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書類のやりとりだけで丸儲け

不動産業者だけが得をする、中間省略登記の真実(1/2ページ)

尾嶋健信尾嶋健信

2016/03/02

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不動産登記を省略して、物件を売り主から買い主へ

突然ですが、「中間省略登記」という言葉を、お聞きになったことはあるでしょうか。

簡単にご説明しましょう。

たとえば、ここにAさん所有のマンションが1棟あったとします。Aさんはこのマンションを3000万円で売却しようと思い、Bという不動産業者に販売の仲介を依頼しました。しかし、買い主はなかなか見つかりません。

すると不動産業者Bは、「当社がかわりに3000万円で買い取ります」と申し出ました。Aさんにしてみれば、3000万円で売れないのなら値下げしなければいけないかも…と考えていた矢先なので、大喜び。「やはりBさんは頼りになるなあ」と、不動産業者Bに感謝しました。

しかし、不動産業者Bも、ボランティアでマンションを買い取ったわけではありません。そのマンションが3000万円以上で売れると確信したからこそ、転売目的で買い取ったわけです。そして実際、そのマンションは4500万円で買い主Cに売れました。

通常の不動産登記では、このマンションの所有権は売り主Aから不動産業者Bに移転し、さらに不動産業者Bから買い主Cに移ることになります。

しかし、このようにA→B→Cという流れで不動産の所有権が移転するとき、Bが不動産業者であれば、その登記を省略してA→Cという形で登記できます。これが「中間省略登記」というもので、登記簿にBの名前は載らないため、Bは不動産登録免許税や不動産取得税を支払わずにすみます。加えて、売り主Aに知られることなく、いくらでも売値をつり上げることができます。このシステムを使えば、不動産業者Bはまさに丸儲けできるのです。

静岡県にある賃貸マンションのケース

私が関わった案件でも、中間省略登記をめぐるヒドい事例がありました。

静岡県にあるその賃貸マンションは、築18年の3階建てで、1LDKの居室が全12室。そのうち7室は住人が住んでいて、5室が空室になっていました。家賃は平均月3万円で、販売価格は5500万円。全室満室の場合の表面利回りは7.85パーセントで、そう悪くありません。

この物件を、東京都に住むサラリーマンのZさんは、神奈川県にあるY不動産から購入しました。ところが、このY不動産が実にいいかげんな会社で、広告には1室の専有面積が40平方メートルと書いてあったのに、実際には30平方メートル強しかありませんでした。

またY不動産は、「このマンションはリフォームしたばかりで外観も内観もきれいだから、空室もすぐに埋まりますよ」と言っていましたが、実際には、空いている5室とも汚れと傷みが激しく、このままでは誰も入居させられない状態でした。

そこで、マンションオーナーになったZさんは、何とか空室を埋めようと、5室すべてをリフォームすることに。1室100万円ずつ、合計500万円かけて、クロスやフローリングの張り替えを行ない、内装をすっかりきれいにしました。

これで5室の空室もすぐに埋まり、安定した家賃収入が得られるはず。Zさんはそう期待したのですが…。

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この記事を書いた人

満室経営株式会社 代表取締役

1970年、神奈川県逗子市生まれ。青山学院大学経営学部卒業。 大学卒業後、カメラマン修行を経て、実家の写真館を継ぐ。その後、不動産管理会社に勤務。試行錯誤の末、独自の空室対策のノウハウを確立する。 2014年時点で、500人以上の大家さんと4000戸以上の空室を埋めた実績を持つ。著書に「満室革命プログラム」(ソフトバンククリエイティブ)、「満室スターNO1養成講座」(税務経理協会)がある。 現在、「月刊満室経営新聞(一般社団法人 日本賃貸経営業協会)、「賃貸ライフ(株式会社 ビジネスプレス出版社)」にコラム連載中。 大前研一BTT大学不動産投資講座講師。

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