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住まいの残し方

家を受け継がれる家へ(1/2ページ)

川久保文佳川久保文佳

2019/03/01

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イメージ/123RF

変わる住宅に対する価値観

戦後、日本の住宅政策によって、「住まいを持つこと」が推奨され、さらに、住宅ローンの減税や住宅金融公庫による融資によって、新しく家を建てることへの政策は盛んに行われました。

その一方で、現存の住まいへの継承については、個人の裁量に委ねられています。それらの、中古住宅転用などの具体的な政策がないままに住宅の中古市場は衰退してきています。さらに、優遇のない古い住宅への執着は薄れ、新しい住宅への移転や住み替え、建て替えが盛んに行われきています。

アメリカやイギリスでは、建物を残しながら、住み続ける文化が根付いています。親から子へと継承されて、子どもの世代が住み続ける、引っ越して中古住宅に住み替えるなど、中古市場での取引も活発です。

それは、国単位で考えたときに、住宅という資産を残しながらその上に資産形成する国と資産をゼロにして新しい住宅で資産形成を始めるのでは、個人が持つ住宅以外の余力の資金も変わってきます。

持ち家率を日本と欧米で比べてみると年齢が高い層においては大差がありませんが、20代から30代の持ち家率がアメリカに比べて24.5%減と低いまま推移しています(総務庁統計局資料より)。若い世代で家への執着がさらに薄れているように感じます。

最近では、家を持たず、不動産を持たずに移り住みながら暮らすというスタイルも若い層で支持されてきています。

また、高齢者の住宅は空き家になるか手放すか、という方向へ進んでおり、相続に対しても高額な税金が課せられることから手放す状況が増えています。アジア諸国では税優遇からお金を増やしながら、家を子世代へ引き継ぐことができています。実際、タイと日本を同じフィールドで考えたときに、日本の住宅による資産形成はとても不利に感じます。

また、日本では中古住宅市場が活発でないことから更地にして現金化するケースも増えています。

最近、空き家情報を数多く聞くようになりました。八戸、秋田、仙台、鎌倉、和歌山、大津、福井、箱根、強羅、近江八幡などなど、いずれも持ち家の方がご高齢で、後に引き継ぐ家族がいないことが原因です。ひとつひとつの詳細を確認すると、それぞれが、魅力的な住宅や古民家、旅館などです。

大きな建物が多く、そのままでは住めない事情もあります。これらは、持ち主が利用しているとされ、空き家としていないために空き家の調査には引っかからない建物です。こういった空き家予備軍が数多く控えている状況を感じます。

ただし、家を継承するためには、住まいを壊すのではなく、生き返らせるという作業が必要です。それには、費用も労力も掛ります。住み続ける、使い続けるために中古住宅や歴史的建造物などへの国の施策も必要です。

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この記事を書いた人

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事

一般社団法人空家空室対策推進協会代表理事/株式会社エアロスペース CEO/ビーモア株式会社代表取締役タナメラジャパン(マレーシアスパコスメ)代表/jasmin(全国民泊同業組合連合会)理事 北海道函館市生まれ。現在の札幌国際大学 卒業後、リクルート住宅情報事業部にてライターを務めた後、IT企業を経て不動産関連事業へ転身。その一方で、化粧品とサプリメントのコンサルティングや専門家としてのアドバイザー務める。海外派遣先では、フィリピン・タイ・カンボジア・マレーシアなどで日本への輸出入をテーマにセミナーを行うなどマルチに活動している。

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