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デザイン界の巨匠、アルネ・ヤコブセンの傑作

知っておきたい名作家具(1) アリンコチェアとセブンチェア

パップ英子パップ英子

2015/12/23

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北欧デンマーク家具の代名詞 『Fritz Hansen』(フリッツ・ハンセン)

©Republic of Fritz Hansenの公式ホームページ(日本語表示)より 写真中央の椅子はアルネ・ヤコブセンの名作アントチェア(アリンコチェア)

 北欧家具と聞くと、日本全国に8店舗も構える大型家具専門店・IKEA(イケア)を思い浮かべる人が多いかもしれませんね。スウェーデン発のIKEAは、自社デザイナーによるデザイン性と機能性に優れた家具に組立式を取り入れ、製造や梱包、流通等のコストを省くことで低価格を実現しています。

 おしゃれなインテリア製品がリーズナブルに購入できるIKEAは、日本人の私達にとって北欧インテリアをより身近なものにしてくれた存在といえそうですね。

 今回はそんな北欧家具のなかでも、知っておきたい名作家具をクローズアップ。
これから定期的に世界の名作家具を特集していきますので、すでにご存知の方はおさらい的な感覚で、そうでない方はぜひ、インテリア基礎知識として覚えていただければと思います。

 最初にご紹介するのは、1872年にデンマークで設立された北欧家具の代名詞的ブランド『Fritz Hansen』(フリッツ・ハンセン)。
『Fritz Hansen』は、北欧家具の黄金時代を築き上げたアルネ・ヤコブセン※やハンス・J・ウェグナーといった巨匠デザイナー達の素晴らしい製品を有し、世界中のインテリア・ファンを魅了してやまない家具ブランドです。

※アルネ・ヤコブセン…建築家兼デザイナー(1902-1971)
1902年デンマーク・コペンハーゲン生まれ。オックスフォードのセントキャサリンズ・コレッジ、ラディソンのロイヤルホテル、デンマーク銀行など、数多くの建築物を手がける偉大な建築家でありながら、インテリア・デザイナーとしてもアントチェア(アリンコチェア)やセブンチェアなど、使い手を第一に考えた名作家具を数多く世に残す。彼が設計した照明や時計なども世界中で広く使用されている。

重ねても美しいスタッキングチェアの傑作『アリンコチェア』

©flickr/Naoya Fujii. title:Ant Chair 3 Legs

 20世紀のデザイン界に多大な影響を与えたデンマークの建築家兼デザイナー、アルネ・ヤコブセン。そんなデザイン界の巨匠と、『Fritz Hansen』との最初のコラボレーションは1934年に遡ります。

 1952年にはアントチェア(アリンコチェア)、1955年にはセブンチェアと、世界中のインテリア・ファンに絶大な人気を誇る名作家具が巨匠デザイナーの手によって次々と誕生したのです。

 上の『Fritz Hansen』ホームページ画像の中央にある椅子と、下の写真の椅子がアントチェア(アリンコチェア)です。アントチェアは絞った腰のラインと細長い脚がアリをイメージさせることから、アリンコ(蟻)チェアの愛称で世界的に親しまれています。

 アルネ・ヤコブセンの代表作のひとつとして知られるアリンコチェアは、最初は自身が建築した製薬会社の社員食堂のなかで使うようにとデザインした椅子だそうです。

 ヤコブセンは丸いテーブルの中にできるだけ椅子を多く並べられるようにと、前に1本、後ろは2本の3本脚に設計してその椅子をつくり上げました。現在ではホームページ画像に映る4本脚のアントチェアも生産されています。

 この椅子は彼が手がけた最初の成形合板のスタッキングチェア※として、今日でも『Fritz Hansen』を代表するアイコンのひとつです。

※スタッキングチェア…積み重ねることができる椅子(いす)。小さなスペースに収納でき、運搬に便利。

ミッドセンチュリーデザインの名作『セブンチェア』

©flickr/pieter musterd title:Couple アルネ・ヤコブセンの代表作のひとつ セブンチェア

 次の写真に映る椅子も同じく、巨匠アルネ・ヤコブセンの名作です。その椅子の通称は『セブンチェア』。

 アントチェアの誕生から3年後、セブンチェアはその後継モデルとして発表されました。名前の通り、7という数字によく似た形状のセブンチェアは、360度、全方位から眺めても背面と座面の曲線が美しく、流れるようなフォルムが印象的です。

 座り心地も良好で体にフィットする安定感があり、デザイン美と機能性を兼ね備えた素晴らしいセブンチェア。

 この名作家具はレストランやカフェ、美術館などのさまざまなパブリックスペースでも多く採用され、また、オフィスや一般家庭でも愛用され続けています。

 セブンチェアは誕生から50年以上経た今日でも、世界中のインテリア・ファンから絶大な人気を誇るミッドセンチュリー※の名作です。

※ミッドセンチュリー…ミッドセンチュリーとは「1世紀の中間」という意味。デザインの世界では主に20世紀の中頃を指し、一般的に1940~1960年代にデザインされた製品のこと。

©The Shopping Sherpa title:Vintage miniature Lisa dining room

 今回は北欧家具ブランド『Fritz Hansen』のなかでも、インテリア好きなら必ず覚えておきたいふたつの名作椅子をクローズアップ。デザイン界の巨匠、アルネ・ヤコブセンの傑作、アントチェア(アリンコチェア)とセブンチェアについて詳しく取り上げてみました。

『Fritz Hansen』の製品は名作家具ばかりなので、これからも引き続きご紹介したいと思いますが、次回はクリスマス・スペシャルということで、ハンガリーの首都ブダペストで開催中のクリスマス・マーケットを取材します!

 本場ヨーロッパならではの素敵なクリスマス雑貨をメインにレポートする予定です。
 ぜひお楽しみに!

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この記事を書いた人

“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)

ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/

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