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家賃減額をめぐるトラブルが続出!

説明義務化に効力はあるか? 「◯◯年一括借上げシステム」の甘いワナ

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「将来の家賃減額の可能性」について説明を義務化

「全室を一括で借り上げる」「家賃は保証する」と業者から誘われ、借金までしてアパートを建てたものの、数年後に家賃を減額された――。そんな苦情が相次いでいることから、国土交通省は「将来は家賃が減る可能性がある」との説明を賃貸住宅管理業者に義務づける制度改正を決めた。

8月11日の朝日新聞にこんな記事が掲載されました。

平成27年1月からの相続税増税を背景に、開発業者が相続税に悩む土地オーナーに「アパートを建てれば節税対策になるし、家賃収入も得られる」と攻勢をかけていたことは、すでに当サイトの記事でもご紹介した通りです。

そもそも土地の相続税の評価額は、「遊休地等(さら地)」として相続するより、「貸家建付地(賃貸アパートなど)」として相続したほうが軽減されます。また、固定資産税が6分の1、都市計画税が3分の1まで軽減するなどのメリットもあり、業者は土地オーナーに対して、相続税の節税対策としてアパート経営をもちかけているわけです。

その結果、多くのアパートが建設されたのですが、ご存知のように、多くの土地オーナーは契約時に「一括借り上げだから安心です」と都合のよいことだけを知らされ、「賃料の見直しがあること」を知らされていなかったという実態が明らかになっています。そして、突然、管理会社から「家賃を引き下げます」と一方的に言われ、アパート経営が立ちいかなくなるというトラブルが多発しているのです。

しかし、問題はこうしたオーナーとの金銭的なトラブルだけではありません。
いまは「アパートを建てれば入居者が集まる」という時代ではなく、相続税対策として建設されたアパートの多くが空室のままとなっています。日経新聞が報じた、「アパート空室率、首都圏で急上昇」という記事がありましたが、この空室率上昇の背景には、こうした開発業者によるアパート建設ラッシュがあることは間違いありません。

土地オーナーにも責任はあるが…

もちろん、家賃の見直しがあることは契約書に明記されており、契約をする土地オーナーの側も本来であれば、そうした契約内容をしっかり把握した上で契約を結ぶべきとはいえます。また、いくら一括借り上げしてもらえるからといって、空室リスクなどの投資リスクがどれくらいあるのかを考えないまま契約してしまっていたのだとしたら、その姿勢にはやはり問題があります。

しかし、そうした土地オーナー側の責任を差し引いたとしても、「都合の悪いことは伝えないですませよう」とする業者の姿勢は、批判されてしかるべきでしょうし、当然、改めるべきものだと当サイトでは考えます。

実際、朝日新聞の記事によると、賃貸住宅管理会社の元営業マンは「世間知らずで、プライドが高く、人に相談しなさそうな人を狙った」と明かしたそうです。

ほかにも、「大家が「本当に家賃は下がらないのか」と尋ねても、「下げるわけない」「信頼関係です」と言い張った。10年目以降は2年ごとに家賃を協議する契約になっているが、「大家には10年目までまったく説明しなかった」と振り返る。」との記述も。

国交省は、あくまでも「大家は事業者である」として規制には消極的だったといいます。しかし、それまで賃貸業など営んだことのない人が、営業マンの誘いに乗せられてアパートを建築したからといって、賃貸経営のプロとは到底いえないことは誰もがわかることでしょう。

これまでこうした実態が放置されていたことを考えると、今回の動きは大きな一歩といえるのではないでしょうか。
しかし、説明義務を課されるのは、国交省が運営する「賃貸住宅管理業者登録制度」に登録している会社だけ。その数は、全体の1割程度といわれています。つまり、9割の事業者は説明義務を負わないということです。
また、実際に土地オーナーに営業をかけているのは、住宅メーカーの営業マンです。しかし、その肝心の住宅メーカーの営業マンの活動には規制はかからないのです。
これではどこまで実効性があるか大いに疑問といえるでしょう。

当サイトの講師陣は以前から、一括借り上げシステム、サブリース契約の問題点を指摘してきました。今回、それらの記事を再掲しますので、ぜひ改めてお読みいただければと思います。
今後も、当サイトはこの「サブリース問題」を注視し続けます。

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この記事を書いた人

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