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ハンガリー生まれの巨匠マルセル・ブロイヤーの名作

知っておきたい名作家具(8) 世界初の“スチールパイプ”椅子

パップ英子パップ英子

2016/04/03

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出所:10 Iconic Modern Furnishings That Never Go Out of Style( http://www.decoist.com/2013-01-03/iconic-modern-furnishings/ )

ハンガリー出身の建築家兼デザイナー「マルセル・ブロイヤー」

今回は、筆者の暮らすハンガリーに舞台を再び移して、偉大な建築家兼インテリア・デザイナーである「Marcel Breuer(マルセル・ブロイヤー)」の名作家具をご紹介します。ハンガリーで生まれ、アメリカで活躍したマルセル・ブロイヤー、まずはそのプロフィールについてお伝えしたいと思います。

1902年、マルセル・ブロイヤーはハンガリーのペーチで生まれました。彼はハンガリーの隣国、オーストリアの首都ウィーンで美術を修得した後、ドイツのワイマールに移り、バウハウス(*)の第一期生として学び、同校のマイスター(教官)となります。

(*)1919年、ドイツのワイマールに設立された、工芸・写真・デザインなどを含む美術と建築に関する総合的な教育を行なった世界的に有名な学校。1996年にはワイマールとデッサウのバウハウス、それらの関連遺産が世界文化遺産として登録されました。

1930年代になると、ユダヤ人であったブロイヤーはドイツ・ナチスから逃れるためにロンドンに移住します。最終的にはアメリカへと移住し、ハーバード大学院、マサチューセッツ工科大学など名だたる大学で教鞭を取り、学生たちに建築を教えました。後に著名な建築家となった「フィリップ・ジョンソン」や「ポール・ラドルフ」なども、当時のブロイヤーの教え子だったそうです。

世界初“スチールパイプ”を使用した「ワシリーチェア」


出所:Knoll(R)Wassily Chair | AllModern ( https://www.allmodern.com/Knoll-%25C2%25AE-Wassily-Chair-50L-KLL1234.html )

バウハウスの一期生であったマルセル・ブロイヤー。1925年に彼は恩師であるワシリー・カンディンスキー教授のためにある家具を制作しました。

その椅子は名づけて「Wassily Chair(ワシリーチェア)」。まるで、宙に浮いているような、あのハンモックをも連想させるこの「ワシリーチェア」は、実は世界で初めてスチールパイプを素材として採用し、制作された椅子なのです。

彼は自転車のハンドル部分に着想を得て、自転車用の工具を使い、組み立て・分解と、大量生産が可能な、名作椅子をこの世に生み出しました。

冒頭の写真はマルセル・ブロイヤーの代表作「ワシリー・チェア」があるリビング風景。上品なベージュのソファに混ざりながら、ひときわ強い存在感を放つ「ワシリー・チェア」。この名作椅子が引き立つようにと、計算された家具の配置が素晴らしいですね。

弾力性のある座り心地に癒される「チェスカチェア」


出所:Marcel Breuer Wicker Back Chrome "Cesca" Chairs For Sale at 1stdibs ( https://www.1stdibs.com/furniture/seating/armchairs/marcel-breuer-wicker-back-chrome-cesca-chairs/id-f_829231/ )

ワシリー・チェアを発表した4年後の1929年、マルセル・ブロイヤーは愛娘の名前(チェスカ)から名を取った作品を発表します。それが、写真に映る、「Cesca Chairs(チェスカチェア)」という椅子です。

ブロイヤーは椅子の素材に鋼管丸パイプを用いて、その特性を生かした構造により、弾力性のある柔らかな座り心地を実現しました。チェスカチェアは、シンプルな美しさと椅子としての高い機能性を両立させた名作椅子として、現在もなお、世界中のインテリア・ファンに愛され続ける名作チェアです。


出所:10 Iconic Modern Furnishings That Never Go Out of Style( http://www.decoist.com/2013-01-03/iconic-modern-furnishings/ )

若草色の壁紙が海外のインテリアらしいこちらのダイニングルーム。木製のダイニングテーブルに組み合わせたのは3脚のチェスカチェア。パイプ管を使用しているチェスカチェアですが、背面や座面に籐素材を使用しているからか、木製のテーブルととてもマッチし、インテリア空間に自然と溶け込んでいますね。

ハンガリーで生まれ、アメリカに渡り、世界的なインテリア・デザイナーとなったマルセル・ブロイヤー。今回は、ブロイヤーが手がけた名作椅子を2点、ご紹介しましたがいかがでしたでしょうか?

マルセル・ブロイヤーは1976年に引退するまで建築家としても大活躍し、ニューヨークで事務所を開き、数多くの建築の仕事をしたそうです。1952年にはパリ・ユネスコ本部を設計し、また、ホイットニー美術館、IBM リサーチセンター、ニューヨーク州立大学、などの建築作品があります。

次回はまた、北欧の名作家具を紹介していきたいと思います、どうぞお楽しみに。

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この記事を書いた人

“FinoMagazin”(フィノマガジン)主宰(編集長)

ハンガリー在住コラムニスト。 食品会社でワインインポーター業務に従事した後、都内の広告代理店に転職。コピーライター、ディレクターとして勤務。百貨店やデパート、航空会社、ベビー・ブランド等のクリエイティブ広告で、インテリア製品のコピーライティング、ディレクション等を数多く手がける。 2013年、夫の国ハンガリーに移住後も育児に奮闘しながら執筆業に邁進。日本の雑誌(出版社)でハンガリー紹介記事(取材・撮影・文)を担当。また、自身とハンガリー人クリエイターとで運営するブダペスト発ウェブメディア“FinoMagazin”でもインテリアを含めたライフスタイル全般コラムを連載。美容メディアにてビューティ・コラム連載、その他、企業のWEBサイトや企画書制作、日本のTV局、広告代理店、メーカーからの依頼でハンガリー現地ロケ・コーディネート等、多岐に渡る業務をこなしている。 自身主宰のハンガリー情報WEBメディア “フィノマガジン” http://www.finomagazin.com/

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