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空間と心のディペンデンシー

部屋のきれいな女性が陥りやすいワナ(1/3ページ)

遠山 高史遠山 高史

2019/07/29

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イメージ/123RF

30代後半の女性が、心身の疲労を訴えて外来にやってきた。最初は緊張していたが、だんだんと打ち解けてきて、いろいろと話してくれるようになった。

何回目かの診察の時に、「私、彼氏が欲しいんです。」と言われて、私は目をむいた。当方は精神科医であって、彼氏の調達は業務外だ。ともかく、なぜ彼氏が欲しいのかと聞くと、少し前に体調を崩し一週間ほど仕事を休んで寝込んでいた際、急に独り身の恐怖を感じたらしい。

彼女は切れ長の目をした、和風美人で、スタイルも良く、十分に魅力的な女性と思えたので、正直にそのように伝え、えり好みしている可能性は無いかと聞くと、「そんなことはない。まったくモテないし、仮につきあったとしても長続きしない」とのこと。

とはいえ、やはり彼女自身がひかれる男にはある傾向があることが見えてくる。彼女は、某雑貨メーカーの営業職で、社内でも1、2を争う大口の取引先を顧客にもっている。そのせいか、私の質問に対する受け答えも無駄がない。診察中も、手帳を片手にテキパキとメモをとる。その整然とした文字を見ていると、相当なしっかり者であることが伺える。そのうえ、趣味はお茶とお花で、どちらも、師範代の腕前だそうだ。料理も得意で、ある日は、私のために手作りのパンを焼いてきてくれた。

その焼き上がりの見事さに驚いていると、彼氏のために以前はパンや、ケーキをよく焼いていたと、呟いた。彼氏がいつ来ても快適に過ごせるように、部屋は毎日掃除して、夕食を整え、朝食のためにパンを焼き、なんやかやと世話をするが、なぜか少しずつ訪ねてくる回数が減っていき、しまいにはフェードアウトされてしまうそうだ。

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この記事を書いた人

精神科医

1946年、新潟県生まれ。千葉大学医学部卒業。精神医療の現場に立ち会う医師の経験をもと雑誌などで執筆活動を行っている。著書に『素朴に生きる人が残る』(大和書房)、『医者がすすめる不養生』(新潮社)などがある。

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