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BOOK Review――この1冊

『月曜断食』 関口賢著

2019/11/11 住まいの大学

住まいの大学編集部 文/KANAUSHA.LLC

『月曜断食』 関口賢著 文藝春秋刊 1350円(本体価格)+税

断食には、密やかな魅力がある。食欲という人間の本能に抗う精神的な闘い、そして空腹や倦怠や動けなくなるという肉体的な闘い。世の中には断食道場なるものもあり、一度は挑戦したい気もするが、そもそも何日間も道場に缶詰になることは難しいし、費用もかかる。時間と経済に余裕がない限りは、おりゃ~と飛び込めないのが断食の世界である。

そこに現れたのが本書『月曜断食』、いわゆるダイエット本。ダイエット本の流行り廃りがある中で、ここ10年ほど、酵素ドリンクやコールドプレスジュースを飲みながら行う「ファスティング」や、1食または2食を抜く「プチ断食」が流行してきたという。本書は昨年2月に刊行されて、1年半ですでに19刷。書籍は売れて在庫がなくなれば重版をかけるのだが、それが18回、1カ月に1回以上、版を重ねている計算になる。これは隠れたベストセラー、いやすでに話題の書である。様々なダイエットに挑戦しては失敗してきた漫画家・伊藤理佐さんが63キロから57キロに痩せたことでも話題になっている。

ところで、本書の著者はどんな人物なのか。のべ7万人を治療し、断食指導をしてきた鍼灸界のカリスマ・関口賢先生だという。つまり、鍼灸師なのだ。そう言えば、やせるツボが流行った時代もあった。関口先生も本書の中で、食べ過ぎチェックのツボ、食欲を抑えるツボ、安眠のツボなどを図入りで教えてくれている。
本書が魅力的なのは、冒頭で断食はなぜ体によいのかをじっくり説明しているところだ。断食の最大の目的は、日頃酷使している胃腸を休め、本来の働きを取り戻すこと。「胃は第1倉庫、腸は第2倉庫、脂肪は第3倉庫」であり、日常的に食べすぎていると、栄養が吸収されないまま、食べ物のカスが容量オーバーのまま各倉庫に堆積するのだという。だが、断食によって、体本来の消化・修復機能が高まるので、脂肪を燃焼しやすい体になり、体質改善していくことができる。しかも睡眠の質が高まる、美肌効果が高い、リバウンドしにくい、婦人科系の病気も改善できる、おまけに食べないだけのシンプル法なので、かかるお金は0円、過食も間食も自然に減って財布にやさしいと良いことずくめ。

タイトルどおり、月曜だけ断食するならできるかも……と思ったのだが、それほど甘くはなかった。月曜は断食、火~金に炭水化物を抑えた良食で、土日は好きなものOKのサイクルを4週間続ける必要がある。良食とは、朝はヨーグルトとフルーツ、昼はおかずのみ、夜は野菜料理のみ。土日は炭水化物含め好きなものOKだが、こぶし二つ分の量まで。さて、これをつらいと思うか、つらくないと思うかは人それぞれだが、月~金までの食事を見ると、これは糖質制限ダイエットではないのか? しかもこの量しか食べられない状態を1カ月続ければ、誰だって痩せられるのではないか? この食事量でイライラしないで仕事に集中できるのだろうか。オフィスワーク中心の仕事なら耐えられるかもしれないが、外回りの営業職だと体力的にかなり厳しいだろう。実際、本書は女性向きに書かれている印象を受ける。それでもこの食事を続けるのはやはりハードルが高い。

じつは、本書には断食に失敗する人の特徴も書かれている。部屋が汚い人、時間にルーズな人、自己承認力が低い人等々、もうここまで来るとダイエット本ではなく、自己啓発本だ。さすが断食を謳うだけあって、お手軽ダイエット本とは一線を画したストイック路線。
一方で、お金をかけてコミットしなくてもタダで始められる分、いつでもやめられる気軽さもある。

ところで本書でいちばん説得力があったのは、じつはあとがきだった。この本の企画を立ち上げた編集者自身がこの断食で痩せたのだという。自分が体験してよかったものを読者に紹介したいという思いにウソをないだろう。それにしても秋は食べ物がおいしい、12月は忘年会やクリスマスがある、それが過ぎれば正月のおせち料理や新年会がある……さあ、いつから始めるかが悩みどころではある。


『月曜断食』
関口賢著
文藝春秋刊
1350円(本体価格)+税

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