連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

なぜ定期借家契約は普及しないのか(1)

普通借家契約では、大家はモンスター借り主に対抗できない

2016/02/20 林 浩一

「普通借家契約」は、昭和16(1941)年、それまでの借家法の改正によって取り決められました。75年も前のこの制度によって、大家はモンスター借り主に対抗する術を失っているのです。

ガラパゴス化した「普通借家契約」

 前回、大家さんと入居者さんが交わす契約に、「普通借家契約」と「定期借家契約」の2種類があることをご説明しました。そこで今回から、このふたつの制度の違いと、それを取りまく矛盾や問題点について語っていくことにしましょう。

 日本という国は、モノやサービスがガラパゴス化して、世界のグローバルスタンダードからずれてしまうという特徴が、いい意味でも悪い意味でもありますが、日本の不動産業界で慣習化している「普通借家契約」は、その最たるものといっていいでしょう。

 そもそも「普通借家契約」は、第二次世界大戦がはじまった昭和16(1941)年、それまでの借家法の改正によって取り決められたもの(いまから75年も昔の話です)。出征した兵士が戦地から戻ったとき、住む家がなくなるといった混乱を避けるため、それまでの法律に「正当事由制度」と「法定更新制度」が付加されたのです。

 すなわち、大家が入居者との契約の更新を拒絶するには正当事由(妥当な理由)が必要になったこと、それから貸し主が借家契約を更新しない場合、借地借家法が従前内容のままで自動的に法定更新されることを認め、借り主である入居者の権利を保護したわけです。

不良入居者の立退料として家賃6カ月分!

 ちなみに正当事由には、家賃を滞納しているとか、近隣住民とトラブルを起こしていることなどが当てはまりますが、何カ月以上の滞納なら認められるのか、どんな種類のトラブルなら認められるのかといった具体的な規定はなく、これまで裁判で争われた記録などを見ると、借り主にとって有利な判決が出る傾向がいまも続いています。

 また、契約の更新は法律で規定されていますので、大家側の都合でこれを変えるには、「立ち退き料」という名目の違約金を払うことが慣例化されています。

 私の知り合いの大家さんで、こんな目に遭った人がいました。その大家さんが持っているアパートに、騒音を出して周りに迷惑をかけている入居者がいて、注意してもいっこうに改善しなかったというのです。

 そのうち、迷惑をこうむっている隣の入居者も出ていってしまい、その大家さんは騒音の主に立ち退いてもらうことを決意しました。ところが、さんざんごねられた挙げ句、立ち退き料として家賃6カ月分、おまけに引っ越し代まで要求されて、泣く泣くそれに応じたというのです。

「普通借家契約」という制度のもとで大家は、こうしたモンスター借り主に対抗する術を持たず、弱い立場に置かれているのです。

「定期借家契約」の普及率は、わずか3.2パーセント

 戦時下の日本で急場で決められた法律は、戦後の混乱期が終わり、高度経済成長期に入っても維持されてきました。

 そんななか、ようやく「定期借家契約」が登場するのは平成12(2000)年のこと。大家と入居者がフェアな契約を交わして借家をやりとりする制度に改められたのです。

 いや、「改められた」というのは語弊がある言い方でした。というのも、賃貸契約のすべてが定期借家契約に替わったわけではなく、従来の普通借家契約もそのまま温存されているからです。

 国土交通省の住宅市場動向調査によると、そこには驚きの数字があります。平成26(2014)年度に交わされた賃貸契約のなかで定期借家契約が行なわれた割合は、わずか3.2パーセントに過ぎないというのです。制度ができて15年以上の年月がたっても、それだけしか普及していないというのが現状なんです。

 なぜ、そうなってしまったのか? 次回は私自身の体験をふまえながら、そのことについて一緒に考えてみることにしましょう。

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