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映画『FAKE』公開記念 森達也監督インタビュー(後編)

衝撃のラスト12分。映画『FAKE』を観たあなたは何を感じ、何を思うのか?(1/2ページ)

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(C)2016「Fake」製作委員会

ドキュメンタリーとは何なのか?

前回に引き続き特別編として、現在公開中の映画『FAKE』を監督した森達也氏のインタビューをお送りします。

およそ2年前の2014年2月、一大スキャンダルとして日本中の注目を集めた全聾の作曲家、佐村河内守氏の「ゴースト騒動」をご記憶でしょうか? 映画『FAKE』は、その佐村河内氏の「その後」を撮ったドキュメンタリーです。

★★★『FAKE』公式サイト: http://www.fakemovie.jp/

後編となる今回は、映画の内容についてはもちろん、ドキュメンタリーとは何なのか、ジャーナリズムとはどう違うのか、森監督の創作への思いや世界観などもお聞きしました。

ドキュメンタリーの「演出」とは?
——『FAKE』というタイトルのせいもあって、仕込みだらけのやらせに近い映画だと思っている人もいるということでしたが、ドキュメンタリーには演出さえも許されないものだと思い込んでいる人もいるようです。

森: ドキュメンタリーは化学の実験に似ています。フラスコのなかに被写体を入れて、火であぶったりゆすったり、さまざまな刺激を加えます。つまり、被写体を挑発し、誘導する。それがドキュメンタリーの「演出」です。ときには撮影する側もフラスコのなかに入って、逆に被写体から刺激されることもあります。ドキュメンタリーは表現であり、作品ですから必ず撮る人の意図が入るわけで、それがなければ、ドキュメンタリーではなく、監視カメラの映像です。

——監督自らが被写体に働きかけるのですね。

森: そうした働きかけは、あらかじめこれを仕掛けてやろうと決めておいたこともあれば、現場でカメラを回しながら思わずつぶやいてしまったり、問いかけてしまったりすることもあります。

 ただ、始めから狙って仕組んだことは面白くないんです。ドキュメンタリーに携わる人たちは、「ドキュメンタリーの神が降りてきた」という言い方をするんですが、現場でたまたま起こったことのほうが断然面白い。

事実、映画のなかに使っているのは後者のほうが圧倒的に多いです。ラストシーンで僕は「いいシーンが撮れました」と口にしているのだけれど、あれは思わず出てきた言葉ですし、実際にいいシーンが撮れたと思っています。


(C)2016「Fake」製作委員会

映像は関節話法、活字は直接話法

——監督は、ノンフィクションなど文章を書くお仕事もされていますが、映像と活字をどのように使い分けられているのでしょうか?

森: いまは映像だとか、いまは活字だとか無理に区分けしている時期もありましたが、いまはもうどちらでもいいと思っています。映像向きの素材と活字向きの素材があるので、素材によって使い分ければいい。

ただ、映像はやっぱり間接話法なんです。そういう意味ではやっていて楽しいのは映像のほうかもしれない。やはり、直接話法はあまり好きじゃないですから。僕は、佐村河内さんについては本を書かなかったし、これから書く気はありません。活字はどうしても直接話法になってしまう。もちろん、それが効果的な素材もあるけれど、今回については直接話法を使いたくなかった。

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