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牧野知弘の「どうなる!? おらが日本」#8 湾岸・山の手どちらの不動産を選べばよいか(1/5ページ)

牧野 知弘牧野 知弘

2019/03/26

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大都市法の改正が 都心部の再開発をバックアップ

東京に湾岸エリアと呼ばれる地域がある。もちろん「湾岸」という地名があるわけではなく、広く東京湾沿岸を、東は千葉県幕張あたりから、西は神奈川県横浜市のみなとみらいエリアぐらいまでを指すことが多いようだ。

この湾岸エリアに最近急速に増えたのがタワーマンションである。最近のその姿はまるで、香港か上海、ソウルにやってきたかと見まがうほどの林立ぶりだ。なぜ短期間にこれだけのタワーマンションが立ち並ぶようになったのだろうか。

これは1996年頃の小泉政権の施策によるものと言われている。小泉純一郎首相といえば、首相就任後次々と公共工事をとりやめたために、当時の建設業界は頼みの綱である公共工事をぶった切られて青息吐息の状態に陥った。

そのいっぽうで大都市法を改正して、都心部の容積率を大幅に緩和し、再開発を強力にバックアップしたのも、彼の時代のことだ。このころは、1ドルが80円を切るような厳しい円高が続く中で、日本の製造業は続々と中国をはじめとするアジア諸国に工場を移し始め、湾岸エリアにあった工場は閉鎖されていった。

これに目を付けたのがデベロッパーだ。これまでは工場街にマンションを建設することなど、住環境からもありえなかったのが、広大な敷地で容積率が大幅に緩和された結果、超高層マンションの建設が可能になったのだ。

敷地が広ければ、共用部を広く確保してさまざまな快適な共用施設を用意できる。一棟で数百戸から1000戸を超える分譲戸数が確保でき、マンション内にコンビニやクリーニング店などを備えることで一つの街として生活を演出することが可能だ。

これまで都心部の分譲マンションは高額すぎて、とても手が出なかった比較的若いファミリーでも、都心の職場に30分以内で通勤できる住宅をリーズナブルな価格で取得できるようになったのである。

現代は、結婚をしても夫婦共働きがあたりまえ。親たちが毎日都心部まで1時間以上もかけて通勤していたような生活スタイルではとても子育てはできない。湾岸タワーマンションであれば、通勤が便利なうえにマンション内にも保育所などが充実したことも人気に火をつけた。タワーマンションの隆盛には日本の産業の構造改革と日本人の生活スタイルの劇的な変化という2つの要素が背景にあったのだ。

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この記事を書いた人

株式会社オフィス・牧野、オラガ総研株式会社 代表取締役

1983年東京大学経済学部卒業。第一勧業銀行(現みずほ銀行)、ボストンコンサルティンググループを経て1989年三井不動産入社。数多くの不動産買収、開発、証券化業務を手がけたのち、三井不動産ホテルマネジメントに出向し経営企画、新規開発業務に従事する。2006年日本コマーシャル投資法人執行役員に就任しJ-REIT市場に上場。2009年オフィス・牧野設立、2015年オラガ総研設立、代表取締役に就任。著書に『なぜ、町の不動産屋はつぶれないのか』『空き家問題 ――1000万戸の衝撃』『インバウンドの衝撃』『民泊ビジネス』(いずれも祥伝社新書)、『実家の「空き家問題」をズバリ解決する本』(PHP研究所)、『2040年全ビジネスモデル消滅』(文春新書)、『マイホーム価値革命』(NHK出版新書)『街間格差』(中公新書ラクレ)等がある。テレビ、新聞等メディアに多数出演。

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