連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(2)

本当の空室対策はADではなく長く入居してもらうこと

2016/04/02 林 浩一

空室を埋めるために不動産会社に仲介手数料とは別のお金を払う。そんなお金のやり取りが不動産業界では当たり前のことになっています。空室が怖い大家と利益がほしい不動産会社にとってはいいことかもしれませんが、本当の空室対策は長く入居してもらうことです。

空室を埋めるには特別なお金が必要!?

 大家さんを対象にしたセミナーなどで講演する機会も増えてきた私ですが、自分の勉強としてセミナーや大家さんの集まりにはできるだけ参加することにしています。そこで驚くべき話を聞くことも多いです。いい意味でも悪い意味でも。

 大家さんにとって最大の関心事のひとつはやはり空室対策です。あるセミナーではこんな話が出ていました。

「ある地域では数年前まで、AD(広告費のこと)は1カ月分が相場でしたが、最近では2カ月出さないとダメのようです。もし、それでも決まらないのであれば、営業マンに担当者ボーナスという形で報酬を渡せば、すぐに空室は埋まるでしょう」

 業界用語がチラホラあって、何の話かわからない人もいるかもしれませんが、私はこの話を聞いて、自分の耳を疑いました。というのも宅地建物取引業法(宅建業法)で、賃貸物件の仲介業務を行なう宅建業者(不動産会社)は、仲介手数料として家賃1カ月分を超える報酬を受けとってはならないと決められています。ところがその抜け道として、「AD」という名の上乗せ報酬を受け取り、物件と入居者とのマッチングを行なうことが日本の不動産業界では当たり前のようになされているのです。

 それどころか、場合によっては営業マンに「担当者ボーナス」という名のキックバックを渡すことさえあります。当然、会社の取引口座ではなく、その営業マンの個人口座に振り込むか、現金を封筒に入れて手渡しされます。なかには、商品券やビール券、図書券といった当たり障りのない形で渡されるわけです。

古い慣習がそのまま残る日本の不動産業界

 私は旅行業界やホテル業界でも働いてきましたが、ADや担当者ボーナスと似たようなキックバック方式のお金のやりとりは、ずいぶん前から駆逐されてきました。でも、不動産業界では、いまも変わらず当たり前のこととして行なわれているのです。

 長い間、変わらなかった慣習ですし、「仲介手数料」としてではなく、「AD」という別の費目でやり取りされているので、不動産業界にいる人にとっては何の疑問も、罪悪感もなく行なわれていることなんですね。

 もちろん、不動産会社の営業マンは決して悪人ではなく、ごく普通のサラリーマンなのですが、業界全体としてそうした習慣が当たり前のことになってしまっているのです。

 私が不動産業界のこうした慣習に危ういものを感じているのは、入居者のつかない物件を抱えた大家さんが不当な搾取を受けているといいたいからではありません。

 大家さんも入居者を確保することだけを考えるのであれば、ある意味、こうした慣習は大家さんと不動産会社にとってWin-Winのものといえるかもしれません。ですが、みなさんは、この一連の仕組みのなかで入居者さんの利益や幸せといったことがすっぽり抜け落ちていることに気づかれるのではないでしょうか?

 不動産仲介会社は、お客さんの住まいに関する希望を聞き取り、お客さんと物件とマッチングするのが仕事です。ところが、ADや担当者ボーナスといったお金がからむとどうなるでしょう。

 もちろん、すべての営業マンがそうというわけではありませんが、なかにはお客さんのことは後回しになり、希望とは違うとわかっていてもADやボーナスがもらえるような自分の利益が多い物件を紹介しようとする人もいるでしょう。このようなお客さんの利益を無視した取引が今後も続くとすれば、不動産業界の信用はどんどん失われてしまいます。

 大家にとって空室対策は重要な課題です。ADが当たり前になっている業界のことを考えれば、払わないという決断をするのはむずかしいことだと思います。ですが、私はこのように考えています。いちばんの空室対策は、ADを払うことではなく、お客さんが「住みたい」と思ってくれる魅力的な物件にすること。そして、入ってくださった入居者さんが、長く住んでくれるような快適な住環境を提供することだと。

 大家は部屋を貸して入居者さんから家賃をいただくことを生業としており、入居者さんの幸せを最優先に考えるのが当然です。私は大家としてそのことを絶対忘れてはいけないと思っています。

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