連載・トピックス / 不動産投資

お隣の国からやってくるライバルオーナー。

日本の不動産を買う韓国人投資家が増加中!

2019/08/13 住まいの大学

文/住まいの大学編集部

画像/123RF

日本の不動産に投資する韓国人が増えています。6月11日付の韓国・中央日報日本語版に転載された、韓国経済新聞のコラムには、投資用物件を取り扱う日本国内の会社のコメントとして、「今年に入り韓国人の問合せが急増している」との声が紹介されています。


また、Newsweek日本版も今月、「日本の不動産を買う韓国の資産家が増えている」との記事をサイトに掲載しています。主な背景となっているのは韓国国内の景気の悪化です。現在、韓国では、一向に先行きの見えない経済状況を不安視する資産家・富裕層が、積極的に海外に目を向けているとのこと。資産防衛の側面から、日本、アメリカ、カナダ、オーストラリアといった、安定した先進国への投資に注目が集まっています。


加えて、不動産投資に不利な税制の施行があったことや、近年、海外への投資をサポートするサービスが韓国国内で充実してきたことが、これらに拍車をかけているようです。


そのため、かつては機関投資家が中心だったこの分野に、個人が次々と参入するようになり、投資額は急増。上記、韓国経済新聞のコラムには、「昨年(2018)の不動産海外直接投資額は前年の34.8%増」との数字が、韓国企画財政部(日本の財務省に相当)による公表値として掲げられています。


なお、これら韓国人投資家による日本の不動産への投資については、前述したとおり、資産防衛的な側面が見られることから、キャピタルゲイン(売却益)ではなく、堅実なインカムゲインが望まれるケースが多いようです。インカムゲインとは運用益、すなわち家賃収入です。


その点、景気の失速に悩むソウルに比べれば、東京や大阪の利回りは現在とても高いということで、彼らは熱い視線を隣国の市場に注いでいます。


一方、日本国内では、複数の不適切融資事件の影響もあって、不動産向け融資の蛇口がここ最近は絞られたままです。個人が不動産投資へ参入するハードルが若干高められているかたちです。


そのため、急増する韓国人投資家は、業界にとってはありがたい存在となっています。しぼんだマーケットを少しでも膨らませてくれる助け舟ともいえそうです。


ところで、韓国・不動産、といえば、韓国の賃貸住宅市場には面白い取引慣行があるのをご存知でしょうか。それは「チョンセ」と呼ばれる独特の保証金制度です。漢字で書くと「伝貰」です。


このチョンセの面白いところ、それは入居者がタダで賃貸住宅を借り、タダで住んでしまえるという仕組みです。なおかつ、オーナー側もちゃんとその間収入が得られます。


からくりは預金金利にあります。チョンセ物件では入居者がオーナーに高額の保証金を預けます。その額はオーナー側の思惑や市場によっても左右されますが、物件価格の50%、70%といった数字も普通に見られます。ですので、分譲型のマンションを貸し出す場合などは、日本円にすると数千万円規模になることもよくあります。入居者は、それをオーナーに預けておくことで、契約期間内はタダで物件に暮らせるのです。そのうえで、契約期間が終了すれば、保証金はそのまま入居者の手元に返ってきます。


一方、オーナーは、保証金を預かっている間、それを銀行に預けます。ねらいは利息です。なにぶん高額な預金となりますので、家賃に相当するか、あるいはそれ以上の十分な収益を生んでくれるというわけです。


つまりチョンセでは、入居者は、自分が銀行に預けていれば得られるはずの利息を家賃としてオーナーに譲るかたちをとるわけです。ただし、その分は文字どおりの不労所得でもありますので、何となく得をする感じがしないでもありません。そのため、韓国でチョンセを一度でも経験した日本人など、「毎月家賃を支払うのが大変無駄に感じるようになる」、そんな感想を持たれる方もいるようです。


なお、チョンセの保証金を預けるのに、自己資金が足りない場合、親や銀行から借金をする例もあるということです。その場合は、利払いの必要な借り入れに対する利息分が、実質的な家賃となる計算です。


ちなみに、チョンセのほかにも、韓国には月々家賃を支払うタイプの賃貸物件も存在します。その多くはウォルセ(月貰)と呼ばれるもので、家賃のほかに、日本の敷金などに比べるとかなり高額な保証金を上乗せするかたちとなっています。そのうえで、保証金をたくさん預ける場合は家賃が低く抑えられ、そうでないと家賃が上がる仕組みです。保証金は、チョンセ同様オーナーが資金運用に回します。


もっとも、現在の日本では、チョンセのようなシステムは考えられません。ウォルセも同様です。金利が低すぎて、オーナーは利息を稼げないからです。さらに韓国でも日本を追うように預金金利は下がってきています。そのため、チョンセをやめてしまうオーナーが、いまは増えているということです。


また、チョンセの保証金については、預かり金であるにもかかわらず、オーナーが次の投資に充ててしまう例も少なくありませんでした。そうした行為を住宅価格の上昇が下支えする構造が、韓国ではこれまで長年にわたり続いてきたことによるものです。


ですが、最近はそういった古きよき(?)環境も、韓国経済の減速、あるいは成熟とともに、過去のものとなりつつあるようです。


冒頭に挙げた韓国人投資家による海外への熱い視線の要因として、以上のチョンセの衰退も、数え上げておいて間違いはないといえるでしょう。


(文/朝倉継道)

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