連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

覚えておきたい「大家の心得」(15)

業者がささやく「壁紙が選べる部屋がトレンドです」にはご用心!

2016/07/09 林 浩一

私の親しい大家さんが、不動産ポータルサイトの企画で部屋をリフォームしました。もちろん費用の多くは大家さん持ち。完成した部屋はとてもおしゃれでコンセプト通りだったのですが…。業者は大家さんのお財布を開かせようといろいろな提案をしてきますが、多くはコンセプトありきで入居者さんのニーズを無視したもののように思えます。もし、そんな提案にうっかり乗ってしまったら…。

入居者さんが壁紙の色を選べたほうがいい?

「リノベーションしてみたんだけど、フタを開けてみれば入居者がなかなかみつからなくてね…」。

 大家さん仲間のそんな愚痴を最近、よく聞くような気がします。そういうとき、私の脳裏にいつも浮かぶのは、不動産業界で数年前からよく聞くようになった、ある決まり文句です。「賃貸物件がみんな白い壁紙なのは日本だけ。壁紙の色くらい入居者が選べるようにならないと、日本の住空間は豊かにならない」と──。

 ですが、壁紙の色の好みというものは住む人の主観によるものです。第一印象で「きれい」とか、「かわいい」と感じるようなインパクトのある色にすれば成約率が高まるという大家さんの意見を聞くこともありますが、逆に「色によっては落ち着かない気分になるのですぐに退去してしまい、退去率が高まる」という大家さんもいます。壁紙の色だけで住空間は本当に豊かになるのか、私には少々疑問です。

「白い壁紙は日本だけ」というフレーズへの違和感

 とはいえ、知る人ぞ知る一級建築士や建築プランナー、リフォームデザイナーなどの口からそんな話を聞くと、「なるほど」と思う人も多いかもしれません。でも、長く旅行業界で働いていて、各国の住宅事情を少しは目にしている私には少し違和感がありました。白い壁で統一されている賃貸物件が多かった印象があったからです。

 アメリカの西海岸などでは、入居者が自由に壁にペンキを塗ったりする自由がありましたが、契約書でそのようなカスタマイズができないようなスペースが厳格に決められていました。映画などで壁にペンキを塗るシーンもありますが、あれは賃貸もあれば分譲の物件も多いように思います。

 最近では、内見後に入居を決めたお客さんに壁紙のサンプルを見せて、「どれがいいですか?」とカスタマイズを提案するというパターンもよく目にします。ですが、これが入居者さんに歓迎されているかというと、そうでもないような気がします。小さく切った壁紙のパターンやイメージ写真などを見ても、どれが自分の理想にふさわしいか、正確に判断できる入居者さんは少ないように感じるんですね。

大手不動産サイトの企画で部屋をリフォーム

 ちょっと前置きが長くなりましたが、ここで私が親しくしている大家さん仲間のリフォームにまつわるエピソードをお伝えしたいと思います。

 その大家さんは、大手不動産ポータルサイトが企画したあるキャンペーンに参加して、部屋をリフォームしたのです。ある雑誌の監修を受けて、○○○風の部屋にリフォーム、そのポータルサイトがサイト上で部屋を紹介して入居希望者を募るというものです。

 話を聞いた私は、その物件に足を運んでみました。見ると、確かにおしゃれな部屋で、壁にかけられた絵やオブジェなどがコンセプト通りの雰囲気を演出しています。ですが、私はコンセプトが先行しすぎてしまっているようにも感じました。

 コンセプトありきで部屋をつくってしまい、本当に入居者さんが求めている部屋になっているか、入居者さんにとって快適で居心地のいい空間になっているかという、いちばん大切なところが後回しになってしまっているように感じたのです(そもそも、そこまで○○○が好きな人は○○○の近くに住むのではないかとも…)。

結局、入居者は決まらず…

 残念なことに、その不安は的中してしまいました。キャンペーン期間中は、大家さんは客付けをせず、そのポータルサイトが入居者募集を任せることになっていたのですが、結局、その期間中に入居者は決まりませんでした。

 そして、リフォームが完了してから数カ月以上が過ぎたいまも、その部屋の入居者は決まらず、空室のままのようです。リフォーム費用は、そのポータルサイトの企画ということで多少安くなったようですが、その費用を負担したのは大家さんです。この負担をいつまでに回収できるのか、心配になってきます。

 この話はサイトの企画として持ちかけられたものでしたが、実際に大家さんのところには、いろいろな業者が「キャンペーンでお安くします」「こんなコンセプトの部屋が流行っています」といった、一見、魅力的に思える話を持ってやってきます。

 しかし、残念なことにそうした話の多くは、業者にとって都合のいい話が多いように感じます。業者も売上を上げなければなりませんから、何とか大家さんの財布を開かせようと、さまざまな提案をもちかけ、いろいろなアプローチをしてくるのです。

 たとえば業者が、「壁紙をカスタマイズできる部屋が流行っています」と言っても、本当に入居者さんがそれを希望しているのではなく、業者が主導して流行をつくりだそうとしていると考えておいたほうが無難です。トレンドとは、業者・その業界が仕掛けることがほとんどです。

 入居者さんのニーズを顧みない業者たちの「煽り」に乗せられてしまったら、その負担を背負うのは、ほかならない大家さん本人なのです。

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