連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

秘密は「ストーリーテリング」にあり

満室御礼の新築物件のつくり方

2016/01/23 林 浩一

父から引き継いだ物件のほかに、平成23(2011)年には新築を手がけました。2LDKのファミリータイプで戸数はわずか6部屋。相場よりも1万円ほど高い家賃でも、空室待ちがでるほどの人気を得ています。その秘密は、私の思いを詰め込んだ「ストーリーテリング」にありました。

いつも満室の新築物件はストーリーテリングで

「ストーリーテリング」とは、伝えたい思いやコンセプトを、それを思い起こさせる印象的なエピソードなどの“物語”を引用することで、聞き手に強く印象づける手法のことです。これを賃貸物件に応用したのです。

 まず前提として紹介したいのは、現在の賃貸における新築物件のつくり方。そこには、基本的に大家の意見は反映されません。その理由は、経験豊富なハウスメーカーが決めてしまうからです。できるとしたら、壁の色を数色提案されて、どれかを選ぶくらい。ほとんどの大家は新築物件の建築にタッチできないのです。

 しかし、私はそれが嫌でした。せっかく新しく建てて、これから何十年も管理するのなら愛着のもてる建物をつくりたいですよね。自分のビジョンで、「5年後、10年後、20年後。どういう形で、どんな人に住んでもらいたいか」という、自分らしいストーリー性を持った物件をつくりたかったのです。それで、設計段階の一からタッチして完成させたのが、「Wilshire five seasons」です。

建物イメージは留学時代の学生寮

 建物は留学時代の学生寮をミニマム化した洋館のデザイン。そのなかで譲れなかったのは、6世帯の小さなアパートで、マンションのようにひとつエントランスから各部屋へと中廊下がつづくこと。入居者の皆さんが同じエントランスから出てきて、一緒の場所に帰る形にしたかったんです。

 5社のハウスメーカーや工務店にお声がけして、引き受けてくれたのは1社だけ。こだわり抜いたせいで、いろいろと大変でした。さらに建物の周りの植栽までも将来を見据えて選んでいます。新築当時は小さかった植栽も次第に大きくなり、だんだんと緑が覆うような空間を考えていました。

 もちろん、入居者像もイメージして募集しています。「30〜40代の夫婦+子ども」です。5年後、10年後、たとえばさらに子どもが生まれ、建物を中心に人が集まり、小さいコミュニティながらもにぎやかな空間となることをイメージしたのです。ちょうどスタートから5年経っていますが、すべて思い通りに進んでいます。一貫したストーリー性を保つことで、入居者さんにもここでの暮らしを最初からイメージできたのがよかったようです。

コミュティが生まれる賃貸物件を

 そのほかに意識したのはコミュティが生まれやすい環境をつくること。都会だと、隣近所に誰が住んでいるかもわからない希薄な関係になりやすい。しかし、それだともったいない。シェアハウスではないですが、同じアパートに住んだ縁、それも6室という小さな世帯なので、入居者同士が少しでも仲良くなってもらいたいとの思いです。

 これは入居者を同じ子育て世代に絞ったことでうまくいきました。気兼ねなく子育てできる環境があるので、これまでに引っ越してきてから5人の赤ちゃんが生まれています。アパートのお子さん同士が仲良くなって、家族ぐるみのつきあいへと発展。そういのうもあって、安心して子どもが産める環境だと入居者が感じているのです。

内覧者が来るときは大家がなるべく立会い

 満室が続いている秘訣は、内覧者がいらっしゃるときになるべく私が立ち会うことにもあります。

 もちろん仲介会社さんの邪魔はしません。立場があるので、出しゃばるのはよくありませんからね。ヘルプ的に仲介会社さんがわからないような、地域のスーパー情報や住宅設備の説明などをしています。内覧者はそういう細かい情報や大家の人柄を知れると安心するんですよね。

 さらにお伝えするのは、どんな人がすでに住んでいるかということ。これは大家の私じゃないとわからないことです。小さなアパートですから、毎日顔をあわせることになるお隣さんです。

 どんな人が住んでいるかは、みなさん気にされます。内覧時に「いま連れていらっしゃる男の子と同じくらいのお子さんが住んでいます」などと教えますと、内覧者は安心できるんですよね。

 もし入居してからしかわからないと、場合によっては早く退去する原因にもなります。大家の私にも入居者にもよくないことなので、入居者のことは説明しています。

 同じような子育て世代を集めることにはこんなメリットもあります。それはアパート全体がひとつの“家族”になるのです。そうするとたとえば夜、ある部屋のお子さんが泣いたり、走り回ってうるさくしても、許されてしまうんです。普通ではクレームになってしまいますよね。

 でも、アパート全体がひとつの“家族”になっていれば、「ああ、あの子が元気にしているな」ですみ、ほかの入居者のストレスになりにくいんですよね。

 ファミリータイプのアパートだからこそできたコミュニティかもしれませんが、このおかげで住民間のクレームは少なく、長く住んでいただける居心地のよい物件になっています。

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