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空室は「埋めればいい」わけではありません!

4000件の空室を埋めた経験からわかった「究極の空室対策」とは?(1/2ページ)

尾嶋健信尾嶋健信

2016/07/13

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空室を埋めるより、空室を出さないことが大切

不動産投資の手法として一般的なのは、アパート・マンションなどの不動産物件を購入後、その物件を貸借人に賃貸して家賃収入を得ること。毎月の家賃収入が、毎月の不動産購入ローンを上回れば、投資として十分利益を上げることができます。

そこでポイントになってくるのが、賃貸経営のノウハウです。世に数多くの「賃貸経営マニュアル」が出回っていますが、私が声を大にして言いたいのは、管理会社を味方につけることが何よりも重要だということ。

というのも、私の見る限り、不動産投資家さんの多くは不動産管理会社を敵に回すような対応をしていて、これが賃貸経営のうまくいかない元凶になっているからです。「地元の不動産管理会社さえ味方につければ、賃貸経営はもっとずっとうまくゆくのに……」と、何度も思ったものです。

しかし、この件については前回お話ししました。そこで今回は、賃貸経営で失敗しないふたつ目のポイントをお話ししましょう。それは、「入居者をできるだけ退去させないこと」です。

私は、空室対策コンサルタントとして過去4000件以上の空室を埋めてきた経験がありますが、最近「入居者を退去させないこと」こそが究極の空室対策ではないかと考えるようになりました。空室が発生してからあれこれ対策するより、そもそも空室を出さないことこそが大切なのです。

もちろん、投資家の所有するアパート・マンションから、一人の退去者も出さないことは不可能です。貸借人が学生さんであれば、学校を卒業してライフステージが変わると同時に退去するケースも少なくありません。また、入居者が社会人であっても、転勤・転職・結婚・出産といった人生の節目で、居住地を変えなければならないケースはいくらも出てきます。

アパート・マンションのオーナーとして心がけたいのは、そういった「やむを得ない退去」以外の退去をできるだけ少なくすること。具体的には、「間取りや住環境に不満があるから」「いまの部屋に飽きたから」「契約更新の時期だから」といった理由で入居者が退去することのないよう、心を砕くべきです。

入居者に「一生に一度の生活環境」を提供していますか?

では、入居者ができるだけ退去しないようにするには、どうすればいいのでしょうか。

この問いに対する私の答えは、実はそれほど特別なものではありません。私の答えは、「賃貸経営のオーナー業とは、入居者に対して、一生に一度しか経験できない環境を提供する仕事」だとしっかり自覚すること。

これは自戒を込めて語るのですが、アパート・マンションのオーナーが所有する物件について思いを巡らすとき、とかく数字ばかりを追いかけがちです。

 

たとえば、あるアパートに101号室、102号室、103号室、104号室、201号室、202号室、203号室、204号室の8室があったとしましょう。オーナーがその8室についてイメージするとき、オーナーの頭のなかは、左図のような数字の羅列になりがちなのです。

しかし本来であれば、部屋番号と家賃収入の間に、入居者一人ひとりの存在があるはず。さらにいえば、そこには入居者一人ひとりの、「2016年7月」という1カ月間の生活があるはずです。

たとえば、101号室に住む山本洋一さん(仮名)はこの月に初めて彼女を自室に招き入れたかもしれないし103号室に住む鈴木大輔さん(仮名)はこの月から転職して昼夜逆転した生活をスタートさせたかもしれません。

アパートのオーナーさんは、入居者のそういった日々の暮らしを支える住環境を提供しているわけですね。しかも、そこで過ごした日々は、入居者に二度と戻ってこない。大げさにいえば、入居者の人生の一部を占める、かけがえのない日々を過ごす環境を提供しているともいえるわけです。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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