連載・トピックス / 不動産投資

だから大家はやめられない!

シロアリに食いつぶされた柱をどうするか?

賃貸経営には「利回り」よりも重視すべきものがある

2016/02/06 林 浩一

父親からの不動産を引き継いだ林さん。一般的には地主系の大家さんに分類されます。そしてもう一方にあるのは、賃貸業を投資と考える投資家系の大家さんだ。その両者の賃貸業への想いは相反します。林さんが考える本来の大家さんの姿とは?

投資家系の大家さんとは、賃貸業への考え方が違う

 これまでお話させていだいたように、私は入居者のことを考えて自分からいろいろ動いて企画する大家です。そのためには、不動産業の情報に敏感になることも大事。自分とは考え方が違うことはわかっていますが、「新しい投資家系の大家さんの思考を知る」ために、彼らが開催するセミナーなどにも多く参加します。

 セミナータイトルが「儲かる◯◯︎」のような、明らかに利益重視の内容のものです。そこでのお話はほとんど同じ。あまり資金がない人でも始められる手法で、古くて安い物件を探し出し、それをちょっとリフォームしておしゃれな部屋にランクアップし、相場より高い家賃設定で貸し出すのです。

 貸しているうちは家賃収入を得て、物件の価値が買い値より高くなったら時機を見計らって売却する。キャピタルゲインを得るんですよね。これがオーソドックスな方法です。

 最近は若い投資家ブームもあるので、以前、若い投資家数名が講師を務めるセミナーに参加したことがあります。そのときのお話もやっぱりこの手法でした。でも私が問題だと思っていることは、みなさん利回りありきで入居者さんのことを全然考えていないことなんです。

 ある若い投資家は、「古い物件を買って、調べてみたら柱をシロアリに食われていました。そこで念のため専門家にチェックしてもらったら、シロアリはいなくなっていることがわかりました。柱は食いつぶされ、シロアリはどこかに行ってしまったから大丈夫だったんですよ」と平然と話されました。

 でも柱はもちろんスカスカですよね。すでにシロアリがいなくなったのだから、「食いつぶされた柱をわからないようにリノベーションしたらOK」という考え方です。でもそれって、私は本当にありえないなと思ったのです。

 そのほか、古い物件で問題になりやすいのが配線です。劣化していてかなり漏電しやすくなるものあります。でも、そういうのも平気なんですよね。見た目の悪いところは蓋をして、家賃は高めに設定。数年後のいいときに売却して利益を得る。見た目が綺麗なので快適かもしれないですが、そこに住む人の安全をまったく考えていない。「何かあったときに大変なことになる」という、住んでいる人のことが完全に抜け落ちているんですよね。

 でもこれがあるから大きな利回りが出るのは確かです。セミナーで講師の皆さんが、同じように儲かる方法だけを話されるので、自分のほうが間違っているんじゃないかと思ったくらいです。

「利回り」がすべてでいいのか?

 ただ救われたのは、最後の質問コーナーの時間のこと。参加者のおひとりが、「そんなリノベした物件の安全性は大丈夫なのでしょうか。もし入居者に何か起きたときは、大家さんはどうするんですか?」と質問してくれたんですよね。自分だけじゃなく、やっぱり誰でも疑問に思うことだなと、ほっとした記憶があります。

 でもそのときに返ってきたのはやっぱり、「そこを考えると利回り出ないんですよね」という若い投資家さんたちの答えでした。つまり、安全性を高めるために、修繕にお金をかけしまうと利益が出なくなってしまうというのです。

 配線劣化などの瑕疵があることをわかっていて修理せず、もし入居者が被害を受けた場合は大家に工作物責任が発生します。裁判では持ち主である大家の責任になるのに、自分が所有している間に何も起きなければいいと楽観的なんです。

大家は「入居者ありき」ということを忘れてはいけない

 普通は、入居者の人が家賃を払ってくれて、それで私たちは生活できている。お客さまである入居者ありきなんです。でも彼ら投資家は、もちろん入居者が払ってくれる間はお客さんですが、最終目標は売却益なので売却先しかお客さんとして見ていないのです。そこに住んでくれる人たちのことが本当に抜け落ちちゃっているんですよね。これまでに交流してきた投資家系大家さんはだいたい同じでした。

 何もなければ表面上はうまくいっているように見えるけれど、何かあったら致命的な問題になる。ある程度補強しても、利回りが何十%といかないまでも経営はできるはずなんですけどね。でも彼らにとっては旨味がないんでしょう。そうすると利回りが少なくなると言っています。

 でも、大家は住んでくれる入居者がいるからこそ成り立っていることを絶対に忘れてはいけませんよね。

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