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奥深き塗装職人の世界

~塗装技能オリンピックに潜入~

2018/10/12 住まいの大学

「塗装職人」と聞くと、“家やビルの壁にペンキを塗る職人さん”という程度のイメージしか持っていない人は多いのではないだろうか。確かにそのイメージに間違いはないのだが、彼らの仕事を見てみると、かなりの技術と知識を持ち合わせており、塗装という仕事がかなり奥深いことに気付けるのだ。 そこで、塗装職人たちが技術を競い合うイベント「塗装技能オリンピック」に潜入した。(取材・文/「住まいの大学」編集部)

塗装職人が技術を競い合う1年に1回のイベント

真剣な表情で大会に取り組む職人たち

「塗装技能オリンピック」は、外壁塗装・屋根塗装・屋根葺き替え工事・外壁張り替え工事・雨漏り防水工事などの外装リフォームを専門に行う株式会社プロタイムズ総合研究所(本社:東京都府中市、代表取締役:大友健右氏)が4年前から主催しているイベントだ。

2018年10月4日(木曜日)に横浜市港北区で行われた第4回のイベントには、同社と協力企業の職人たち総勢42人が参加。42人のうち、約半数の21人が一級塗装技能士という資格を持つ上級者だ。

主な競技内容は次の通り。

【競技内容】
初級~上級共通競技……「塗り絵」「調色」「筆記テスト」
中級競技……「砂骨ローラーでの粗目・細目模様塗り」「塗板」
上級競技……「塩ビパイプのアレンジ塗装」「サイディングリペア」

どれも素人には分かりにくい競技ばかりだが、このうち「塗り絵」「調色」「塩ビパイプのアレンジ塗装」の競技に潜入してみよう。

高度な技術と体力を必要とする「塗り絵」

枠内にきれいに収まるように色を塗っていく「塗り絵」

「塗り絵」とは、黒い線で描かれたイラストや文字の内側を刷毛で塗る作業だ。
素人が見れば簡単な作業にも思えるが、黒い線からはみ出すことなく、ムラなく、美しく塗ることは意外と難しい。

たとえば、書道を思い出してみると分かりやすい。筆に墨を含ませすぎれば、書き始めがにじむ。墨の量が少なすぎれば、書きたかったところまで書ききることなく墨がかすれてしまう。書き損じたと上から書き足せば、文字がずれたり濃くなりすぎたりする。また、失敗しないようにと、筆をゆっくりゆっくり動かせば文字は震えてしまう。

「塗り絵」も同じで、なるべく1回で塗り切った方がきれいに塗れる。そのためには、刷毛にどのくらいの量の塗料を含ませるか、あるいはかすれる直前に塗りをストップできるか、その感覚がとても重要だという。

また、手首や刷毛だけを動かして塗るのではなく、手は固定したまま体ごと動かして塗ることできれいな「塗り絵」が完成する。つまり、椅子などに座ってできる仕事ではなく、足腰の筋力も必要とする仕事なのだ。

実際に完成した「塗り絵」を見ると、難易度が高いことがよく分かる。黒い線からはみ出していたり、あるいは余白があったり、塗りムラがあったりする作品もある。

一級塗装技能士の資格を持つ職人さんの作品となると、やはり完成度は高く美しい。

真に腕のいい職人を見分けられる「調色」

プロでも特定の色を作り上げるのは難しい…

次に「調色」だ。
「調色」とは、赤・青・白・黄・黒の5色の塗料を使って、指定された色を作るという競技。
縦20cm×横10cm程度の板の上半分に課題の色が塗られており、それと同色を作って下半分に塗るというものだ。最終的に上下の色の境が分からなければ分からないほど、優れた「調色」ということになる。

課題となっていた色は、薄緑っぽい色とピンクっぽい色。いずれも「何色」と言い難い微妙な色だ。5色の組み合わせや量によって、当然、色は激しく変わってくるため、混色の知識はもちろん、微妙な色合いを作り出すための経験もかなり必要となってくるようだ。

さらに、塗った直後と塗料が乾いた後では色にも変化があるらしく、そのあたりも計算に入れておかなければならない。

出来上がりを見ると、上下の見分けがつかない作品の数が多いとは言い難い。それほどこの技術が難しい理由は、現在では塗料の種類が増え、現場で「調色」することは少なくなったことが理由のひとつに挙げられる。しかし、塗装技能士の資格を取得するには必須の作業で、「調色」の出来は職人の腕の良し悪しにつながるともいえるだろう。

パイプが丸太に!? 豊かな発想が塗装に生きる

塩ビパイプが盆栽に!?

そして、一級塗装技能士も参加する「塩ビパイプのアレンジ塗装」。
直径約20cm×高さ60cm程度の塩ビパイプを自由にアレンジして塗装するという競技だ。
塩ビパイプとは、排水管や下水道管などに使われるグレーの筒状の資材で、誰もが一度は目にしたことがあるはずだ。

その塩ビパイプに、「調色」でも使用した5色の塗料のほか、刷毛、スポンジ、タオル、ビニールといった程度の道具を使って、自由に塗装・アレンジしていく。

完成品は写真の通りで、古びた消火栓やロールケーキ、盆栽をのせた竹筒など、ただのパイプだったとは思えない作品が多く出来上がった。
色はもちろん、質感もまるで本物のようだ。石っぽい塗装を施した作品はずしっと重そうにも見える。

実は、この技術がよく使われているのが、遊園地や水族館、動物園といったテーマパーク。作りものの丸太や岩、コンクリートなどは、すべて塗装職人の手作りだという。

リフォームを安心して任せられる技術がある

このように家の外壁などを塗装している職人さんたちが、これほどまでに優れた技術を持っていることを知らなかった人は多いのではないだろうか。

しかし、それは塗装職人にあまり“光”が当たっていないということでもある。どこまでも縁の下の力持ちであるがゆえに、仕事をするうえでの目的や目標、モチベーションを保ち続けることが難しくなる塗装職人も多いという。

そこで、プロタイムズ総合研究所が始めたのがこの「塗装技能オリンピック」だった。こういった競技を開催し、表彰することで、職人たちのモチベーションアップはもちろん、知識や技術の向上を図ることができる。ひいてはお客様に質の高いサービスを提供することにもつながる。

真剣な競技のなかには、ゲーム感覚の競技もあり、競技終了後には懇親会も開かれ、多くの職人たちが、楽しみながら技術を競い合う1年に1回の「塗装技能オリンピック」となっている。

このように向上心と優れた技術、そして仕事を楽しむ余裕を持つ職人さんたちであれば、自宅のリフォームも安心して任せられる、そんなふうに感じる消費者も多いはずだ。

奥深き塗装の世界──。たまには街で働く職人さんたちの様子をじっくり見てみてはどうだろうか。

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