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建築検査インスペクターの実態を暴く

建築業者が宣伝する「第三者機関の検査」を信用してはいけない!(1/3ページ)

岩山健一岩山健一

2016/08/26

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消費者のための機関か? 建設業界のための機関か?

よく建設業者が「ウチは10年保証で第三者機関の検査つき」などと宣伝しているのを目にしますが、その「第三者機関」はどこまで信用できるのでしょうか。

ここでいう「第三者機関」とは建築検査会社のことで、指定確認検査機関(*1)、登録性能評価機関(*2)、住宅瑕疵担保責任保険法人(*3)などがそれに該当します。

これらの機関は国土交通大臣などから指定や登録を受けており、一見、消費者保護を目的とする公正な機関のように思われます。しかし、実際のところ、建築検査という職域は、「消費者のための検査機関」なのか、「建設業界のための検査機関」なのかの大きくふたつに分けられるのです。

「消費者のための検査機関」は、その言葉通り、消費者の利益を守るための存在です。しかし、「建設業界のための検査機関」とはどういうことなのでしょうか。

(*1)指定確認検査機関:建築基準法に基づき、建築確認や検査を行なう機関として国道交通大臣や都道府県知事から指定された民間機関
(*2)登録性能評価機関:住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)に基づき、住宅性能評価の業務を行なう機関として国土交通大臣の登録を受けた民間機関
(*3)住宅瑕疵担保責任保険法人:特定住宅瑕疵担保責任の履行の確保等に関する法律に基づき、国土交通大臣から指定を受けて住宅の検査や保険の引き受けを行なう法人

検査機関の多くは“業界資本”で設立されている

検査機関のほとんどは、建設業界の信頼を維持向上させることを目的に存在しています。「建設業界の信頼を維持向上させることを目的に」というと、あたかも業界の体質を改善して消費者の利益を守り、その信頼を得ること目的としているといったクリーンなイメージを受けるかもしれません。

ですが、実際の仕組みとしては、検査機関の多くは“業界資本”で設立されています。つまり、建設会社が出資をしているわけです。であれば、果たしてそれらの検査機関が建設会社に対して厳しく検査を行なうことができるのか、疑問に感じる人は少なくないでしょう。

さらに検査の実態はといえば、それらの検査機関は、どちらかというと仕事のない建築士を募集し、簡易的な講習を行なった後に、1回の検査が8,000~1万円程度のパートタイムのような金額で派遣しています。以前は無資格者のパートの人を使って検査を行なっていた機関もあったのですが、ここ最近は一応有資格者が検査を行なっているようです。

冒頭に書いたように、建設業者の売り文句である「ウチは10年保証で第三者機関の検査つき」でいわれる「第三者機関」は、こうした業界資本の検査機関を指すのです。しかし、これでは、厳密には第三者機関とはいえないというのが私の考えです。

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この記事を書いた人

株式会社日本建築検査研究所 代表取締役

一級建築士 建築ジャーナリスト 大学で建築を学び、NHKの美術職を経て建築業界へ。建築業界のしがらみや慣習に疑問を感じ、建築検査によって欠陥住宅を洗い出すことに取り組む。1999年に創業し、事業をスタート。00年に法人化、株式会社日本建築検査研究所を設立。 消費者側の代弁者として現在まで2000件を超える紛争解決に携わっている。テレビ各社報道番組や特別番組、ラジオ等にも出演。新聞、雑誌での執筆活動も行なう。 著書にロングセラー『欠陥住宅をつかまない155の知恵』『欠陥住宅に負けない本』『偽装建築国家』などがある。

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