようだ。

社団では相談を受けた初回に必ず資産シミュレーションを行っている。というのも、資産の全容を大まかにでも掴んでおかないと、介護施設に入るにしても、将来にわたって支払い続けられるかが、親だけでなく子どもの老後にも大きく影響するからだ。そのうえで認知能力に問題がなければ、金融資産の見直しを提案することもある。

この2つのケースでは、十分な資産があると思っていたAさんも、シミュレーションの結果、数年以内に資金ショートの問題が発生することが判明した。そこでAさんの親御さんに認知症の問題がないか医師に診断をしてもらったうえで、不動産の売却を提案した。その際、社団では提携税理士によって、大まかな子どもへの生前贈与、相続税の納税額も算出。Aさんと親御さんの双方に同席してもらい、その結果を提示した。

親御さんは「思い出の詰まった家だけれど、資金ショートが明らかになった以上、手放すことはいたしかたない。いまの私なら家の卒業を見届けることができる」と話された。Aさんたち子どもたちもそれぞれにマイホームを持っていることもあって、売却に異論は出なかった。幸いにも立地に恵まれ、売却はスムーズにいったと聞く。

「家の問題」に潜む 親族間のトラブル

一方、Bさんのほうはというと、親御さんがマイホームの売却には消極的で、なかなか話が進まなかった。

私たちはこれまでも多くの相談に応じてきたが、まず自分たちの家庭、そして親族に何の問題もないケースを探す方が少数派。多かれ少なかれ、どんな家庭でも親族あるいは親族間のトラブルを抱えている。

なかでも生前に不動産売買を積極的になれないケースでは、親族間のトラブルがあることが多い。実際、Bさんのケースがまさにそれで、親族間に問題があって、自宅を売るに売れず空き家にしていることがわかった。

親御さんの介護については、Bさんがメインで毎月、遠距離介護をしながら、同時に家の手入れも行っていた。しかし、Bさんも次第に介護と家の掃除の両方をやるのがつらくなってきていた。「このままでは自分も倒れてしまう」と感じ始めたBさんは、家は空き家にしたままでもよいので、親を呼び寄せたいと相談してきたのだった。

介護に疲れた子どもはどうしても近視眼的になってしまう。介護疲れが出てきたBさんは、最近は2~3か月に一度しか親に会いに行けないという。

実家の建物は築50年と古いが、敷地200坪で庭木も多い。そのため空き家にしていれば、夏は庭の手入れ、冬は雪国ゆえの雪下ろしの問題が出てくる。これまでは何とか近所や地域の人の手助けで何とかなったが、今後もそれを頼りにするわけにもいかない。しかも、親族間のゴタゴタはいっこうに埒が明かず、Bさんと親御さんは「家は売れないもの」と思い込んでいた。

そこで私たちはBさんの実家のある地域をリサーチ。結果、この地域は高齢者が多く、空き家も目立つようになっていた。しかし、Bさんの実家は敷地が広く、立地条件も比較的恵まれているため、活用方法も複数考えられ、いまなら売却が可能ということがわかった。また、Bさんや親族も「その家にはもう誰も住まない」ということだけは明確に一致していたため、弁護士も交えて親族との調整を図り、不動産を売却。そのお金で首都圏の介護施設の入居一時金に充てるプランを提案した。

首都圏のなかでもBさんの住む地域の介護施設は土地の評価が高いため、ほかの介護施設より入居費用はかかる。しかも手厚い介護をしてくれる施設は、やはりそれなりの費用がかかる。しかし、Bさんは家を処分したお金で、親御さんをワンランク上の施設に入居させることができた。

親御さんも当初は、見知らぬ土地での介護生活に不安を感じていたが、南欧風の庭、優しいスタッフ、おいしい料理、何より入居者仲間が素敵に人生を重ねてきた方たちばかりで、親御さんは「毎日が楽しい」と第三の人生を楽しんでいるとの報告を受けた。

こうした相談を受けると、わが身に置き換えて考えてしまう。もちろん、自分の家には愛着はある。けれど、その思いが強くなりすぎると、子どもたちに負担をかけたり、トラブルになることもある。それは親として望むことではない。

高齢になると、体のどこかに不具合も出てくる。地方ほど病院まで遠く、地方のタクシードライバーの話では「買い物や通院にタクシーを利用する人も珍しくない。そんな人の話を聞くと、年金を多くもらっている人ばかりだ。そんな人でも、次第に自分で電話をしてタクシーを呼ぶことも大変になってくる」という。

こうした相談を受けるたびに思うのは、地方での「病院通い」「介護をする子ども」という観点から。、もっとも重要なのは“終の棲家”をどうするか、そして、家については真っ先に考えるべき問題だということだ。

自分たちではどうにもならないと思っていても、プロの不動産関係者や士業に相談するべきだと思う。「実際の売買は今すぐではないが、参考として話を聞きたい。今後、情報もほしい」といえば、協力が得られるはずだ。そして、介護や相続は事前の対策が、のちのトラブル防止につながることだけは間違いない。

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