連載・トピックス / 売る

大友健右が斬る!不動産業界オモテ・ウラ

不動産取引をめぐる見えないお金の流れ(7)

業界内で当たり前に行なわれている「囲い込み」の実態

2016/02/01 大友健右

本来は4000万円の価値の家が割高な5000万円の値で売り出され、回し物件として利用されてしまう実態は前回お話しました。しかし、4000万円まで値を下げれば売れるはずの住宅が、3800万円、3500万円と値を下げられてしまいます。その裏で営業マンは何をしていたのか、洗いざらいお伝えします。

営業マンが売り主に見えないところでやっていること

前回の記事では、「回し物件」とは何か、「回し物件」として利用されてしまうとどんな悲劇が起こるのかをご説明しました(「『回し物件』として利用された中古物件の末路」 http://sumai-u.com/?p=2282 )。そこでご紹介したように、中古物件の売り主である佐藤さんの身に起こった出来事は、悲劇というほかありません。でも、これがいまの不動産業界で起こっていることの実態なのです。

これを読んでいる人が同じように目に合わないよう、売り主が知らないところで担当営業マンがどんなことをしていたのか、洗いざらい明かしておくことにしましょう。

自宅の売却を考えている佐藤さんは、不動産会社の査定を受け、「このエリアは人気なので…」という営業マンの言葉を信じて、5000万円で家を売りに出しました。
ですが、佐藤さんの住宅の本来の相場は4000万円。割高な価格で売りに出された佐藤さんの家には買い手がつきません。そこで、不動産会社の営業マンの言葉にしたがって、値下げをします。

本来であれば、5000万円から4000万円に下がった時点で自然に売れていくはずです。ところが実際は、そこからさらに3800万円、3500万円と値は下げられていきました

なぜそうなってしまったのかというと、営業マンが佐藤さんの住宅を「囲い込み」していたからです。

「囲い込み」とは何なのか?

不動産物件の多くは、国土交通大臣から指定を受けた不動産流通機構が運営しているコンピュータ・ネットワーク・システム「レインズ(REINS)」に登録され、会員の不動産会社がその情報を自由に受け取ることができるようになっています。

佐藤さんの家に値がついた途端、たくさんの人が物件を見に訪れたのは、このシステムがあったからです。

ところが、佐藤さんの住宅が4000万円になり、さらに値が下げられた途端、担当営業マンはレインズを通じてほかの不動産会社からやってくるお客さんを遮断してしまうのです。「あの家、値が下がっていませんか?」といった問い合わせがあっても、「買い手がつきました」とか、「ほかのお客さんと交渉中です」などと都合のいい理由をつけて、追い返すわけです。

これが「囲い込み」と呼ばれる、一部の不動産会社が行なっている業界独特の商習慣です。

どれくらいの物件が囲い込まれているのか?

近年、新聞や経済誌などでその実態が少しずつ報道されるようになってきました。
ある記事では、テレビCMやネット広告などで誰もが知っている大手不動産会社の多くが、「囲い込み」物件を抱えていることが書かれていました。ある会社の場合、189件の調査物件のうち、囲い込まれている物件が40件にのぼったそうです。なんと、21.2%の物件が囲い込まれていたというのです。

ただ、不動産会社に長年いた私の実感からすれば、囲い込み率21.2%というのは決して驚くような数字ではありません。囲い込みは佐藤さんの家のように、片手取引を両手取引にするためにも行なわれていて、非常に残念なことなのですが、一部の不動産会社の間では常態化しているからです。

ちなみに、佐藤さんの家は3500万円まで値が下げられ、売られていきましたが、誰が購入しのでしょうか?

4000万円の価値の家を3500万円で購入したわけですから、買い主はかなりラッキーな買い物をしたことになりますが、この場合、それは個人の買い主ではなく、別の不動産会社であるケースが多いのです。

佐藤さんの家を3500万円で購入した不動産会社は、リノベーションして価値を高めます。そうすれば、4000万円以上の値をつけて再販することも可能でしょう。

ここで一度、売り主側の不動産会社の視点に立って考えてみましょう。

相場より明らかに安い物件を、自社に直接来店する「一見さんの個人客」に売っても「両手取引」にはなります。ただし、ビジネスの観点からすると、その取引に継続性はありません。
ですが、同じ「両手」でも懇意にしている不動産会社に売却すれば、再販時、さらにその物件を預かって自社に来店しているお客様に直接販売することもできるわけです。このようにして「両手スパイラル」とでもいうべき状態へと導かれてしまうケースが、実際にあるのです。

少し前から「中古リノベーション住宅」という言葉が注目され、人気を呼んでいますが、その背景には、こうして囲い込まれた中古物件がその名を冠して市場に出まわっているという実態があることは、ほとんど知られていません。

売り主がこうした不利益を被らないようにするには、不動産会社との契約の方法にポイントがあります。
私がおすすめしているのは、「一般媒介契約」という契約方法を選択することです。詳しくは、別の記事(「業界の裏を知る私が教える、不動産一括査定の賢い使い方」 http://sumai-u.com/?p=7510 )に詳しくまとめてありますので、ぜひご覧ください。

(参考記事)
「業界の裏を知る私が教える、不動産一括査定の賢い使い方」
http://sumai-u.com/?p=7510

「売却主が不動産会社に利用されないための知恵(住宅売却のポイント)」
http://sumai-u.com/?p=2874


今回の結論

●多くの不動産物件は、レインズに登録され、複数の不動産会社が情報を共有している。
●だが、売り主と媒介契約を結んでいる不動産会社が他社に情報を渡さず、「囲い込む」ことがある。
●「囲い込み」は、「両手取引」をするために行なわれる。
●誰もが名前を知っている大手不動産会社でも、当たり前のように「囲い込み」を行っているケースがある。

<< 前の記事 次の記事 >>

講師に感想や読みたい記事のリクエストを伝えよう

注目の講師

住まいの大学 書籍のご案内
HOME4U