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「近代照明の父」と謳われたデザイナーの世界

知っておきたい名作家具(5) ポーセ・ヘニングセンの『PH』ランプ(1/2ページ)

パップ英子パップ英子

2016/02/21

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(c)flickr/slimmer_jimmer title:dining room #1

北欧の生活と名作ランプ

冬の厳しい寒さが長く続き、必然的に家で過ごす時間が長くなる北欧の人々。彼らの暮らしにとって、室内全体を温かく優しい光で照らし続ける照明は、快適に生活するために最もこだわりたいアイテムです。

今回は、グレア(まぶしさ)のない柔らかな光を生み出す名作ランプを、この世に次々と送り出した偉大なデザイナー、ポール・ヘニングセンの世界に迫ってみたいと思います。

近代照明の父と呼ばれるポール・ヘニングセン


出所:PH Snowball - Louis Poulsen(http://www.louispoulsen.com/)

1894年にデンマークで生まれ、1967年にこの世を去った ポール・ヘニングセン。彼は20世紀のデザイン界に多大な影響を与えた人物であり、照明、建築、デザインの世界での活躍はもちろん、社会批評家としても知られた著名な文化人でした。

ヘニングセンがこの世に生み出した美しい照明たちはいずれも、電球のまぶしい光が直接、目に入らないようにと配慮してデザインされたものです。

北欧はもちろん、世界を代表する照明デザイナーであり、「近代照明の父」と謳われたポール・ヘニングセン。『PH(ペーハー)アーティチョーク』をはじめ、彼がデザインした名作照明シリーズ『PHランプ』は、世界中のインテリア・ファンにいまもなお愛され続けています。

代表作は『PHアーティチョーク』


(写真左)(c)flickr/Sekundo .title:PHArtichoke (写真右)(c)PH Artichoke louis poulsen

ポール・ヘニングセンの代表作と呼ばれるのが、『PHアーティチョーク』という名のランプです。この作品は1958年に、彼がコペンハーゲンのランエリーニュ・パヴィリオンのためにデザインしたものでした。

このランプは、72枚のシェード(*1)が連なるようなデザインで、その見た目から別名『松ぼっくり』ともいわれています。

*1シェード:お皿を伏せたような形の傘。

ヘニングセンには「照明器具は眩しくあってはならない」という持論がありました。よってこの作品は、彼の美学が実を結んだ、最も成功した作品です。

写真のように、72枚すべてのシェードに光が正確にあたることで、照明器具を照らす間接光と、グレア(眩しさ)のない穏やかな光が生まれ、室内全体を優しく照らしています。
 
『PHアーティチョーク』は世界で最も知られる美しい照明器具であり、インテリア・ファンに愛される名作中の名作ランプです。

上質な光で暖かな空間を生むペンダントランプ『PH5』


(写真左)(c)flickr/slimmer_jimmer title:light 2 / PH5 (写真右)(c)flickr/Kars Alfrink title:Louis Poulsen PH5 pendant lamp

この、まぶしさのない優しい光の美しいランプは、『PH5』と呼ばれるもの。ポール・ヘニングセンが1958年に発表した、ペンダント照明の名作です。

「対数螺旋」いう独特のカーブを採用した大きさの異なる3枚のシェードと、内部のリフレクター(反射板)を精巧に組み合わせ、電球全体を包むように隠すデザイン(*2)のため、まぶしい光が直接、目に入ることなく、全方位、どこからも眩しさを感じさせないように設計されたランプなのです。

(*2)電球全体を覆い隠すデザインのことを『グレアフリーデザイン』といいます。

シェードの直径が50センチメートルであるため、『PH5』と名づけられたそうですよ。

『PH5』は暖かさと爽やかさを同時に醸し出す光を生むために、器具の内側、そしてリフレクター(反射板)を赤と青で彩色しているそうです。また、柔らかい反射光を引き出すために、シェードの下側はマットホワイト塗装がされているとのこと。

細部にまでこだわりがあふれていて、素晴らしいデザインですね。

『PH5』はペンダント照明のため、食卓や会議用のテーブルを照らすのにぴったりです。上質な温かみのある光が、着席する人々の表情を柔らかく見せてくれそうです。

ランプの位置は、卓上から60センチメートルの位置に吊り下げるのがベストだそうです。

記事冒頭の写真は、あるお宅のダイニングルームです。温かみのあるオーク材のダイニングテーブルは、『PH5』との相性もぴったり。ペンダント照明の名作『PH5』。その圧倒的な存在感で、ダイニングルームの主役となっていますね。

次ページ ▶︎ | ヘニングセンが追及したのは、空間全体を美しく見せる光 

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この記事を書いた人

“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)

ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/

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